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なぜターゲット理解が甘いまま仕事が進んでしまうのか?
ターゲット理解は、BtoBマーケティングの現場で軽視されがちです。特に異業界から転職したマーケターだと、「業界知識が不足している状態でペルソナを深く理解するのはハードルが高い」というのもわかります。ですが、「知らないからできない」ではなく、「知らないからこそ学び、価値を生み出す」という視点で、BtoBマーケティングの精度を高めていく意識が必要です。
そもそも「誰に、何を届けるのか」を明確にすることがマーケティングの基本なのに、なぜターゲット理解が曖昧なまま、施策が回り続けてしまうのでしょう? 背景には、組織構造や業務の優先順位、BtoB特有の事情が関係しています。
1.短期的な成果へのプレッシャーがある
BtoBマーケティングでは、短期的な成果を求めるプレッシャーが強く、上層部や営業部門から「とにかくリードを増やせ」「PDCAを回せ」と指示されるものです。その結果、ターゲットの理解を深めることのないまま、とりあえずコンテンツや広告を出す流れになりがちです。「まずはやってみよう」というスタンスは悪くないですが、ターゲットの理解が浅いままだと、的外れな施策が積み上がってしまいます。
2.「なんとなく知っているつもり」になっている
ペルソナを細かく作るには手間がかかるため、「こんなものだろう」と大まかに理解して済ませてしまうことも多いです。過去の施策や営業資料をもとに「うちのターゲットは◯◯業界の△△職」とざっくり分類し、それだけでターゲットを把握したつもりになってしまうことがあります。
しかし、BtoBの購買プロセスでは「決裁者」「現場の実務担当者」「経営層」など、関わる人物が多様で、単なる業界・職種の分類だけではターゲットを正しく把握できません。加えて、上司が異業種から転職してきたケースだと、ペルソナが曖昧なままでもツッコミが入らず、実際の顧客像とのズレに気づかないまま、的外れなコンテンツや施策が積み重なってしまいます。
3.営業やCSとの情報共有が不足している
営業やCSと連携し、ナーチャリングを進めるのがBtoBマーケティングでは定石です。営業やCSは日々顧客と対話しているため、「どんな悩みを持っているのか」「なぜ競合ではなく自社を選んだのか?」といったリアルなインサイトを持っています。
ところが、部門間の連携が弱いと、十分な情報共有ができないことがあります。マーケティング部門内で情報共有の仕組みが整っていないと、机上のターゲット像に基づいた施策になりがちです。
4.「BtoBだから」と思考停止してしまう
BtoBマーケティングでは、「論理的」「理性的」であるべきという先入観が根強く、ターゲットの感情や行動心理が軽視されがちです。そのため、「スペックや機能を訴求すれば十分」と考えるケースもあります。
しかし、BtoBでも「購入するのは人間」です。感情は意思決定に影響し、「この会社は信頼できるか?」「失敗したくない」「導入後に現場が混乱しないか?」といった不安が判断を左右します。こうした要素を無視したコンテンツでは、ターゲットの関心を引けず、成約につながりにくくなります。
このように、BtoBではターゲット理解の優先度が低くなりがちですが、これが実務にどのような弊害を生むのでしょうか。次に、ターゲット理解が甘いことで生じるリスクについて考えてみます。