スタッフのスタイリングコンテンツは11万件超
「OMOはデジタル上のシステム構築だけでなく、店舗スタッフの協力がないと成立しない」と語る岩井氏。店舗でスタッフが顧客にECサイトを紹介するだけで、試着したアイテムを後に購入してもらえるなど、ECサイトの売上向上が期待できるためだ。

店舗スタッフから来店客にアプリの利用を薦めてもらうには、アプリがブランドにおいてどのような役割を担い、なぜ重要なのかをスタッフに知ってもらう必要がある。そのため社内で毎月1回、アプリの効果を伝える説明会をオンラインで実施しているそうだ。
また、店舗ではスタッフがスタイリングの提案をしているが、それをECサイトのコンテンツとしても展開している。経常的に1,000名ものスタッフが投稿しており、既に11万件のコンテンツが上がっている状況だ。現在ではECサイトの売上のうち、約70%がこのスタイリングコンテンツを経由しているという。岩井氏は「今後はこうしたデータも活用しながら、パーソナライズしたスタイリング提案ができるようにしていく」と語る。
「新たな機能を追加するだけでなく、既にあるものを有効活用していくことも大切です。ユナイテッドアローズの強みであるスタイリングコンテンツは、お客様の購入を後押しすると同時に、店舗のスタッフにとってもモチベーションになっています。顧客とスタッフの双方にメリットをもたらすものが、我々のやろうとしている感動ドリブンのOMO戦略です」(岩井氏)
クロスユースユーザーの平均購入額は4.9倍
ユナイテッドアローズはグロースフェーズにある。店舗も含めたブランド全体で、2023年の売上は前年比104%を記録した。モールも含めたECチャネル全体の売上は前年比121%、自社ECのみの売上は136%と、どちらも大きく伸びている。

UAクラブがスタートして約1年が経過した2024年上期、売上は前年比117%となった。2年連続で購買するUAクラブ会員も増加しており、こうした成果はOMO戦略の賜物と言えるだろう。
「ある媒体では、アパレル業界全体のEC売上が前年比106%だと報道されていました。我々のECチャネルはありがたいことに大きく成長していますし、まだまだ伸び代があると思っています」(岩井氏)
OMO戦略の結果クロスユースユーザーは増えたものの、全ユーザーに占める割合はまだ12.7%程度だ。しかし、年間の購入金額で比較すると、クロスユースユーザーは店舗のみを利用するユーザーの3.3倍、ECサイトのみを利用するユーザーの4.9倍と単価が非常に高い。
「ユナイテッドアローズは成長していますが、まだまだ課題もあります。ECサイトやアプリをさらに強化してOMOを推進し、今後もお客様一人ひとりに最適な体験を提供していけるよう取り組んでいきます」(岩井氏)