「場としてのラグジュアリー」の事例 Bvlgari Hotels & Resorts
昨年、Bvlgari(ブルガリ)が東京の八重洲に「ブルガリ ホテル 東京」をオープンし、大きな話題となりましたね。元々はイタリア・ローマの宝飾品ブランドとして開業したブルガリですが、その卓越したデザインや比類のない品質から、時計、香水、革製品、そしてホテルといったホスピタリティー分野まで多角化を進めてきました。ホテルでもブランドの世界観を見事に表現し、近年は一気に多国展開を広げています。
HAVAS社の調査によると、今のラグジュアリーブランドには「場としての魅力」が求められていることがわかります。ブランドの世界を味わいに店舗を訪問する人が増えており、ラグジュアリーブランドの商業施設は、それ自体が文化的なランドマークや体験の場となっているようです。
また商品もファッションの領域に留まらず、ライフスタイル領域まで広げてくれることを望んでいるようです。一例として、Hermes(エルメス)も2011年よりインテリア商品を販売していますが、その売上はここ近年大きく伸びています。
この変化の源泉は、日常的にラグジュアリーブランドの世界観に触れていたい、という生活者の欲求のように見えます。たとえば、ブランドが作ったアパートに住む、限定コンテンツのサブスクリプションをするといった、限られた瞬間の贅沢ではなく、常につながっていたいという新しい関係性への切望が調査からも読み解けます。
「デジタル化」の事例 Burberry x Blankos Block Party
2022年、Burberry(バーバリー)は、米ミシカル・ゲームズとタイアップを行い、同社の人気ゲームである「Blankos Block Party(ブランコスブロックパーティー)」にNFT商品を登場させました。
同ゲームはミニゲームを競ったり、メタバース空間を探検したりできる、ブロックチェーンゲーム。バーバリーはそこに、同ブランドのTBサマーモノグラム柄を身に纏った「Minny B」という新たなキャラクターを750体限定で販売。また「Burberry Boombox」という名称のラジカセ(ボリュームを調整することで、ゲーム内で独自の音楽チューンをかけられる模様)、「Horseshoe Chain」という馬蹄をモチーフにしたネックレスなども登場。ゲーム内でキャラクターが着用できるインゲームアイテムとして、こちらも数量限定で販売がされました。
本キャンペーンは、テクノロジーに敏感な若年層に対し、「バーバリーはブランドとしてデジタル上のイノベーションにも挑戦していく」というメッセージを伝え、ゲームコミュニティーで話題となりました。
実際に生活者はラグジュアリーブランドからより多くのデジタル体験を望んでいることが、調査結果からもわかります。他にもバレンシアガはフォートナイトと、プラダはライダーズ リパブリックとコラボレーションを行うなど、ゲーム分野という括りでも、ブランドの積極的な活動が見て取れます。
ブランド本来のマジックを失わないようにデジタル上での体験を提供していくことは、今後より大切になっていきそうです。
まとめ:溶解するラグジュアリー
今回はラグジュアリーマーケットにおける事例を紹介させていただきました。
社会問題に対して積極的に声を上げ、国際化を進める(グッチ)。より広い顧客を相手に、ポップアイコンとコラボレーションを行い(ロエベ)、セカンドハンズも経済圏と捉え(ヴェスティエールコレクティブ)、顧客体験をデザイン。ライフスタイルブランドとしても日常的に非日常を提供し(ブルガリ)、そのうえでデジタルスペースでも創造性を求められる(バーバリー)。
歴史のあるブランドで多く構成されるラグジュアリー市場ですが、溶解する生活者のニーズに合わせて、多くの新しい試みが進められていることがわかります。今後も市場の拡大が見込まれる中、さらなる変化が生まれてくるでしょう。今回の記事が参考になりましたら幸いです。