CX人材5,000人育成を目指す
社内にマーケティングを浸透させていくにあたり、重要なのが人材育成。同社は、この3年程でデータ活用ができるCX人材を約1,200人育成することに成功しており、将来的には5,000人を目指している。成功のポイントは「大規模に」「素早く」「体系的に」の3つだ。
大規模に大量の人材を育成する意図
現場の各部署にマーケターやデータサイエンティストが1人ずついるだけでは、組織は動かない。2~4人が1つの部署にいることで会話が起こり、アイデアが生まれてくる。そうして現場から提案が上がるようになってくると、だんだんデータやマーケティングを使うカルチャーに変わっていく。
「これが人材を“大量に”育成しようと思った狙いです。データをもとにマーケティング思考で提案できることが、弊社の営業の一番の武器になっています」(木田氏)
7ヵ月で知識・スキルを身に着ける体系的なプログラム
また、人材育成は、全7ヵ月のプログラムを組み体系的に行っている。まずは、基礎知識を拡充するためのアプリ学習。社員は自身のスマホアプリで毎日15分程度、マーケティングの基礎知識を習得する。なお、この学習の進捗状況もしっかり管理しているそうだ。
そうして得た知識を応用/実践する場として、月次で定例会を開催。業務での活用を想定したグループ議論や、社外講師による講義&実践ワークを行い、自分で考えて判断する力を養っていく。
最終的に必要となるのは「ビジネストランスレータースキル」
マーケティングやデータ分析のスキルを持った人材がそろっていても、ステークホルダー内で齟齬があると物事は進まない。そのため、木田氏は人材育成で「ビジネストランスレータースキル」も重視している。
ビジネストランスレーターに必要なスキルとして木田氏が定義しているのは、ビジネススキーマ活用力、プロジェクト遂行力、ビジネス背景理解力、データ解釈基礎力の4つだ。
プロジェクトの遂行には暗黙知・形式知の理解が必要
スキーマとは、認知心理学の言葉で「保有する知識によって構成されるモデル」のことをいう。人間の行動・思考・判断過程は一部構造化されており、当たり前のことをわざわざ話したり、意識したりしない。たとえば、以下の画像が「顔」に見えるのは、「顔には目・鼻・口がある」という概念(=スキーマ)を持っているからだ。
ビジネスでも、他者とスムーズに仕事を進めていくためには、暗黙知・形式知が求められてくる。部署の関係性や空気感、カルチャー、独自ルールなどの暗黙知・形式知を掴んでいなければ、データとエビデンスに基づいたマーケティングを実行しようと発起しても、うまく進まない。特にデータサイエンティストはこの壁に直面することが多い。プロジェクト遂行力を高めるためには、ビジネススキーマを上手く活用することが大切なのだ。
本当に機能するマーケティング組織には、データ×マーケの2軸人材が必要
また、木田氏はマーケティング組織の立ち上げ時、「データ分析の機能を持つマーケティング組織にすること」にこだわった。組織の人数がまだ少ない頃から、あえてデータサイエンティストを組織に配置したという。
ここで言うデータサイエンティストは、ただデータを分析できるだけの人材ではない。ビジネスの背景を理解し、マーケティング思考でデータを解釈できる人材である必要がある。そこで同社では、データサイエンティストもマーケティングマスターコースに通うなどして、基本的な知識や考え方を身に着けている。
これにより、たとえば「現在の損害保険業界はダブルジョパディが成立しにくい業界だ」などの仮説をデータから導き出し、検証した結果を実際の施策に活かすなどの好循環が生まれているそうだ。