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MarkeZine Day 2025 Spring

“可変性”がカギに。サントリー宮城氏×元マツキヨ乙幡氏が明かす、ブランドを強くするデザインのあり方


提供価値を再定義し、ヒットを出したインソールブランドも

 「可変性」というキーワードに関連し、乙幡氏が紹介したのは、提供価値を再定義した事例だ。

 乙幡氏はインソールブランド「シダス」を展開するシダスジャパンを支援しているが、同社は自らをインソールメーカーと定義していた。しかし「足から動きが変わる」と提供価値を変えたところ、足回りに関連した商品アイデアがどんどん生まれるようになった。現在では室内用サンダルなどの新商品の売れ行きが好調だという。

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シダスジャパンの室内用サンダル着用写真(画像左・右上)、同ブランドのキービジュアル(画像右下)

 「ブランドをカテゴリーに縛ってしまうと、どうしてもブランドの拡張は起こりづらい。逆に一歩引いたところで提供価値を定めると、違った世界観が見えてきて、様々な方向に展開されていきます」(乙幡氏)

 日本の商品ブランドは、たとえば「〇〇と言えば洗剤」「△△と言えばシャンプー」といったように、ブランドとカテゴリーとの結びつきが非常に強かった。それに対し、「カテゴリーに縛られないブランド」の先駆けとなったのが、PB(プライベートブランド)だ。

 「お弁当が美味しいコンビニの洗剤だと、汚れがきれいに落ちそうですよね。そう感じるのは、お客様のほうがブランドをブリッジにしてカテゴリーを超えてしまったからです。そうした許容性のきっかけをつくったのが、まさにPBなんだと言えます。一貫性はもちろん大事ですが、可変性にも眼を向けないと、ブランド自体の拡がりは生まれません」(宮城氏)

 「PBについて、最初はわかりづらいという声もあったようですが、今ではすっかり定着しています。無印良品さんもそうですが、やはりセブン-イレブンさんがカテゴリーを横断したブランドを展開してくれた意義は、非常に大きかったと思っています」(乙幡氏)

デザイナーの仕事は、イニシャルワークからランニングワークへ

 最後に話題となったのは、デザイナーの仕事のあり方や、仕事をうまく進めるコツについて。宮城氏は、時代の変化にともないデザインの意味が変化しており、それにともないデザイナーの仕事のスタイルも変わりつつあると感じているそうだ。

 古典的なデザインは、開発には時間が必要であるという前提条件に基づくものであり、時間とクオリティは比例すると考えられてきた。コミュニケーションも「オリエン→プレゼン」の直線型で、エージェンシーのゴールは納品までと捉えられてきた。

 しかし現代ではテクノロジーの進化によって開発が高速化し、クオリティを産むのは時間ではなく回転数だと考えられるようになった。コミュニケーションも直線型から「WIP(Work In Progress)シェア」の周期型に変化しつつある。エージェンシーのゴールは納品することではなくなり、常に伴走しアップデートしていくことが役割となった。このことを宮城氏は、「イニシャルワークからランニングワークへの変化」と言い表した。

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 これに対し乙幡氏も、自分が手掛けているのもまさにランニングワークであり、先入観を持ったり決めつけたりすることなく、走りながらアップデートしていくことの繰り返しであると明かした。乙幡氏は、「お客様のやりたいところとうまく並走しながら、良い方向に持っていく。それが成功の秘訣かなと思っています」と述べ、セッションを締めくくった。

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この記事の著者

こまき あゆこ(コマキ アユコ)

ライター。AI開発を行う会社のbizdevとして働きながら、ライティング業・大学院で研究活動をしています。
連絡先: komakiayuko@gmail.com

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/06/18 17:43 https://markezine.jp/article/detail/48807

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