新卒入社時点から描いていた、独立前提のキャリアパス
MarkeZine:はじめに、このタイミングでリクルートを退職された理由を教えてください。
金井:実は3年前の2022年に、立ち上げからグロースまで関わっていた採用管理サービス「Airワーク」の仕事がひと区切りついたので、あとはメンバーに託してリクルートを卒業しようと考えていたんです。
しかし、重要ポジションで退任者が多く発生したため、組織を立て直す必要がありました。また、Indeedとの共同プロジェクト「Indeed Plus」の立ち上げもあったため、それが終わるまではしっかりと役割を果たしたいと思っていました。直近2~3年、特に尽力していたのがそのリクルートとIndeedの合併プロジェクトです。言語や前提が異なるなかでの事業再編は苦労も多かったですが、めったにできない経験を最後にさせてもらいました。再編したこのタイミングで、卒業をしました。

新卒でNTTドコモに入社。端末のマーケティングを経験した後、iモードでビジネス展開をする会社へのコンサルティングに従事。その後、リクルートへ転職。マーケティング室のVP(ヴァイスプレジデント)として、横断の人材育成・知見流通とHR領域のマーケティング責任者を担当。HR領域におけるToC及びToB双方のプロダクト横断での事業・マーケティング戦略、ブランディングからdirectADやSEO等のネットマーケティング、CRMに至るまで統合的なマーケティング戦略を推進。2025年6月末で退職し、リクルート流のマーケティングを起点に、事業戦略から、実行組織の設計・育成まで、一貫して伴走支援する共創型パートナー、NexGen Inc.を創業。
MarkeZine:退職後、転職する選択肢もあったかと思います。独立の道を選択されたのはなぜでしょうか。
金井:元々、いつかは独立すると決めていたからです。新卒ではNTTドコモに入社したのですが、入社を決めて父親に伝えた時、「で、いつ辞めるんだ?」なんて開口一番で言われていましたので、家族の影響も強いかもしれません。
MarkeZine:ご家族のマインドも尖っていそうですね。どのようなバックボーンがあるのでしょうか。
金井:両祖父もそうだったのですが、父も兄も自営業を営んでいます。いわゆる「サラリーマン」がいない家庭で育ってきました。そのため、私も「いつかは自分自身で何かを創り出したい」という思いを自然に抱えるようになっていましたね。
「30歳までに自分の専門性を見つけよう」と、マーケティングに照準を定める
MarkeZine:新卒時代から独立を考えていたなかで、将来のビジョンから逆算し、取り組まれていたことはありますか。
金井:「30歳までに自分の専門性を決めよう」と意識していました。そうでなければプロにはなれないと、先輩方から聞いていたためです。ただ、社会人になって最初のうちは、自分の専門性をどこに置けばいいのか見出せていなかったんですよね。父や兄のようにわかりやすく専門性の高い資格を持っているわけではありませんでしたし、「いつかは事業を立ち上げてみたい」と漠然とイメージする程度でした。

MarkeZine:専門性をどうやって定めるか、悩んでいる若手マーケターも多いと思います。金井さんは若手時代、日々の仕事のなかで自分の軸を見出すために、何を意識していましたか。
金井:一つひとつの仕事を「どうやったら自分のスキルになるだろう」と考えながらやっていました。たとえば、NTTドコモ入社当初は営業配属だったのですが、有用なデータをボタン一つで取り出せるシステムをデータウェアハウスを用いて構築し、チーム全体が使える営業支援ツールを作ったこともあります。上司に言われたわけでもなく、自分の成長につながることを考えた結果、自発的に取り組んだものでした。
MarkeZine:どのような仕事でも主体的に取り組むなかで、得意を見つけ、スキルを磨いていったのですね。営業なども経験されたうえで、自分の専門性をマーケティングに定めたのはなぜでしょうか。
金井:一番楽しかったからです。新卒2年目からマーケティングに触れたのですが、これだけ熱中できるおもしろい分野なら、きっと自分の強みにできるはずだと感じました。そのため、「マーケティングを専門にしよう」と決意したうえで、マッチングというビジネスそのものがマーケティングであり、幅広いマーケティングスキルを磨くことができるリクルートが最適だと考え、転職を決めました。