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生活者の心理はどう変化している?消費者行動&調査手法の最新動向(AD)

止まらぬニーズ多様化、調査の鍵は四つの“みる”?ニッセイ基礎研究所が語る、消費者理解を深めるヒント

消費プロセス全体で多様化が起こっている

MZ:スマホやSNSの普及が消費者ニーズの多様化とどのように関わっているのでしょうか。

小口:先述の通り、SNSやスマートフォンの普及が、消費プロセス全体での多様化を引き起こす要因の一つであることは確かでしょう。しかし、それ以外にも多様な要因が消費の多様化を後押ししている可能性があります。図4は、消費プロセスを図式化したものです。

【クリックすると拡大します】
図 4.消費者の情報処理・購買行動プロセスにおける多様性の要因(小口氏作成)

小口:消費者の購買行動の仕組みを考えると、消費者は広告などの外部からの刺激を受けてその刺激に注目し、理解して、その内容を記憶にとどめようとします。そして何か別のできごとがきっかけで記憶から再生して、その時のことを思い出し、その印象が目的にかなうものであれば商品を購入。そして、その商品の使用体験が優れたものであると感じれば、SNSに商品の感想をアップすることもあります。そして使用後にその商品を最終的に処分するか、フリマアプリなどのCtoCのチャネル、または中古品店で売る、というプロセスをたどると言われています。

 スマートフォンの普及により、この消費プロセス全体で多様化が進んでいると考えることができそうです。具体的には、SNS利用が60代・70代に広がることで「多様なメディアを利用する層」は拡大していると言えます。そしてそれに合わせて多様なバックグラウンドを持つ消費者がSNS空間に流入し、情報探索行動全体も多様化しています。

 加えて、サブスクリプションといった従来の売り切り型とは異なる販売形態の普及による選択・購買の多様化や、女性の社会進出や働き方などの社会の変化によって求められる商品・サービスへのニーズの変化も消費の多様化を後押ししている側面がありそうです。それらの要因が複雑に絡み合いながら消費プロセス全体に影響を及ぼしていくことが「ニーズの多様化」の背景にあるように思います。このように見ていくと「多様化しない」と考えることのほうが逆に無理があるようにも思えます。

 そうなると当然のことながら、多様化する消費者の動機や行動、そして現状や傾向を捉えるためのリサーチが重要です。しっかりとした消費者調査を行い、多様化の実態や要因を押さえることが、商品開発やマーケティングの機会発見、そのリスクの低減につながります

消費行動の因子分析からわかった四つのパターン

MZ:多様化する消費ニーズを見ていく中で、顕著な特徴はありますか。

小口:当社では、2023年に自社で実施した「生活に関する調査」で聴収した日常的な消費行動における意識に関するアンケート結果について、その意識の背景にある要因(因子)を探るために分析を行いました。その結果、「慎重消費」「所有より利用」「提示的消費」「C2C消費」という四つの因子の存在が見えてきました

 一つ目の「慎重消費」は、収入は安定しているものの生活コストの増加に直面しており、家計管理を意識して、限られたお金の中で良いものの消費を探る傾向を示す因子です。レビューを丁寧に読み込んだり、SNS経由で情報を取得したりしながら買うべき商品を選別する傾向があり、世代としては40代女性や60代以上の男女でやや多く見られます。

 二つ目の「所有より利用」は、シェアリングエコノミーに代表されるように所有に執着せず、「利用やシェアでトータルライフコストを減らそう」と考える傾向を示す因子です。定額制のサブスクをよく利用するなど、持続可能なライフスタイルを志向する20~30代の方々で顕著でした。

 三つ目の「提示的消費」は、自分のこだわりの商品を購入したいという欲に関わる因子です。プレミアムな商品をSNSに上げたいと考える20代や、趣味性や質の高い服などのブランド品にこだわる70代以上の方々や20代の一部で特徴的に見られました。

 四つ目の「C2C消費」は、コストパフォーマンスを重視する傾向を示す因子です。環境意識が高くリサイクルに対しても関心があるため、フリマアプリなどで不用品を売買することでコストを抑えて新しい商品を購入する傾向があり、年代では30代を中心にした層に特に多く見られました。

 これらの因子は2023年時点のものなので、今後変化が見られるかもしれません。とはいえ、性別・年代だけでは説明できない消費者のニーズの多様化を示す一例として挙げられるでしょう。このように、商品開発やマーケティング・ターゲットについて、性別や年代だけでは説明できない消費者のサイコグラフィック(心理的)の多様な要因を抑える上でも、消費者調査はなくてはならない存在であると言えるのではないでしょうか。

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調査の肝は「目的」をしっかり定めること

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:Meltwater Japan株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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2025/03/28 10:00 https://markezine.jp/article/detail/47301

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