ツールの導入により顧客アプローチに注力
では、こうした追客にいざ取り組もうと思ったらまず何が困るのか、あるいはなぜできないのか。真っ先に課題として挙がるのは「インサイドセールスのリソース確保」でしょう。インサイドセールスの業務というと顧客アプローチを真っ先に想像しますが、実際にはそれ以外にも顧客調査や商談確定、社内ミーティングなど多くの業務をこなしているため、あまり積極的に取り組んでくれない可能性も考えられます。
インサイドセールス白書によれば、インサイドセールスはアポ獲得業務にて顧客調査には1件につき11分ほど、商談確定時の業務には1件につき15分ほどの時間がかかることがわかっています。マーケターからするとこの15分という時間を長く感じるかもしれません。ですが、商談確定時に行っている業務を細かく見ると、カレンダー作成、Web会議URLの発行、CRM上でのメモ作成など多岐にわたり、総合すると実はかなり重たい業務になっていることがわかります。
インサイドセールスがアポ獲得業務にて行っている業務の実施率 インサイドセールス白書より
特に商談確定時に行う業務は、カレンダー作成・Web会議URLの発行など定型化された業務も多いので、マーケティングとインサイドセールスで協力して、効率化につながるツールの導入を検討するのが良いです
こうすることでインサイドセールスの業務が効率化され、より積極的に顧客アプローチに取り込めるようになるでしょう。
マーケティングとインサイドセールスの対立を解消する2つの取り組み
ここまで話してきたような施策は、基本的にマーケティング組織と営業組織の間で密な連携を行うことが前提となります。ですが、多くの組織ではその連携自体が課題とされているのが現状です。
次のグラフは、2024年2月にスマートキャンプが発表したインサイドセールス業界レポートからの抜粋です。インサイドセールス組織が抱える課題の上位にマーケティング部門との連携が挙げられていることがわかります。
インサイドセールスが抱える課題 インサイドセールス業界レポートより
マーケティングとインサイドセールスは、隣り合っている組織であるにも関わらず、連携不足が生じてしまうのはなぜでしょうか? 筆者は両組織の構造が大きな原因になっていると考えています。
マーケティング部門では多くの場合、オンライン/オフラインなどのマーケティングチャネルごと、あるいはコンテンツ制作といった機能ごとにチーム構成が分かれている場合が多いです。それに対してインサイドセールス部門では、営業組織と合わさるように担当プロダクトや顧客企業の規模・地域・業種ごとのチームになっていることが多くなっています。それぞれの担当が見ている課題がまったく異なるため、課題認識のすり合わせにも工数がかかってしまうのでしょう。
この課題を解決するための方法は次の2つです。1つ目は「マーケティングやインサイドセールスの組織構造自体を変えてしまうこと」です。クライアント企業ごとや業界ごと、マーケティングチャネルごとのようなチームの分け方を両組織の間で共通化し、その分け方に応じてマーケティング、営業のメンバーを同じチームにします。
2つ目は、「各組織に連携担当者を置く方法」です。この方法では、たとえばSMB向けとエンタープライズ向けに分かれるインサイドセールスチームの場合、それぞれに展示会施策の担当者を一人ずつ任命。各担当者がマーケティング側の展示会チームと密に連携を取る、といったやり方です。
組織の課題に合わせて柔軟に対応は変えるべきですが、これら2つの方法で両組織の連携の課題も解決できるでしょう。
本連載ではこれまで3回にわたって、受注につながる商談の作り方を解説してきました。初回では顧客主導化が進むBtoB購買の現状について触れ、より重要度が高まっているインバウンド商談に企業が対応できていない状況を説明しました。第2回では、インバウンド商談を取りこぼす要因として、リード対応の遅れに代表される「4つの罠」を解説しました。そして今回は、その対策としてマーケティングとインサイドセールスが連携して実践すべきことを説明してきました。
これらの記事を材料にすれば、受注につながる商談の作り方について議論がしやすくなるはずです。マーケティング組織と営業組織で連携を進めるためにご活用いただければ幸いです。
連載の前回記事はこちら
