2024年を振り返る
BtoBマーケティングに限りませんが、業務環境の変化は「外部環境」と「内部環境」の観点で捉えるのが良いでしょう。外部環境に含まれる「顧客」「市場」は、事業ドメインによる動向の差異があるため、本稿では触れません。BtoBマーケターのジョブに関わる内部環境として「テクノロジー」「業務プロセス」「人材」について振り返りたいと思います。
生成AI
テクノロジーの最注目分野は生成AIでしょう。マーケティングにおいてはコンテンツ作成やデータ分析などの業務で利用例が見聞され、自社内での試行錯誤とそれによるナレッジ蓄積が進んでいます。
生成AIの“使い始めやすさ”と体験がAI全体への関心を助長し、業務向けソフトウェアに組み込まれたAI機能の利用も、今後は加速するでしょう。これまでも、データ分析ソフトウェアでは「投入データから自動的に作成レポートの推奨を行う」「自然言語処理によりレポートからの洞察を言語化する」などの利用例が存在しましたが、より多くの業務向けソフトウェアにもAI機能が実装されることで、ホワイトカラーの生産性向上を支援してくれるはずです。
将来的には、人間の拡張知能としてのAIから、自律型のAIエージェントへシフトする流れも見えており、今後もフォローすべきトピックであることは間違いありません。
インテントデータ
2024年、特に日本において台頭し始めた新たなツールとして、インテントデータを軸にした「ABMツール」および「PRM(Partner Relation Ship)ツール」が挙げられます。ただ、これらは先行する米国プレイヤーのフォローですから、新規分野とは言えないでしょう。
ABMツールの一般的な提供機能は、インテント(興味関心)データとターゲット企業・部門・担当者のデータベースを組み合わせるものです。ターゲット企業のコンタクトを獲得するためのツールなら、ABMツール以外にも選択肢があります。たとえば、法人データベースなどのデータサービス単体や、外部のテレマーケティングサービスです。BtoBマーケターにとって現在は、効果性・再現性・拡張性の観点からツール/サービスを試行錯誤する時期と言えましょう。
RevOps
これもABMツールと同様に米国発祥です。フォレスターが提唱するデマンドウォーターフォールとレベニューエンジンの概念をベースにしたRevOpsの台頭は、セールス、マーケティング、さらにはカスタマーサクセスを横断し、業務プロセスを拡張する流れの表れだと個人的には解釈しています。
セールスに対するイネーブルメントや、マーケティングにおけるオペレーションの標準化・効率化が進む一方、Bridge Groupのレポート『SaaS Account Executive Report』によると、SaaS分野のセールスの売上ノルマ達成比率は74%(2012年)から51%(2024年)へと減少しています。このことが示唆するように、セールスとマーケティングそれぞれの組織機能を向上するのみならず、全体最適へと企業の焦点が向き始めてきているようです。
インハウスマーケターの活躍
2024年に、新たな兆しを感じることがありました。これまでBtoBマーケティングに関するメディアの記事やナレッジ、イベントの登壇および出版において、その担い手の多くは支援会社もしくはツールベンダーの中の人でした。しかし2024年は、BtoB企業のインハウスマーケターが発信し、出版へと進む流れが見られたのです。
日頃BtoBマーケターと交流する中で、ロールモデルの不在やモチベーションの停滞に課題を抱く方が多いと感じます。2025年はインハウスマーケターのインフルエンサーを中心に交流やナレッジ共有が進み、BtoBマーケターのエンパワメントが進むことを期待します。