雑誌・ラジオ広告費、デジタルとのシームレス化により、広告費が伸長
榊原:また、コネクテッドTVの増加も見逃せません。スマホではなく、大画面での視聴を楽しむ人も増え、人によっては使い分けている方もいらっしゃり、メディア接触行動自体へ影響を与えています。特に若者は、時間縛りのメディア視聴を嫌う傾向がありますので、こうした点もタイムシフト視聴が可能なコネクテッドTVが支持されている理由でしょう。今後も、テレビメディアデジタル費は伸びていきそうです。
北原:コネクテッドTVの結線率は6割程度というデータもあります。いずれにせよ、動画の需要が増えていることが見て取れますね。
──新聞・雑誌・ラジオはどのように見ていますか。
榊原:新聞広告費は減少したものの、雑誌・ラジオ広告費は増加しました。
雑誌は紙の出版物の休刊や刊行形態の変更により、SNSなどへリソースをシフト、強化しています。また、出版社の強みであるIP活用、コンテンツ制作力やコミュニティー力をデジタル領域にも拡張し、従来の形にとらわれない広告が出てきています。こうしたことから、広告の伸びにつながっているようです。
ラジオは、radikoや放送局が運営するポッドキャストなどが引き続き伸びています。ラジオは、デジタルと合わせてサイマルでの出稿が多いことから、ラジオ広告・ラジオデジタル広告がともに出稿増となった形です。
メディアイノベーション研究部 研究主幹 榊原 理恵氏
研究開発本部、電通総研出向、新聞局データ・ソリューション部長などを経て2024年より現職。共同研究として吉田秀雄記念財団助成研究「広告が企業価値に及ぼす影響に関する実証研究」など。現在の研究領域はメディア・情報行動。
2025年、インターネット広告費は広告構成比5割を超えるのか
──プロモーションメディア広告費はいかがでしょうか。
北原:長期的なトレンドに準ずる形になってきているように思います。モーターショーなどの大規模イベントではなく、クローズかつ中身の濃いイベントが増えている印象です。屋外・交通広告に関しては、人流の回復やネットワーク型のデジタルOOHの発達により堅調に推移していきそうです。
POPの微増に関しては、リテールメディアの一部が含まれています。「日本の広告費」ではリテールメディアとして市場を切り出すことはしてはいませんが、今後の広まり次第では推定・発表する可能性も検討していきたいですね。
榊原:イベント・展示・映像なども増えてきているとはいえ、コロナ禍以前には及ばない状態です。見方を変えれば、回復の余地があるとも言えますので、市場としてまだ拡大していく可能性はあると期待しています。
──2025年に注目していきたいトピックスはありますか。
北原:大阪・関西万博や選挙は大きな局面となってきそうです。加えて、野球・世界陸上などでは消費財系の広告がどう動くのかも注目していきたいです。
榊原:人流回復・インバウンド需要・人手不足による企業コミュニケーションの増加に加え、インターネット広告費が5割を超えてくる可能性が現実味を帯びてきています。これらが見どころになるかと思っています。
