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第111号(2025年3月号)
特集「CES 2025より テクノロジーで変わる社会、広告、マーケティング」

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MarkeZine Day 2025 Spring

トップが自ら学び、課題を具体化する――データドリブンを根付かせ企業成長へ導いたグッデイの実践論

 データドリブン経営へ舵を切り、圧倒的な成果を出している企業は何を見据え戦略を描き、組織・人材をどのように育成し、実行力・分析力を培ってきたのか。MarkeZine Day 2025 Springにおいて、データ活用の文化をゼロから根付かせてきたグッデイ代表取締役社長・柳瀬隆志氏と、複数社のデータドリブン・DX実現を牽引してきた藤原義昭氏が登壇。データドリブンを実現する秘訣を語り合った。

ネット環境なしからスタート

藤原:まずは柳瀬さんがグッデイに入社した時の状況について、少し説明していただけますか。

柳瀬:私は東京で商社に勤めた後、2008年に家業であり、ホームセンター「グッデイ」を運営する、嘉穂無線ホールディングス株式会社に入社しました。当時はスマホの普及こそないものの、メールもネットも普通の時代ですが、社内のIT環境には驚きました。誰もメールアドレスを持っておらず、会社のパソコンはインターネットに接続すらできなかったのです。システム部長もセキュリティを重視して、店舗の基幹システムを外部のネットワークから遮断している状況でした。

株式会社グッデイ 代表取締役社長 柳瀬 隆志氏
株式会社グッデイ 代表取締役社長 柳瀬 隆志氏

 仕事も「昨年売れたから」とか「この季節だから」といった感覚を重視しており、データを分析しなくても業務が回っている状況でした。しかしビジネスは数字をきちんと把握して、仮説と根拠、責任をもって進める必要があります。データ分析の環境を整えることは必須だと考えました。

藤原:そこからどのように変革を進めていったのですか?

柳瀬:正直に申し上げると、数年は思うような変革ができずExcelを使って分析する状況でした。変化があったのは2015年頃です。システムを変更し、クラウド上にデータベースを構築できるようになったのです。

 そのタイミングでBIツール「Tableau」の存在を知り、試用版を使ってみることにしました。AWSに接続していろいろ試すと、システム部門にあまり負担をかけずに様々な分析ができることがわかりました。そこでエンジニアを採用して仕組みの整備を進めました。

 よくあるデジタル化では、基幹システムを入れ替えてその中にデータ分析画面を作ったり、システム間連携でデータを同期させたりします。しかし私たちがやりたかったのはあくまで「データ分析」だったので、そのようなオプションは選ばず、代わりに各システムのデータベースをまるごとクラウドにコピーし、そこで自由に分析できる環境を整えました。このプロセスを通じて、自社システムのどこにどのようなデータがあるのかを理解できるようになり、社内でデータリテラシーの向上とシステム全体への理解が急速に進みました。

 元々、システム部長がすべてのシステム情報を掌握していて、「システムの仕様書はどこにありますか」と尋ねると「私の頭の中にあります」と言われ、手が出せない状態でした。しかし改修後は私たち自身が分析できるようになりました。

 さらにAWSやGoogleのカンファレンスに参加して勉強したり、システムに詳しいエンジニアを採用し、様々な議論を重ねたりしながらデジタル化を進めていきました。

藤原:素晴らしいと思ったのはITベンダーに丸投げするのではなく、柳瀬さんが自ら試し、学び、考えたこと。ここが非常に大切だと感じました。

データ分析環境で必要な「割り切り」

藤原:私も事業会社にいた経験から、事業者の「発注力」が非常に重要だと思います。その対極にあるのが「丸投げ」です。世の中の失敗事例を見ると、要件が増えて予算が膨らみ、最終的に破綻するケースが多いです。発注する際の要件の固め方について、アドバイスはありますか?

柳瀬:私たちは、データ出力画面はすべて「Tableau」で作り、加工はSQLで行うと割り切りました。これにより、外部ベンダーに出力画面を作ってもらう際の要件定義に時間をかけることなく運用することができています。また、入力データをどう効率良く取り込むかにも注力しています。コスト削減のために、手間なく無駄なく入力するためのツールやデータソースを考えました。

グッデイのデータ分析環境
グッデイのデータ分析環境

 その上で、特化したシステムを自社開発する必要はないと判断したものは、外部のパッケージソフトを導入しています。ただし、機能の取捨選択はしています。会計システムなら「Excel連携」機能はスタンダードだと思いますが、私たちはExcelに出力せずとも、データベースから直接データを抽出できれば十分なので、不要だと考えています。

藤原:柳瀬さんの取り組みを聞くと「やらないこと」をはっきり決めている点も大きいですね。今の「Excel連携機能は不要だ」と判断するなど、取捨選択が明確です。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/04/23 07:00 https://markezine.jp/article/detail/48709

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