2025年、9割のCookieが使えなくなる可能性は高い
これまでGoogleがCookieに代わる仕組みとして準備を進めてきたのが「プライバシーサンドボックス」だ。従来、広告事業者のサーバー上でユーザーの閲覧履歴や属性情報などを収集・分析し、広告を配信していた。新しい仕組みでは、ブラウザ(Chrome)内でユーザーの興味や関心の対象を計算し、広告事業者には計算結果だけを伝える。事業者側に情報が保存されないため、プライバシーが保護される。Topics API・Protected Audience API・Attribution Reporting APIの3つのAPIが先述したインタレストベース広告、リターゲティング広告、広告効果測定の役割を担う(図1)。
ただし、プライバシーサンドボックスの実装はDSPやSSP、広告プラットフォーマーが行うため、広告主や広告代理店にタスクが発生することはない。
気になるのはCookieと比べた際の効果だが「広告効果は残念ながら落ちると思っていただいたほうが安全かと思います」と杉原氏は語る。プライバシー保護目的でデータにノイズが入ったり、インタレストグループの上限が30日などの制限が発生したりするためだ。
このプライバシーサンドボックスは開発中であり、テスト版が一部アドテク企業に公開されているに留まる。しかし、使用企業からのフィードバックは芳しくなく、多くの問題を抱えている状態だ。プライバシーサンドボックスの審査を担う英国CMA(競争・市場庁)からも様々な問題を指摘され、交渉は膠着状態だ。これが度重なるCookieの廃止延長の背景にある。
そして、前述の通り7月に廃止撤回を発表するとともに、プライバシーサンドボックスの開発を続行しつつ、「新しいアプローチ」を提案するとした。これが一体何なのか。グローバルで様々な推測があるが、杉原氏はユーザーがトラッキングの可否を選ぶようになるのではないかと予測し、2025年の第1~第2四半期には実施されるのではないかという見方を示す。
ユーザーがトラッキングの可否を判断するAppleのATT(App Tracking Transparency)におけるトラッキングの許諾率はグローバルで30%強、日本だと16~8%だ。Googleも類似の仕組みを導入するとしたら、8割~9割のCookieが使えなくなる可能性は非常に高い。
加えて杉原氏は「Cookieレスは既に相当進んでいる認識を持ったほうがいい」とも語る。AppleのITPはSafariだけでなく、iOS上で動作する他のブラウザ(例:Chrome、Firefox)にも適用されている。日本のiOSデバイスのシェアは約7割。モバイルでは既にCookieレスが始まっているのだ(図2)。
