メーカーとリテール双方がリテールメディアを活用するために必要なこと
ではリテールメディアを活用するために、広告主であるメーカー、そして運営者である小売事業者はどのような点に留意していくべきなのだろうか。
小橋氏は「メーカーさんが作った良い製品の情報を消費者の方々に届け、喜んで買っていただくことが小売事業者全体のミッションだと思います」と述べたうえで、次のように続ける。
「その手段として、リテールメディアはマスメディアと違うアプローチで非常に高い成果を期待できます。高い成果を実現するには、まずはお客様のデータを大切に扱う必要があるので、データクリーンルームのような仕組みを整備しなくてはなりません。対してメーカーさんは、これまでのように営業サイドが“販促費”として小売事業者にリベートを渡して販促テコ入れをするのではなく、マーケティング的な視点を取り入れる必要が出てくると思います。現在はその過渡期であり、マーケティングと営業で共通のゴールやKPIを持って流動的に進めていくことが大切になるのではないでしょうか」
国立氏はリテールメディア活用のポイントを3つ挙げる。
1つ目は、消費者の買い物体験をネガティブなものにしないようにメーカーと小売が双方で協力し合って取り組んでいくこと。
2つ目は、リテールメディアを「刈り取り型広告手段」と捉えず、メディアとしての役割も重視し、長期的な視点で成果を見守ることだ。「即購買につながることを期待すると思いますが、1回広告を見た方が1週間後や10日後に『あの商品が気になっているから買ってみよう』と態度変容を起こすこともあります。そうした成果も踏まえてリテールメディアを活用していただきたいと思います」と国立氏は話す。
最後にメーカー側に向け、「『お客様体験とセットでマーケティングをより良いものにしていくか』という姿勢で、リテールメディアを使い倒していただきたい」という。リテールの持っている顧客接点や保有データは、直接の顧客接点を持たないメーカーからすると宝の山だ。これをオープンな環境にしているのがリテールメディアであり、さらに小売側もメーカー側も「消費者に良い体験をしてもらいたい」という思いを共有している。その一致した思いをいかにリテールメディアで実現していくか、その取り組み方が今問われている。