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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

事例を通して見る世界のマーケティング/ブランディングのトレンド

顧客体験は顧客自身でデザインする時代に?最新事例と調査から考えるCXのキーワード

ハイパー・パーソナライゼーション:Spotify – AI Playlist

 顧客体験でよく語られるパーソナライゼーションへのニーズも健在です。自分のためにデザインされた体験を求めるニーズですが、現在はより進化したハイパー・パーソナライゼーションという概念が生まれてきています。通常のパーソナライゼーションは「過去のデータ」を元に「同じ嗜好を持つ人たち」を対象にしているのに対し、ハイパー・パーソナライゼーションは「リアルタイムのデータ」を元に「個人」を対象に、より個人にマッチしたサービスを提供するものです。

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 この具体例として、Spotifyが2023年に発表した「AI Playlist」が挙げられます。たとえば「出かけるので気分をアゲるプレイリストをお願い」とチャットにプロンプトを入力すると、それに合わせたオリジナルなプレイリストを制作してくれます。また“ちょっと違うな“と思ったら「もうちょっとチルな楽曲を加えて」などチャットを繰り返すことで、プレイリストの最適化が図れます。このように、固有のリクエストに応える形式を取ることで、「おすすめ」以外の選択肢をユーザーに提供する仕組みになっています(現在はベータ版が米国、カナダ、アイルランド、ニュージーランドのみで利用可能。日本での実用が期待されますね)。

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Spotifyの公式YouTubeチャンネルが公開する「Meet AI Playlist」より

 他にもAmazonでは米国を皮切りに「Consult-A-Friend」機能を導入中。これはユーザーが商品の購入検討時に、何人かの友人に相談を送ることができ、そこで返答されて来たコメントは、まとめて閲覧できる機能です。これによりオンラインショッピングは、ソーシャルな体験へと進化。もちろん、より多くの情報に基づいた購買決定にも役立ちます。

 データを活用したSpotify、ソーシャルなつながりを活用したAmazon。アプローチは異なるものの、パーソナライゼーションをより進化させる動きが、顧客体験評価が高い両社の新サービスに見てとれますね。

データ保護:Samsung – Privacy Dashboard

 ここまで紹介してきたケーススタディーを見ていると、その多くが何かしらの形で「データ」を活用していることがわかります。一方でブランドが正しく「データ」を活用することは、ブランド評価における「衛生要因(そこに問題があると大きな不満要因になること)」であると考えられます。

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 実際に、シスコ社の調査によると、消費者の約半数(46%)が「自分のデータを保護できないと感じたことで、サービス利用をやめた経験がある」と答えています。

 サムスンは2021年より「プライバシー・ダッシュボード」を導入し話題となりました。スマホアプリは、そのサービス提供のためにスマホのデータにアクセスしていることがありますが、それをユーザーに開示してくれる機能です。

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Samsung South Africaの公式YouTubeチャンネルが公開する「Samsung Privacy: You're in control | Samsung」より

 これによりユーザーは、必要以上のデータにアクセスしているアプリ(たとえば、バックグラウンドでマイクがオンになっているなど)を素早く発見することが可能。不必要であれば即座にアクセス許可を取り消せます。また、アプリがクリップボード(スマホ上で一時的に保存されたデータ)にアクセスした際には、アラートを受け取るオプションもあります。

 革新的なテクノロジーで注目されるサムスンですが、データ保護という部分もしっかりと対応をしていることで、顧客体験評価が非常に高いブランドとなっています。アルゴリズムの時代には、サービスを提供するブランド側に安心を求めるニーズも抑える必要がありそうです。

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社会意義:Sephora - Black Beauty Is Beauty

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この記事の著者

北市 卓史(キタイチ マサシ)

HAVAS JAPAN 株式会社   Executive Director

営業職をベースに、国内と海外にて広告代理店の会社/新規事業立ち上げに従事。2022年より世界149カ国にオフィスを展開する広告代理店であるHAVAS社の日本法人の現職に就任。多様性のある職場や働き方、他国オフィスとのオペレーシ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/03/24 08:00 https://markezine.jp/article/detail/48670

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