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「無名の新人」から「ブランド資産」へ 。企業キャラクターの開発・育成の教科書【お薦めの書籍】

 キャラクターマーケティングの成功と失敗を分ける要素とは何でしょうか。今回紹介する書籍は、企業キャラクターの開発・育成の専門家である山本達也氏と糸乘健太郎氏が、企業キャラクター活用のノウハウを体系化した一冊です。「かわいいだけじゃ、だめ」な実践的メソッドが惜しみなく語られています。

企業キャラクターは「かわいい」だけじゃだめ

「かわいいだけじゃ、だめですか?」

 そんなフレーズの流行歌が象徴するように、日本の「KAWAII」文化は幾多のキャラクターを生み出してきました。キャラクターの活用は、漫画・アニメなど様々なメディアから生み出されるキャラクターに留まらず、企業でも多く取り入れられています。

 しかし、かつて企業の顔として期待され、生み出されてきた企業キャラクターたちの多くが、その目的を果たすことなく、まるで忘れられた存在のように放置されています。今回は、そんな厳しい現実に一石を投じ、企業キャラクターをマーケティングに最大限活用するための戦略とノウハウを共有する一冊をご紹介します。

画像を説明するテキストなくても可

『強いブランドをつくる キャラクターマーケティングの新しい教科書 企業キャラクターの開発・育成・運用からコミュニケーション戦略まで』山本達也、糸乘健太郎 (共著)、翔泳社刊、2,200円(税込)

 著者は、企業の課題を起点とした戦略的な企業キャラクターの開発と活用を提唱する山本達也氏と、ロイヤリティ マーケティングの企業キャラクター「Ponta(ポンタ)」やテレビ東京の「ナナナ」を生み出した糸乘健太郎氏です。

 著者らは、企業キャラクターが「なんかかわいくて楽しい存在」「なんとなく役に立っている」という感覚を頼りに使用されてきたと指摘。キャラクターが飽和状態にある今、開発主体である企業側は、戦略性を持つことが不可欠だと語ります。

 本書の特長は、企業キャラクターがもたらす効果や、企業の課題に基づいたキャラクター開発の考え方、育成・運用方法の指針やメソッドを明確に言語化、体系化しているところにあります。つまり企業キャラクターはかわいいだけじゃ、だめなのです。

企業キャラクターの3つの機能とその効果

 そもそも企業キャラクターがもたらす効果とは、何なのでしょうか。著者は、企業キャラクターには3つの基本的な機能とその効果があると言います。

  • 機能1:アイキャッチャー
    注目を集め即座に印象づける、企業キャラクターの最も基本的な機能です。一目見ただけで、その企業や商品・サービスを想起させるため広告宣伝効果を得られます。またタレントや既存キャラクターとは異なり、特定の企業や商品・サービスとの唯一無二の一体感を生み出します。
  • 機能2:コミュニケーター
    企業の情報やメッセージを生活者サイドに伝える存在となり、親近感や共感を抱かせ両者の良好な関係性を築きます。生活者が自分ゴト化しにくい商品・サービスや、難解な専門用語を含んだメッセージも、キャラクターを介することで親しみやすい言葉や言い方に変換しやすくなるのです。
  • 機能3:インナーモチベーター
    企業キャラクターという従業員共通のシンボルへの愛着は、自社従業員など内向きにもポジティブな効果があり、組織とビジネスの活性化が期待できます。

 さらに、実在するタレントと異なり唯一無二のブランド資産となる可能性があることや、スキャンダルリスクが低いこと、そして企業の意思で臨機応変に活用できる高い自由度も、企業キャラクターならではの強みであると言えます。

企業キャラクターの3大育成・運用ポイント

 そんな便利な企業キャラクターではありますが、世はキャラクター飽和時代。適切に、開発・管理・運用をしなければ、その効果を実感できません。人間と同じで、企業キャラクターも世に出るときは「無名の新人」です。敏腕マネージャーとして、中長期の戦略に基づいて起用し育成する必要があります。

 では、どうやって育成と運用を行えばいいのでしょうか。本書の第3章では、その実務に焦点を当てた「3大育成・運用ポイント」を説明しています。

3大育成・運用ポイント

  1. キャラクター体験設計
  2. クオリティコントロール
  3. インナーコミュニケーション

 それぞれ、かなり具体的に何をするか説明されているのですが、特に1番目のキャラクター体験設計に取り掛かる上での5つのポイントは、既に企業キャラクターの運用を手掛けている方にも示唆を与えるはずです。

キャラクター体験設計で参考にしたい5つのポイント

  1. コンタクトポイントを洗い出す:トリプルメディアごとに、ターゲットとのあらゆる接点の洗い出しと整理を行うことで、体験設計がイメージしやすくなります。
  2. オウンドメディアの活用:デジタルメディアに限らず、自社が持つメディアを積極的に活用し、キャラクター体験を提供しましょう。
  3. マスパワーに頼り過ぎない:一時的な露出に留まらず、継続的な関係性を構築しましょう。
  4. リアルな場での体験価値の提供:イベント、着ぐるみの活用などを通じて、キャラクターとのリアルな触れ合いを提供し、熱烈なファンを育成しましょう。
  5. コラボレーションで体験を広める:他のキャラクターや企業との連携を通じて、キャラクターのファンのすそ野を広げる効果を期待できます。

 本書では、テレビ東京の「ナナナ」の開発経緯や、ロイヤリティ マーケティングにおけるPontaの育成・運用体制の事例なども取り上げられており、解説されたノウハウを具体的に理解する上で示唆を与えてくれます。今まで何となく企業キャラクターを起用したマーケティングやプロモーション施策を行っていた方や、企業キャラクターの起用を検討している方はぜひ、読んでみてください。

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この記事の著者

竹上 久恵(編集部)(タケガミ ヒサエ)

早稲田大学文化構想学部を卒業後、シニア女性向けに出版・通信販売を行う事業会社に入社。雑誌とWebコンテンツの企画と編集を経験。2024年翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:翔泳社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/03/19 10:00 https://markezine.jp/article/detail/48728