SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめのセミナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第112号(2025年4月号)
特集『いま選ばれる「ブランド」の作り方』

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究(AD)

“顧客の自己解決”で申込数1.9倍!LIXIL、平和堂の成功から生まれた「ナレッジジャーニー」とは?

 商品やサービスに疑問を持ちながらも問い合わせず去ってしまう「サイレントカスタマー」は、全体の9割にも上るといわれている。しかし、彼らの見えざる疑問こそ、顧客満足度やコンバージョン率向上の鍵を握っている。検索型AI-FAQシステムを提供するHelpfeelは、顧客が自ら疑問を解決できる環境を整備する独自のフレームワーク「ナレッジジャーニー」を開発。カスタマーサポートのコスト削減だけでなく、マーケティングにも効果をもたらしているという。同社CEOの洛西一周氏に、ナレッジジャーニーの概要や効果の詳細、実践例を聞いた。

顧客を自己解決に導くAI-FAQシステム「Helpfeel」

──商品やサービスに対する不満や疑問を直接問い合わせることなく離れていくサイレントカスタマーは、顧客の9割を占めるともいわれています。そんな中、検索型AI-FAQシステム「Helpfeel」は、独自技術によって顧客の自己解決を促進するソリューションとして注目されています。まずは、どのようなシステムなのか教えてください。

 Helpfeelは、企業と顧客の情報格差解消と、顧客の自己解決率向上をミッションに掲げています。多くの企業では、顧客の問い合わせに対応するために大規模なカスタマーサポートセンターを運営しています。しかし、本来はWebサイト上で顧客自身が問題を解決できれば、顧客満足度も向上し、企業側のコスト削減にもつながります。

株式会社Helpfeel 代表取締役CEO 洛西一周氏
株式会社Helpfeel 代表取締役CEO 洛西一周氏

 理想的な状態を実現するために、検索型AI-FAQシステムを開発しました。AIと特許取得済の独自技術を活用しながら、顧客が話し言葉などで入力した質問に対して的確に回答し、自己解決に導くことが特長です。

 しかし、単に検索エンジンを提供するだけでは不十分でした。お客様からよく聞かれたのは「ナレッジベースをどのように構築すればいいのか」という質問です。顧客の疑問に的確に答えるためには質の高いFAQコンテンツが必要であり、それを適切に提供できる仕組みが重要です。しかし、多くの企業担当者が「具体的なやり方がわからない」と悩んでいました。

 そこで当社では、検索エンジンだけでなく、ナレッジ作成から運用までのワークフローを含めた総合的なソリューションを提供しています。そして、この仕組みを「自己解決モデル」と呼んでおり、既存ユーザーの問題解決だけでなく、購入前の顧客の疑問解消にも貢献しています。

行動データは"貧弱"、心理データなら正確なインサイトを掴める

 注目いただきたいのは、自己解決モデルを確立した企業は、対応品質の向上やカスタマーサポートのコスト削減が叶うだけでなく、顧客の離脱防止やサイト回遊率、顧客満足度、コンバージョン率(CVR)の向上といったマーケティング指標での成果も生んでいるという点です。

──単に疑問が解消されないことによる離脱を防ぐだけでなく、マーケティングに役立つデータが得られるということでしょうか。

 はい。一般的なデジタルマーケティング施策では、Googleアナリティクスなどで取得できる「行動データ」を分析に活用してきました。しかし、ページの滞在時間や離脱率からは離脱の理由はわからないため、仮説を導くためにマーケターは想像力を働かせる必要がありました。そんな根拠が"貧弱"な行動データに対して、正確なインサイトを掴めるのが「心理データ」です。

 心理データは、検索クエリを起点にしたVOC(Voice Of Customer:顧客の声)です。たとえば、ECサイトで「いつまでに」「日時」と検索されていると、配送条件を重視して商品を探しているという仮説を立てられます。さらに、「まだ来ない」といった直感的な言葉も捉えられるので、ユーザーのニーズをより正確に把握できます。

 私たちはこのような問い合わせに至らない疑問を「カジュアルな疑問」と呼んでいます。気軽に質問できる環境を整えることで、本音を引き出しているのです。

平和堂ではVOC活用でクレジットカード会員が増加

 顧客のカジュアルな疑問を可視化・解消することで、マーケティング指標を劇的に改善した事例を紹介します。

 滋賀県を中心にスーパーマーケットを展開する平和堂では、クレジット機能付きのポイントカード「HOP-VISAカード」のリニューアルにあたり、効率的な会員獲得策が急務でした。これまでの手法では店頭にカウンターを設置し、スタッフによる新規入会の勧誘を行っていました。しかし、申込に至っても、カードの利用額が少なく継続率が低いため、LTVの観点から獲得コストが上昇する課題も抱えていました。

株式会社Helpfeel 代表取締役CEO 洛西一周氏

 そこで、平和堂の全社戦略である若年層をターゲットに定め、オンライン申込に特化する手法に変更しました。クレジットカードの申込は、顧客にとって比較的ハードルの高い決断です。オンライン申込は24時間365日受付できるメリットはありますが、申込時に「年会費」や「ポイント還元率」、「ETCカード会費」など些細な問い合わせが多く、そういった疑問をスムーズに解消しなければ入会してもらえませんでした。

──どのようなことを改善したのですか。

 HOP-VISAカードのLPにHelpfeelを導入し、実際にユーザーが抱えている疑問や課題をデータとして可視化することで、顧客接点の改良を繰り返しました。その一環として取り組んだのが、LPのクリエイティブ改善です。

平和堂のLP改善例。VOCから抽出した訴求点を反映し、ヒートマップ分析で反応を確認した
平和堂のLP改善例。VOCから抽出した訴求点を反映し、ヒートマップ分析で反応を確認した
※クリックすると拡大します

 心理データから得られるインサイトに基づきLPを最適化し、FAQコンテンツを充実させた結果、カード申込数は前年比1.9倍に達し 、申込率(CVR)は導入前と比較して186.2%と大きく改善しました。CPA(顧客獲得コスト)も40%削減できました。

 特に新商品の場合には、細かなVOCを可視化し対策を講じることが重要で、ユーザーがHelpfeelで疑問を解消した上で納得してご入会いただくことにより、利用金額も前年比120%になりました。

自己解決モデルを体系化した「ナレッジジャーニー」とは

──顧客の自己解決を促すことで、マーケティング施策にも効果が見られたということですね。企業が自己解決モデルを構築するには、どうすればいいのでしょうか。

 自己解決モデルをどの企業でも簡単に確立できるよう、ノウハウを体系化したものが「ナレッジジャーニー」です。顧客の自己解決を促進するフレームワークや企業が取り組むべきことをまとめており、顧客満足度の最大化を目指しています。カスタマージャーニーの概念に近いですが、ナレッジによって顧客の疑問を解消することに特化した方法論で、「疑問の解消」を購買や離脱防止に結び付けることを重視しています

ナレッジジャーニーのフレームワーク
ナレッジジャーニーのフレームワーク。顧客視点でどんな疑問を持ち、何を解決できなくて離脱しているかを可視化。対応すべき3つのストレスポイントをチェックポイントとして設置するとともに、自己解決だけでなく、有人解決での対応が望ましいフェーズも提示している
※クリックすると拡大します

 企業のサポート現場に自己解決モデルを構築する際は、6つのステップで進めていきます。まず重要なのは、適切なシステムの導入と、組織体制の確立、そして適切なKPI設定です。

自己解決モデルへと変わる6ステップ

 システムを入れるだけでなく、心理データに基づいて、FAQツールやチャットボットなどの自己解決システムを改善していく必要があるため、担当者を置き、専門組織を作らなければいけません。また、自己解決システムへの導線設計も重要なポイントです。

 自己解決システムの設置場所には、Webサイトのトップページ、特設のLP、問い合わせページなどがあります。自社に合った適切な導線を設定することが必要です。その上で適切なKPIを設定し、PDCAサイクルを回していきます。

「自己解決率」を改善するPDCAサイクルとは

──どういったKPIを設定すればいいのでしょうか?

 「自己解決率」という新たなKPIを提唱しています。自己解決率とは、顧客がトラブルや疑問を自分で解決できた割合を示す割合で、「正当回答閲覧数」÷「顧客が解決したい疑問数」で計算します。これまでも、カスタマーサポートへの問い合わせ内容を基にFAQを改善するケースはあったと思いますが、改善による効果が測定できませんでした。数値化ができないゆえに、力を入れられなかった領域だったのです。

自己解決率改善に必要なPDCAサイクルを表した図
自己解決率改善に必要なPDCAサイクルを表した図

 自己解決率を向上するためには、検索を起点とし、心理データによる「行動分析」を行った上で、コンテンツを充足し導線を改善します。そして疑問・困りごとが解決されたか、反応を確認するPDCAサイクルを回すのです。

──ナレッジジャーニーが効果を発揮しやすいのは、どのような企業ですか。

 たとえば、ECサイトを運営する企業、金融機関、多店舗展開する企業など、顧客と継続的な関係を構築し、顧客満足度が経営にクリティカルな影響を及ぼす企業に適しています。また、サブスクリプション型やリテンションビジネスを展開する企業にも幅広く活用できます。

LIXILではマーケ部門にサービス改革推進部を設置

──近年は、CXの改善に取り組む企業は増えてはいるものの、カスタマーサポート部門とマーケティング部門が縦割りで業務に取り組む企業が多いです。また、カスタマーサポート部門の改善もコスト削減の文脈で捉えられがちで、マーケティング部門と協働するイメージを持ちづらいのではないでしょうか。

 大風呂敷を広げると、ナレッジジャーニーを取り入れることで、カスタマーサポート部門とマーケティング部門の垣根を取り払えると考えています。両部門が、同じデータに基づいて改善サイクルを回せるようになるからです。

 実際に両部門が連携し、自己解決モデルに移行している企業も増えています。たとえば住宅設備機器メーカーのLIXILでは、マーケティング部門にお客さま窓口を管掌するカスタマーサービス統括部があり、サービス改革推進部が設置されています。ここでは、ナレッジジャーニーを取り入れた顧客満足度の改善とコスト削減に取り組んでいます。

 近年同社では、リテンションビジネスにも力を入れており、顧客満足度が上がらないために離脱に至っているのではないか、という課題意識がありました。

分析と計測を中心とした改善サイクルを確立したLIXILの取り組み
LIXILの取り組み
※クリックすると拡大します

 自己解決システムを導入し、分析と計測を中心とした改善サイクルを確立した結果、FAQの満足度を示すエンゲージメント率が41.4%から68.9%に向上、アンケート解決率が27.0%から65.4%に改善するなど、効果が出ています。加えて、VOCの分析によって製品の改善にもつなげています。

──最後に、今後の展望を教えてください。

 私たちは、既にサービスにAIを組み込んでいますが、企業のサポート担当者がより効率的にナレッジを構築・改善できるようにするため「AIエージェント」の開発にも力を入れています。

 具体的には、FAQの構築、問い合わせ内容のクラスター分析、回答の執筆などをAIエージェントが担ってくれるようにしていきたいと考えています。これらは年内にはリリースする計画です。今後も、顧客の疑問を解消するとともに、マーケターやカスタマーサポートの人たちの困りごとをなくしていきたいです。

自己解決モデルを体系化した「ナレッジジャーニー」の全容はこちらから!

Helpfeelがこれまで600サイト以上(2025年3月末時点)の自己解決率向上や顧客体験の改善をサポートしてきた中で見つけた、多くの企業が抱える共通の課題とそれを解決するための独自のノウハウを1冊にまとめました。カスタマーサポートの新しい教科書ともいえる全58ページの最新メソッドブックです。Helpfeel公式サイトより無料ダウンロードできます。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
この記事の著者

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。

地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社Helpfeel

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/05/12 10:00 https://markezine.jp/article/detail/48770