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WOWOWはユーザー離脱という課題にどう挑んだのか?高度なコミュニケーションを実現する基盤作りの裏側

 WOWOWは、デジタルマーケティングの改善とロイヤルティ向上のため、顧客コミュニケーション基盤を「KARTE」シリーズに刷新・統合。データを集約し顧客理解を深めてよりよい体験を提供することで、サブスクリプション継続率の向上や利用促進などにつなげている。本記事ではWOWOWおよび同グループ内でマーケティング支援を行うWOWOWコミュニケーションズに、取り組みの背景から具体的な施策、ポイントなどをうかがった。

オンデマンド、コンテンツ制作と進化を続けるWOWOW

MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、自己紹介をお願いします。

所:WOWOWは日本初の民間衛星放送会社として設立され、その後お客様のニーズに応じてオンデマンドサービスの提供を開始しました。映画、スポーツ、音楽、ドラマなどのコンテンツやオリジナル番組などを放送と配信でお届けしています。近年は映画製作や配給などエンターテインメントに関連する様々なビジネスにも取り組んでいます。

 私は、WOWOWに加入するお客様へのコミュニケーション全般を担うカスタマーリレーション部でMA(マーケティングオートメーション)を担当するチームの統括をしており、事業部間の業務連携や企画推進の役割なども担っています。

株式会社WOWOW 会員事業戦略局カスタマーリレーション部 チーフ 所亜紀氏
株式会社WOWOW 会員事業戦略局カスタマーリレーション部 チーフ 所亜紀氏

横関:WOWOWコミュニケーションズは、WOWOWのカスタマーセンターとして1998年に設立されました。その後、デジタルマーケティングやコンサルティング事業などに支援の幅を広げています。近年は蓄積されたノウハウを活かしてWOWOW以外の企業様のマーケティングも支援しています。

 私はWOWOWに対するマーケティング支援を担当するWOWOW事業部で、MAツールを活用しながら新規加入者数、継続率などのKPI達成に向けて取り組んでいます。

株式会社WOWOWコミュニケーションズ WOWOW事業部 デジタルCRM課 課長補佐 横関彩氏
株式会社WOWOWコミュニケーションズ WOWOW事業部 デジタルCRM課 課長 横関彩氏

今部:WOWOWコミュニケーションズはコールセンター事業から始まった経緯があり、私や横関も含めて出自がコールセンターのスタッフが多いです。WOWOWを利用されているお客様のお問い合わせや生の声をこれまで聞いてきたので、顧客理解の深いメンバーが多い点も特徴です。

 私は横関とともに、MAツールを扱うデジタルCRM課でWOWOWのマーケティング支援を行っています。取り組みの一つとして、2024年4月からWOWOWで導入したCXプラットフォーム「KARTE」シリーズを活用したMA運用支援を開始しました。

株式会社WOWOWコミュニケーションズ WOWOW事業部 デジタルCRM課 今部省吾氏
株式会社WOWOWコミュニケーションズ WOWOW事業部 デジタルCRM課 今部省吾氏

WOWOWが抱えていた3つの課題

MZ:KARTEシリーズの導入に至った背景を教えてください。

所:チームとして抱えていた課題は大きく3つありました。1つ目はツールとチャネルが点在していたことです。それぞれのツールにコストが発生し運用管理にも負荷がかかるため、そのコストを圧縮して効率化したいニーズがありました。

 2つ目はデータ利活用の推進です。昨今のDX推進の流れを受け、社内でも顧客管理システムのリプレイスが進むなど、データ環境の変化が加速している時期でした。そのため対向システムの影響を受けず、安定して運用できるツールや体制にしていく必要性を感じていました。

 3つ目はお客様とのタッチポイントの強化です。放送から配信へとサービス提供範囲が広がる中、様々なデバイスでのコミュニケーションが必要となり、それらすべてをカバーし運用体制も一元化できるツールへの刷新が必要だと考えていました。

 また当社ならではの課題として、お客様一人ひとりに合わせたコミュニケーションをとる難しさもありました。WOWOWは映画、スポーツ、音楽、ドラマなど多岐にわたるジャンルのコンテンツが集まるプラットフォームです。そのためお客様の世代や趣味嗜好が幅広く、一人ひとりに寄り添うためには高度なコミュニケーション施策が必要不可欠でした。

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 簡単な操作画面と豊富なテンプレートによって、難しい専門知識がなくても思いついたアイデアを形にできます。データ活用の課題には、専門チームが一気通貫でご支援。詳しくはメディア・コンテンツ企業向け「KARTE」サービスサイトからお問い合わせください。

点在するツール、急速に変化するデータ環境……様々な課題への対応策の決め手は

MZ:それらの課題を解決するためにKARTEシリーズを導入されたのですね。

所:KARTEシリーズを選んだ一番の決め手は、オールインワンのソリューションだったことです。点在化したツールをまとめ、各チャネルを横断してコミュニケーションをとるために、一つのソリューションで複数の機能を有していた点に魅力を感じました。

 特に課題だったデータ利活用の面において、KARTEでは施策実行だけでなく分析や顧客行動の深掘りまで機能が揃っているため、KARTE内で成果の可視化が可能になりました。データ管理をチーム内で完結できることは非常に強みですね。

 運用面においても、プロダクトはプレイド、導入はご紹介いただいたパートナー企業に支援していただきました。基盤刷新プロジェクトではプレイドのプロフェッショナルサービス「PLAID ALPHA」の伴走支援もあり、フロント・バックエンド双方でサポートいただけて、タイトな導入スケジュールも乗り越えることができました。他社の事例をなぞるのではなく、WOWOW独自の課題を解決するという姿勢で支援いただけました。

MZ:導入する際に課題はありましたか。

所:導入にあたり、データ量と施策の多さから、想定以上の工数が必要となることが判明しました。そこで施策の優先順位を整理しつつ、プレイドとともにスムーズな運用を実現するための方針をまず話し合いました。定まった方針をスタート地点として、導入を進めていきました。

 実は同時期に顧客基盤を担うシステムのリプレイスが進行しており、そのシステムリリースがKARTE切り替えの10日前となることが予め決まっていました。厳しい条件だったにも関わらず、プレイドが短期間で導入準備を進めてくれたことで、予定していたリリース日に間に合いました。KARTEというプロダクトにおける技術力はもちろん、事業パートナーとしても心強く感じましたね。

目的の番組視聴を終えたユーザーの離脱をどう阻止する?

MZ:KARTEシリーズに顧客基盤を刷新した後、具体的にどのような取り組みを行ったのでしょうか。

今部:KARTEを導入したことでお客様の好みに合わせたコミュニケーションをフレキシブルに実行できるようになりました。たとえばWOWOWでは、特定の番組を見た後そのままサービスから離脱してしまうユーザーが一定数いるという長年の課題がありました。そこで他に気になる番組があれば離脱を防げるのではと考え、ユーザーの嗜好に近い番組を訴求し配信開始の通知登録を促すポップアップを表示。施策の有無で通知登録率に約5倍の差が出て、継続率の向上に好影響がありました。

今部:またKARTEの良さとして、サイトやアプリにポップアップを表示するといった施策が簡単に設定できたり、施策実行後に複数のCVポイントを手軽に見られたりする点も挙げられます。施策を実行した際、全体では効果がそれほど出ていなくても特定のセグメントには効いている、といったこともKARTE内でわかりました。そのため、すぐにその施策を止めるのではなく、よりターゲットを細分化して継続する方法を模索できています。

 旧ツールで実施していた施策もスムーズに移管でき、上手く効果が見えていなかった部分もKARTEで詳しく見られるようになったので、とても満足しています。

横関:チャネルが点在している課題に対しては、KARTE導入後はWebやアプリのポップアップ、プッシュ通知、メール配信などを一連でできるようになりました。新規加入から解約を抑止するための施策まで分断された形で取り組むのではなく、様々なチャネルを一連で実行していく意識に変わりました。

 たとえばメールを配信するだけでなく、当社で制作した番組についてアンケートでお客様からの声を収集して、プロデューサーやプロジェクトメンバーに共有したことがありました。さらにこれらの声を公式Xで掲載するなど、チームの垣根を超えた施策を実現できました。このような別チームとの施策連携は、旧ツールを活用していた際はその発想すら難しかったのです。連動した施策やコミュニケーション設計が発想できる環境を、KARTEを導入したことで得られたと実感します。

今部:一人ひとりのお客様がどういう体験をしたのかについても、KARTEを利用して理解を深めています。従来は外部のダッシュボードで確認していた「クリック後の実際のお客様の行動履歴」といった情報も「KARTE Datahub」とKARTE内のインサイト機能を活用して見られるようになったことは大きかったです。

様々なチャネル・タッチポイントでデータ統合・利活用を実現する「KARTE Datahub」
様々なチャネル・タッチポイントでデータ統合・利活用を実現する「KARTE Datahub」
ユーザーストーリー画面から個別のユーザーの行動をセッションごとに詳しく見ることができる
(クリックして拡大)

今部:その結果、「夜中にアプリを開いている」「色々なページを回遊している」「留まっている時間が長い」といった行動傾向を把握することで、なぜこのお客様はこのような行動を取っているのか、という想像がしやすくなりました。客観的な情報をもとにチーム内でも深く話せることが増え、結果を振り返る際の質・量ともに高まりました。

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その施策は本当に顧客の体験につながっているか

MZ:この他に、取り組みを通して感じた変化や手応えはありますか。

今部:KARTE Datahubとセグメント機能を活用することで、お客様それぞれに合った質の高いコミュニケーションを発信できる土台ができあがったと感じます。KARTEを今後さらに使いこなすことができれば、施策に関する様々な自動化やパーソナライズ化を一層進められそうです。

所:現時点でもオンデマンドチームと連携して作品コメントをポップアップで表示して視聴促進を図る施策など、従来では難しかった取り組みにもチャレンジしています。

横関:KARTEを導入したことで「実施した施策がちゃんと顧客の体験の一部になっている」という実感ができています。クリック率のような単純な数字だけでなく行動まで追えることで、チーム内のマーケティング施策に対する意識が高まりました。

MZ:取り組みの中で意識されたことはありますか。

今部:コミュニケーションプランニングを「ユーザー軸」と「コンテンツ軸」の2つに分けて施策を管理しています。現在400以上の施策を実行しているため、効果の把握や管理が非常に大変だったことから、管理方法は今年大幅に整備・刷新しました。

 またKARTE導入にあたり、社内で勉強会を開きました。ツールの操作方法というよりも、プロダクトの概念全体を学ぶという狙いのもと、メンバーで情報を共有し合いました。施策を実行するだけではなく結果をどのように見ていくのかをチーム内で最初に話し合ったことで、効果のある施策を早い段階で実行できたと考えています。

顧客理解を深め、さらなる価値を提供

MZ:今後の展望についてお聞かせください。

所:WOWOWは有料放送から始まり、現在は伸張している配信市場を念頭にオンデマンドサービスの強化を推進しています。2025年度はより総合サービスとして成長していくとともに、EC事業を推進し、見るだけではない体験の提供を目指していきたいと考えています。求められる顧客コミュニケーションが増えていくことが予想されますが、KARTEがあれば臨機応変に対応できると思います。

横関:従来のツールを活用していた際は施策運用のみに終始していましたが、今後はKARTEを活用しながら、より広く顧客の体験価値を向上できるチームになっていきたいと考えています。この取り組みを通して得られた知見を活かし、WOWOW以外の企業様に向けても支援の幅を広げていきたいです。

今部:お客様との接点を最適化していきたいと思っています。セグメントの最適化なども自動化を進めていきつつ、さらなる顧客理解を深め、コンテンツだけでなくお客様のLTV(顧客生涯価値)を最大化できるサービス提供を実現したいです。今後はもっとお客様に喜んでいただけるWeb接客やメール配信、プッシュ通知など、各施策を高度化していきたいですね。

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この記事の著者

太田 祐一(オオタ ユウイチ)

 日本大学芸術学部放送学科を中退後、脚本家を目指すも挫折。その後、住宅関係、金属関係の業界紙での新聞記者を経て、コロナ禍の2020年にフリーライターとして独立。現在は、IT関係を中心に様々な媒体で取材・記事執筆活動を行っています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社プレイド

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/05/20 12:00 https://markezine.jp/article/detail/48628