限りある予算の中でプロモーション効果を最大化させるには?
続いて、須田氏はプロモーションの予算について語った。国内メーカーと比較した際、グローバル企業の日本法人では、活用できるプロモーション予算に制限が生じてしまうことがほとんどだ。
そのような制限がある中で、効果の最大化に成功した二つのプロモーション施策を須田氏は紹介した。
一つ目が、「プレスイベントの開催」だ。同イベントでは、タレント起用の代わりに、本社からブランドの品質を保証する存在、グローバルマスターブリュワーのウィレム・ヴァン・ウェイズバーグ氏を招へい。Heineken 0.0の味へのこだわりなどを語ってもらったのだという。
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この施策の狙いについて、須田氏は次のように語る。
「日本の消費者は『品質』に対してこだわりがある人が多いため、ロングセラーブランドの“味の責任者”のような立場の人に対するリスペクトが強いです。そこで、マスターブリュワーにHeineken 0.0の味へのこだわりを語ってもらうことで、多くの方から関心をもってもらえるのではないかと考えました」(須田氏)
このように市場のもつ特徴を捉えた結果、多くのメディア露出を生むことができ、期待以上の効果を出すことに成功した。
二つ目が「サンプリング」だ。同社では、2023年9月に「F1日本グランプリ」が開催されている鈴鹿サーキットで発売前の大規模なサンプリングを実施。本国のプロモーションでもノンアルコール製品だからこそもつドライバーとの親和性に着目し、レーサーを起用する場面があったというが、日本向けにアレンジしたのがこの施策だ。F1のピットクルーに模したスタッフがHeineken0.0を配布することで、話題化を狙ったのだと須田氏は語る。結果、Xを中心にSNSで話題化に成功。盛り上がりを生み出すことにつながった。
また同社は、苗場で開催された「フジロックフェスティバル '24」でもサンプリングを実施。同イベントでは、駐車場のチケットをもっている人にHeineken0.0を無料で提供した。これにより、「Heineken0.0であれば、帰り道の運転を気にしなくても大丈夫」というメッセージングを行ったのだという。
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(写真左)F1日本グランプリでのサンプリングの様子、
(写真右)フジロックフェスティバル '24でのサンプリングの様子
冒頭でもあったように、「人との交流の時間」に価値を置く同社では、「『なぜこの商品がこのときにあるのか』というコンテクストを捉えたコミュニケーションを大切にしてプロモーションを行っている」と須田氏は語った。
社会的な意義を捉えてファン化を促進
このように、「行動的コンテクスト」を大切にしているハイネケン。これに加えて須田氏は、「社会的コンテクスト」も消費者への訴求を行う上で重要視しているのだと語る。
この言葉を須田氏は、「ブランドが大事にする考え方に賛同して商品を購入してくれること」だと定義。商品のスペックだけでなく、「社会的な意義」を捉えてファンになってもらうことを目指しているのだという。
今回のHeineken0.0のプロモーションにおいても、同社では、この社会的コンテクストに沿って企画を展開した。その例の一つとして挙げたのが、LINEヤフーと共同で行った調査企画だ。
同調査では、日本の多くのビジネスパーソンが会社の飲み会で「気軽にノンアルコールを頼めない」という、ある種の「社会的なプレッシャー」を抱えていることを明らかにした。
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こういった調査結果を踏まえ、「おじさん世代必読」と題したPR記事などから問題を提起。そして、この社会的コンテクストを踏まえた上で、「Heineken 0.0であればノンアルコールでも堂々と乾杯できる」というメッセージを発信し、“社会的な意義”を訴求したのだと須田氏は語る。