年々厳しくなる顧客からの目。顧客体験がもたらすインパクトとは?
最近は物価高が叫ばれていますね。スーパーやコンビニに行っても「あれ?こんな高かったっけ?」と日用品の値段上昇に驚いたりします。調査によると、現在グローバルの約半数の生活者が、ここ数年のインフレが要因で「購買力の低下」を感じています。

そして購入できるものが少なくなると、より多くを顧客体験に求めるようになっています。実際に、ブランド(一般商材含む)を購入しなくなった理由として「インフレーション(58%)」と同じく「不適切なショッピング体験(59%)」が挙げられ、経済的要因と同等のインパクトが顧客体験にあることがわかりました。これはブランドにとって無視できない事実かと思います。
顧客体験向上の具体例としてわかりやすいのが、スーパーアプリ(複数のサービスが統合したアプリ)の登場によるショッピング体験の最適化が挙げられます。PayPal社が「Everywhere」と題したキャンペーンのCMでは、店舗や個人間取引などのキャッシュレスサービスを訴求。スムーズな顧客体験の喜びを、コメディアンのWill Ferrellが歌と踊りで表現しています。

このように顧客体験は、ブランドの満足度を大きく向上させる可能性があります。一方で「顧客体験」とは、顧客が商品やサービスと接する、あらゆる体験のことを指し、その定義は非常に広範囲なものです。
では、「顧客体験」を向上させるには何をすれば良いのでしょうか? また、よく言われる「スムーズな顧客体験」とは具体的に何を意味するのでしょうか?
Havas社では2019年より、500以上のブランドを対象に、グローバルで顧客体験調査を実施しています。この記事では、各国で高い評価を得たブランドの事例を紹介しながら、調査から見えてきた生活者の顧客体験の主要ニーズを紹介していきます。
時間効率:Zepto - 10分デリバリー・モデル
「時間を無駄にしないこと」。これが生活者の顧客体験に求める最も大きなニーズであることが調査からわかりました。忙しい現代では、ショッピングに時間を掛けることは敬遠され、そこでのタイムロスは大きな不満が持たれるようです。

インドでクイック・コマース(即時宅配サービス)を提供するZeptoは、生活者からの顧客体験評価が非常に高いブランドです。特徴として、Zeptoでは購入した商品を10分以内で宅配することを約束。また商品点数が少なくなりがちな即時宅配サービスにも関わらず、幅広い商材(果物や野菜、食料品、パーソナルケア用品、電化製品など)を扱うことで、生活のあらゆる面での利便性を提供しています。

この迅速なサービスを可能にしているのは、ダークストアと呼ばれるオンラインショッピング専用の倉庫。Zeptoではデータを活用し、都市部のダークストアを戦略的に配置させていることで「10分以内」という宅配を可能にしています。2024年時点で3,000万人の超える月間アクティブユーザーを獲得しており、2025年にはダークストア数を2倍に増やす予定。都市部では時間と利便性のニーズが高く、ニッチと言われてきた即時宅配サービスは、インドでは主流となってきているようです。
この事例から読み解けるのは、生活者が「購入後の時間効率」までを重視していることです。今後ブランドにとって「Post-Purchase(購買後体験)」のデザインは、より大切になってくるかと思われます。