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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Spring

トップが自ら学び、課題を具体化する――データドリブンを根付かせ企業成長へ導いたグッデイの実践論

週次の勉強会で得た知見をカリキュラム化し、全社展開へ

藤原:データ活用を実現するための組織と人材についてもうかがっていきたいと思います。柳瀬さんが心がけていることは何ですか?

株式会社グッデイ 代表取締役社長 柳瀬 隆志氏
株式会社300Bridge 代表取締役 藤原 義昭氏

柳瀬:役割分担を明確にしています。自社システムからクラウドのデータベースにデータを入れるまでをシステム部門の仕事とし、データベースを用いた分析は営業本部の仕事としています。一般的にはデータ分析画面の作成までシステム部門が担当することが多いですが、どんなデータが必要で、どんな業務があるかは現場側でしかわかりません。そこは現場側が担当するという仕切りを、最初に図を見せながら説明しました。

藤原:Tableauを導入した理由もそこにあるのですね。比較的使いやすいツールですから。柳瀬さんは最初に「自分で触ってみる」ことを実践されていますが、それはマスト要件ですか?

柳瀬:マストではないと思いますが、人材育成という観点では重要だと考えます。私はTableauだけでは単純な時系列分析などに限られてしまい不十分だと感じました。クラスタリングや相関分析などの統計的処理も必要だと考え、自分で勉強したんです。さらに、社内で10人ほどのグループを作って勉強会を行いました。

 最初は私が学んだことを共有する場でしたが、「実はR言語を書くのが趣味です」など私が知らなかった社員のスキル発見や、「店舗による商品の売れ行きの違いをクラスタリングで分析できないか」など、実践的な議論に発展しました。結果、多くの社員が勉強会に興味を持って積極的に参加し、予想以上の成果につながりました。

藤原:柳瀬さんが自ら学び、そこから社員へ勉強の輪が広がったのですね。

柳瀬:しかし、勉強会に参加しているメンバーだけがデータを分析できても意味がありません。どう広げていくかが課題でした。そこで、勉強会の内容をカリキュラム化し、ツールの使い方から統計の基礎まで学べるように整えました。

 現在は本部の社員はほとんどこのデータサイエンス教育を受けています。今年は試験的に店舗スタッフを含む全社員への展開も始めています。

粗利率4〜5%上昇!経営視点で最重要な利益視点

藤原:店舗スタッフの方々はどのような分析を行っているのですか?

柳瀬:店舗スタッフは補充作業や接客で忙しいため、じっくりとデータに向き合う時間がありません。基本的にはダッシュボードを毎日確認し、そのデータをもとに発注などの業務をします。店舗運営の部門が様々なダッシュボードのリンク集を作成し、どのダッシュボードを見るべきかをマニュアルとして整備しています。最もよく見られてるのは、当日の売上や何が売れているかといった情報ですね。

藤原:意識が変わり、環境が変わり、行動も変わったと思いますが、実際に業績にどのような影響がありましたか?

柳瀬:最も大きな成果は利益率の向上です。導入後の10年間で粗利率が4〜5%上昇し、無駄な値下げも減りました。「なぜこの商品を安くしているのに売れないのか?」といった疑問に対して、以前は根拠がなかったり調査に時間がかかったりしましたが、今ではデータを用いて社員も含めて経営的視点での分析が可能になりました。

藤原:よくDXは「1時間かかることを5分でできるようにする」などと言われます。効率も大切ですが、経営者としては利益を上げることが重要ですよね。そこに直結するという点は素晴らしいと思います。

 現場の方の中にはデータ活用のための環境整備をしたくても「経営者を説得できない」というお悩みがあるケースもあると思いますが、粗利率の向上を示せれば、P/Lの売上総利益が増え、営業利益も増えるという説得力のある提案ができますね。

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生成AI活用も部署を超え、情報を共有しながら進める

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/04/23 07:00 https://markezine.jp/article/detail/48709

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