AIホームに見られた、AI活用のトレンド
CES 2025では、AIホームに関心が集まっていました。元々あったスマートホームの概念から大きく進化していたわけではありませんが、「人間らしさの再考」という意味で、トレンド的な要素が反映されていたと思います。
従来のスマートホームは「個人の物理的な快適さ」が主眼に置かれていました。指先が冷えていることをエアコンがセンシングして、指先をピンポイントで温めてくれたり、同じ部屋にいても家族で体温が違えば、送るエアコンの強度をそれぞれに合わせてくれたりといったイメージです。
一方、AIホームは「家族の精神的なつながりも含めた快適さ」を実現するものに進化していました。家族の習慣をAIが学習し、みんなが快適に過ごせるようにアシストすることで、家族の関係性までよくしていくといった文脈です。利便性を越えて、より人間らしいところまでAIが入ってきたことを感じました。
ちなみに、私はサムスンのファンでして、同社はCESのトレンドを牽引してきたリーダーであると思っています。たとえば、サムスンは今年のAIホームの展示で「Ambient Sensing」というコンセプトを打ち出していました。Ambient Sensingは、IoTやコネクテッドで実現される構造を言語化し、うまくストーリーに落とし込んだ、とてもよいコンセプトだと思います。わかりやすいアプローチで、しっかり言葉にして発信していくのが、サムスンの素晴らしいところです。
日本の技術企業も「ビジョンドリブン」で価値を世界に伝えていこう
日本には、素晴らしい技術を持っている企業がたくさんあります。しかし、多くの企業がその技術の魅力やポテンシャルを伝えきれていないように感じます。先述したサムスンをはじめ、韓国やアメリカのテック企業は「自社の技術でこんな世界を作るのだ」と大きくビジョンを掲げます。日本企業も同様に、「自社の技術でどんな未来を作ることができるのか」を語ることが必要です。
自社が有している高性能・高品質なテクノロジーでどんな未来が作れるか? それを妄想し、構想に落とし込み、言葉にして伝えていく。そうして、自社のテクノロジーにあるポテンシャルや将来価値を可視化するのが、マーケターの仕事です。
テクノロジーの話になると、「データ」や「数字」に依ってしまいがちですが、それでは価値が広がりません。もちろん、専門的に技術を磨き込める人財がいてこそですが、技術力のある企業は、構想力と実現力のあるマーケターが伴走することで、その価値を最大化できるのではないかと考えます。
市場に埋もれていてはもったいない、優良な企業が日本にはまだまだたくさんあります。技術に未来価値を作り、それを伝えていくためのサポートに、私もより力を入れていきたいと思っています。
