日本のインバウンドリード商談化率が低くなる「4つの罠」とは?
前回の記事「顧客主導化が進むBtoB購買。課題の把握に役立つ5つの調査データ」では、インバウンドリードの商談化率に日本とグローバルで大きな差があり、日本の平均値はグローバルの平均値の約2分の1であること、その背景には、(1)「日本とグローバルのBtoBマーケティング手法の違い」、(2)「日本の営業生産性の低さ」、(3)「日本の営業組織の課題」があると説明しました。
第2回である今回は(3)の営業組織の課題について掘り下げて行きます。日本ではジャパン・クラウド・コンサルティング 代表取締役の福田康隆氏が5年前に「THE MODEL」を発刊して以来、分業型の営業・マーケティングモデルが広く活用されるようになりました。しかし、依然としてマーケティングが獲得したリードをフル活用できる営業組織体制が構築されている企業は決して多くありません。
筆者は以前Sansanでインサイドセールスの責任者を務め、現職では海外の営業・マーケティング組織に関する情報収集を行っています。これらを通して営業組織がインバウンド商談を取りこぼしてしまう理由が見えてきました。次の「4つの罠」が存在しているからだと考えています。
- 「90秒アプローチ」ができていない。
- 「追客不足」で全員接続できていない。
- 「アプローチ漏れ」による機会損失。
- 「PDCAの不足」で改善が進まない。
ここからは1つずつ解説します。
アプローチはリード流入から90秒以内にすべき
本来であれば、資料請求や問い合わせは顧客の興味が最も高まった瞬間です。それはつまり、その直後にアプローチすることが接続率・商談化率の最大化には重要であることを意味しています。
以前はリード流入から5分以内のアプローチが重要とされていましたが、近年では90秒以内を狙うべきであるとされることが多くなりました。
このように変化することになったきっかけの1つが、米国のSales Tech大手ZoomInfoのCEOであるHenry Schuck(ヘンリー・シュック)氏が2019年に発表したブログでした。同氏によると、同社では月に獲得するすべてのインバウンドリードで獲得から90秒以内にアプローチを行っていると言います。その数は合計10,000件にも上り、そのうち月に6,500件の商談を獲得していると言うのです。同社では、この「90秒アプローチ」の徹底に向け、独自のシステム構築や文化面でのコミットメント、CEO自身による抜き打ちテストなど様々な施策を実施しています。
直近、日本でも90秒アプローチが有効であることを示すデータが発表されました。2024年にエンSX社が発表した調査結果では、リード獲得から90秒以内に架電した場合のコンタクト率が59.18%であるのに対し、リード獲得から3分以降に架電した場合は20.51%であることがわかっています。これは、90秒以内に架電した場合と比べてコンタクト率が約3分の1になることになります。
それにも関わらず、当社が2023年4月に行った調査の結果では、日本のインサイドセールスのうちリード獲得から1分以内に架電できているのは0.8%、1~5分が17.5%となっており、8割以上の人は5分以上の時間がかかっていました。