ウォールドガーデン偏重からの変化も必要
Cookie規制の影響が大きいのはいわゆるプラットフォーム運営のディスプレイネットワーク、DSPやSSPなどのオープンインターネットの広告だ。Cookie代替の仕組みが用意されたとしてもプライバシー保護を第一に置いた仕様のため、広告効果はCookieと比較すると恐らく落ちると考えられる。そうなれば、1stPartyDataを用いて精緻なターゲティングや効果測定が可能なウォールドガーデンや、リテールメディア/コマースメディアへの予算移行も想像に難くない。特に、日本では効率を重視するあまり既にウォールドガーデンへの依存を高めている傾向がある。
しかし、杉原氏はウォールドガーデン偏重の姿勢に対して疑問を投げかける。IndexExchangeの調査によると、生活者は可処分時間の55%をオープンインターネットに費やしている。この機会を活かすためには、既にCookieレスが進むiOSモバイルユーザーをきちんと捉え、新規獲得数の伸長、広告単価や獲得単価を下げる取り組みを並行して進めていく必要がある。そのためには、プログラマティックに頼らず広告主がきちんとメディアを選定するという、ある種の回帰が求められる。
今は管理画面でターゲティングを設定すれば広告が配信されるが、果たして、本当に自社の広告の配信面を管理できているだろうか?メディアの数も多く選定は非常に大変だ。しかし、「自社に合ったオーディエンスがいるサイト・良質な枠をきちんと選ぶことで効果のある広告配信ができます」と杉原氏は説く。
ハイブリッドCookie時代に向け何をすべきか?
以上のように2025年からは、わずかに残るCookieと、その他の施策を併用するハイブリッドCookie時代が到来し、各社はその対策を求められると考えられる。
では、具体的に何をしていけばいいのだろうか? 広告主とパブリッシャーの基本となる行動指針はこれまでと変わらない。プライバシーサンドボックスの行方を追いつつ、IDソリューションやデータコラボレーション、その他ハイブリッドCookie対策について何が自社に合うのか調査・試用し、評価しながら実装していく。その実現のために、杉原氏は「把握・整理・実行」の3ステップを推奨する。
まずハイブリッドCookie環境が自社へ与える影響範囲を把握する。広告効果の低下が売上にどれだけのインパクトとなるのかを計測し、マイナス分を取り返すための投資先を判断する。投資はたとえば、追加施策の実施や、1stPartyDataの蓄積・活用などが考えられる。いずれにしても、投資判断は経営マターになるため、経営層の巻き込みが不可欠だ。また、情報システムや法務など他部門との連携も必要になる。そのため、ハイブリッドCookie対策はDXの一環、大きなプロジェクトとして捉えるべきだろう。
把握ができたら、自社データを整理する。現在保有する1stPartyDataを棚卸しし、外部活用の可能性および、ユーザーの許諾が問題なく取れているかなどを確認していく。許諾については規制が厳格化されると予想されるので、法務部門と連携し厳密に行う必要がある(図3)。
次に、世の中のソリューションをいくつかの角度で理解し、導入を検討する。データクリーンルームやコンテクスチュアル広告など大きな分類をして、それぞれ何ができて何ができないのか、自社に合っているか、導入コストなどの観点から評価する。これらをなるべく早く進めていくことが非常に重要だ。
