ビールの提供を通して「人の交流」を生み出す
1873年にオランダのアムステルダムにて誕生したハイネケンは、現在、世界約190ヵ国で展開されるグローバルブランドだ。日本市場でも9割以上のブランド認知を誇っている。
セッションの冒頭で、同社日本法人であるハイネケン・ジャパンでマーケティング部門の責任者を務める須田伸氏は、同ブランドが掲げる「ビールを売るな。楽しい時間を売れ」というモットーを紹介。この言葉は、ビールが介在して生まれる「人と人が交流する時間」の創出に同ブランドが価値を置いていることを示しているのだと語る。
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そんな価値を創出する取り組みの一環として同社が注力しているのが、ノンアルコールビール「Heineken0.0」だ。同製品は2017年から本社のあるオランダを中心にヨーロッパで発売を開始。2023年10月からは日本市場でも販売を始めている。
では、そんなHeineken0.0を日本市場で浸透させるために、同社ではどのようなプロモーションを行ってきたのだろうか。
市場の反応を基に日本市場独自のフレーズを作成
まず須田氏は、クリエイティブ面での工夫について語った。Heineken0.0がもつ「ノンアルコールでも楽しく乾杯できる」というメッセージを伝えるために、グローバルで使用されているものとは別に新たなクリエイティブを制作。生ビール、レモンサワー、スパークリングワイン、カクテルなど、日本のアルコール消費の状況に合わせてローカライズしたのだという。
こうすることで、アルコールを飲用するシーンにおける選択肢の一つとして、Heineken0.0を想起できるようにした。
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また、テレビCMにも日本向けに独自の要素を加えたと須田氏は語る。日本向けのテレビCMでは、グローバルでの動画素材と同じ音楽および映像を活用することでグローバルでのブランドの統一感は担保しつつも、日本の消費者が強く惹かれる要素を選定。「あのハイネケンと同じ製法」「世界No.1ノンアルコールビール」「ついに日本上陸」という三つのフレーズを使用した。
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しかし、当然、根拠もなく「この要素が消費者に刺さると思う」と主張しただけでは本社からの合意を得ることはできない。そこでハイネケン・ジャパンでは、これらのフレーズを活用することによる「ブランド認知」や「説得力」の変化を調査した。その結果、それぞれの項目で高い数値が確認でき、本社からの許諾を得ることに成功。これらの素材で日本国内のプロモーションは統一したのだという。
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なお、日本市場に合わせたプロモーションを行う上で、映像素材を完全に作り替える“日本オリジナル素材”の活用も検討し準備を進めていたのだと須田氏。しかし、三つのフレーズが上手く機能することが判明したため、そちらの活用は断念したのだという。
このように、プロモーションを進める上ではあくまでも市場の反応を基に選択するべきだと須田氏は語った。