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第106号(2024年10月号)
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【特集】令和時代のシニアマーケティング

日本ロレアルCCO・花王「サクセス」ブランドマネージャーが語るシニア世代へのアプローチと顧客体験

好奇心旺盛なシニアに応え「信頼」を得る

 「シニア世代はブランドに愛着を持つと長く愛用してくれる反面で、成熟しているがゆえに企業のある種の狙いも見透かせる世代」と菊川氏がシニア層の特徴を語り、日本ロレアルと花王はいかにそのような人々のロイヤリティを向上させているか?と質問を投げかける。

 まず、ロイヤリティの定義は何だろうか。前田氏は「信頼」だと語る。日本ロレアルは毎年行うブランド調査の中で、ブランドスコアに寄与する要素も分析しており、信頼の寄与が最も高いことがわかっている。

 「ブランドロイヤリティを強化するためには、信頼できるブランドを作り守ることが一番だと思っています。そして、信頼できるブランドを作るために一番大切なことは、お客様に親切に教えて差し上げることだと考えます」(前田氏)

 ロレアルグループが美の関心度を調査したところ、年齢による変化が見られたという。20代の若年は関心が高く、30代から下降傾向になり40代で最も低くなる。そして、50代60代、70代と美への関心度が再び高まってくる。そのため、シニア世代はこれから美に対してどのようにアプローチすればいいのか、今の流行りは何か……と、非常に好奇心が旺盛な状態だ。

 ブランドがメイクの方法や、肌のメカニズムを積極的に教えることで、顧客に喜びや感謝の感情が生まれる。この気持ちがロイヤリティにもつながるのだ。

 具体的にはリアルでは美容部員の接客を強化し、デジタルでは情報発信などを行っている。また、シニア女性のためのトータルビューティサロンEGAOとコラボレーションし、既存のアイテムを使用してブーマー向けのメイク方法を開発。今のトレンドを押さえつつ、自分の顔に合うメイクを紹介できるようにした。

 コスメカウンターでタッチアップ(美容部員が顧客に直接スキンケアやメイクを行うこと)してもらうことで、実際にキレイになった実感と新しい知識を得た満足感が得られるのだ。さらに、美容部員もシニア向けのメイクについて学ぶことが自信につながり、より良い接客となる。

 シニアと接する機会が多い菊川氏も知的好奇心は重要なテーマだと同意する。

 「シニア向けのサービスやモノが少しずつ増えてきています。足元ではお金や健康の悩みを抱きつつも、自分らしくいきることを意識する50代以上の方が多い印象です。その好奇心に応えることが今後大切だと思います」(菊川氏)

信じて使い続けてもらうための「愛着」を作る

 林氏はロイヤリティを向上するために重要な視点として使用期間の長さ、使用量当たりのユニット単価、カテゴリーをまたいだサクセスブランドの利用を挙げる。そして、ブランドへの愛着も欠かせないと強調する。

 「使ってすぐに実感できることも大切ですが、育毛は使い続けなければ効果がわかりません。信じて使い続けていただくためには、ブランドに対しての愛着が非常に大切だと思います」(林氏)

 信じて使い続けてもらうために、コミュニケーションを変えてきた。従来は「抜け毛が増えたら」とか、「男の頭皮はギトギト」といった顕在化した問題をサクセスが解決するというメッセージが主流だった。もちろん問題解決アプローチでも実感は可能だろう。

 だが、現在はケアをするユーザーの気持ちを高めるアプローチにシフトしている。髪の成長と、人としての成長をオーバーラップさせ「ケアをすること自体に意味がある」という意義付けができるコミュニケーションを実施。サクセスを通して「これからもより良い自分でいたい」「まだまだ自分はいけるんだ」という気持ちを感じることで使い続けてもらう狙いだ。

 林氏は2つの具体的な事例を紹介する。1つは、野球日本代表などスポーツへの協賛だ。どんな困難があったとしても前を向いていく、「前を向くチカラに」というブランドメッセージをスポーツの奮闘と重ね届けている。

 もう1つが2023年に高級理容室・ヒロ銀座と企画した「かっこつけない理容室」だ。自社調査によると男性の51%が「自己肯定感が低い」と回答。さらに自己肯定感が低い男性の48%が3年以上ヘアカットのオーダーを変えていないことがわかった。そこで、自分はもっと良くなれることを実際に体験できるように、「自信」「チャレンジ」「自由」などのキーワードが並んだシートを提示し、選ばれたワードを基に理容師が髪型を提案するという期間限定のサービスを用意した。

 「自分もこんなに変われるんだ、とポジティブなお声をたくさんいただきました」(林氏)

 菊川氏はブランドとして届けたいシーンを作ることの重要性に共感しつつ、効果の振り返りが難しい取り組みを実現するハードルの高さを指摘する。

 林氏は予算配分の難しさに同意しつつ、予算の中で効果の最大化を考えながら、本当にリターンがあるのか?という視点ではなく、ブランドパーパスを起点に社会課題に対するアプローチをすると決めて取り組んだと語る。

 また、実際に商品を体験してもらう取り組みも欠かせない。この数年はサウナなど温浴施設やゴルフ場、フィットネスジムなどリアルでの接点に商品を設置。手に取ってもらう施策にも注力している。


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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/25 12:40 https://markezine.jp/article/detail/47266

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