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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

変容する金融業界のマーケティング

決済にとどまらない価値を。アメックスのゴールド・プリファード・カードはなぜ、Z世代の心を掴んだのか

F1やフジロック、清水寺まで。アメックスブランドを通して「体験」を届ける

MZ:実際に取り組まれているZ世代向けのコミュニケーション施策をご紹介ください。

杉本:当社はプロバスケットボール(NBA)、ゴルフのUSオープン、テニスのウィンブルドンなど、様々な領域においてグローバルスポンサーシップ契約をしています。

 直近での取り組みとして挙げられるのはフォーミュラワン(F1)です。F1の「パドッククラブ」は、メカニックやドライバーがいるエリアの上に位置する特別な観戦エリアで、アクションを至近距離で見渡せる特等席です。そのエリアに私たちは会員専用のスイートルームを用意しています。また会員向けにその他の席も含めた多くの座席を確保していますが、完売するなど大変人気です。

 実は調査の結果、若い世代の間でF1は「車に乗らなくても楽しめる観戦スポーツ」として人気があることがわかっています。そこで私たちは会員の方に「アメックス オリジナル レース ラジオ」というポータブルラジオを配布し日本語と英語の実況解説を提供したり、通常は立ち入れないレース関係者エリアへのツアーへお連れしたり、様々な形でF1の観戦体験を豊かにする工夫をしています。

 音楽も非常に若年層と親和性の高いコンテンツです。テイラー・スウィフトやビリー・アイリッシュなど、チケット入手が難しいアーティストのコンサートでは先行販売や特別な座席の提供、さらにはトークイベントなど会員限定の特典を用意しました。海外音楽グループの東京タワーでのイベントや、フジロックフェスティバルへの協賛なども行っています。

 この他にも、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、清水寺の紅葉、二条城の桜など人気スポットの貸し切りイベントや、予約が取りづらいレストランでのシェフを招いたイベントなど、様々な体験の機会を会員向けに提供しています。

MZ:Z世代向けのコミュニケーション手段としてはどのような施策がありますか。

杉本:長尺・短尺動画や様々なコンテンツをコンテキストに応じて地上波やコネクテッドTV、OOH、ソーシャルメディアで活用しています。特にゴールド・プリファード・カードのキャンペーンでは、人気の特典を3つに絞り、短い動画でそれぞれのベネフィットをストレートに伝えました。長い説明を好まない若い世代に合わせ、シンプルかつエンターテインニングなアプローチを心がけています。

必要なのは「お膳立て」ではなく「体験の入り口」となること

MZ:Z世代向け施策として展開している商品やサービスの開発、設計や改善についてはいかがでしょうか。

杉本:私たちはZ世代・ミレニアル世代に対してディープダイブすること(深く理解すること)を大事にしています。この世代への理解を深める中で、考え方が非常に成熟していながらも、物事に対してフレキシブルでオープンな姿勢を持っていると感じます。

 私たちが特に注目しているインサイトとして「セレンディピティ」があります。偶然の中に素晴らしいものや成長の糧を見つける能力、様々なものを価値として楽しめる能力のことですが、他の世代に比べてZ世代ではより重視される傾向があります。

 たとえば旅行に際して、以前は細かく計画を立ててから無駄なく観光地を回るスタイルが一般的でした。一方で今の若い世代は「行き先を決めたらあとはあえてプランを作り込まず、そこで起きるハプニングや出会いを楽しみ自分の成長の糧にする」と考える人が増えているのです。

 このインサイトを基に、アメックスではブランドの果たすべき役割を「お膳立てする」ではなく「“ドア”を提供する」存在へと変えました。私たちが必要なすべてを揃えるのではなく、お客様が自分で発見し体験できる機会の入り口を用意する。もちろん、コンシェルジュサービスによるきめ細かなサポートも提供していますが、Z世代向けには「背中を押す(バッキング)」アプローチを重視しています。

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価値あるものには投資する。Z世代心理をつかんだサービス設計

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/05/15 09:30 https://markezine.jp/article/detail/48836

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