起業の背景にある、次世代への想い
MarkeZine:ここからは、金井さんが立ち上げた会社、NexGenについても教えてください。
金井:NexGenは、リクルート流のマーケティングを起点に、事業戦略から、実行組織の設計・育成まで、一貫して伴走支援する共創型パートナーです。コンサルティングのような外部アドバイザーの立場ではなく、顧客企業の内部に入り、時にはマネジメントレイヤーとしてジョインし、ハンズオンで事業成長に伴走して共に事業を伸ばします。
「経営共創型パートナー」としてチームで参画し、現在は歯科領域のベンチャー企業「Dental Prediction」、DXコンサルティング企業の「プロジェクトカンパニー」、デジタルマーケティング支援企業の「LANY」、TVスクリーンの注視データSaaSを提供する「REVISIO」等に参画させていただいています。
MarkeZine:伴走型の経営支援の会社を起業された背景には、どんな想いがあったのでしょうか。
金井:「次世代を担う子どもたちの機会を減らしたくない」という想いがありました。私には中学3年生の息子がいますが、「日本で将来暮らしていけるのかな」と心配して話している時があるのです。気持ちもわかりますが、悲しいですよね。確かに、このまま日本の人口が減少の一途をたどる場合、一人ひとりのビジネス戦闘力を1.5倍ぐらいに高めなければ、GDPを保つことができなくなってしまうかもしれません。
私はこれまで本当に多くの機会を提供していただいたおかげで、自分なりに成長する機会をもらえました。でも、それは私より上の世代の方々が、その機会と余裕を作ってくれたからだと思います。同じように、私達の世代が、息子を含めた次世代の方達に将来の様々な機会を作るためには、人や組織の生産性を高め、企業のビジネスを生産性高く成長させていく必要があります。
私にできるのは、マーケティングを起点とした戦略・戦術の実行、そして、それを実現するための組織構築やマネジメントノウハウ等、これまで身に着けてきたスキルを統合し、企業の事業成長を支援すること。顧客と一緒に次の日本を牽引する事業を育てることで、次世代の方々に少しでも貢献したいと考えました。
なお、私自身が日本の生産性を高めていくために特に重要だと考えているのは、「教育」「キャリア」「ウェルネス」の3つです。NexGenの由来は、「Next Generation(次世代)」。子どもの教育の質を高め、それぞれの人が適材適所のキャリアを見つけ、シニアになっても元気でいられる未来に、少しでも貢献できればと考えています。

優れた戦略だけでは、事業はグロースできない
MarkeZine:ちなみに、なぜコンサルティングではなく、組織に入って一緒に事業を伸ばすメンバーとして関わる方法を選ばれたのでしょう。
金井:マーケティング戦略のコンサルティングだけでは、事業はグロースできないからです。これまでリクルートの傍ら、副業で10社以上事業支援を経験してきましたが、どんなにいい戦略があったとしても、人や組織の成長が事業の成長に伴わないと会社が売上と共に成長していかなくなってしまうことに直面してきました。こうした経験から、NexGenではマーケティングを起点とした経営支援として、人材マネジメントや育成、採用、組織構築まで含めて支援していきます。
また我々は成果を出すために必要な支援が何かを、課題から考えて設計しています。たとえば、デジタルマーケティングならSEOやデジタルAdの効果改善も行いますし、プロダクト開発なら要件定義から開発までも支援します。組織構築なら人事制度や評価設計、マネジメント改善コーチングも行います。勿論、関わり方は顧客と相談して柔軟に決めておりますが、大事なのは、私達が関わることで事業成長ができることです。事業成長を実現するために必要な支援を行うことで、具体的な成果を出すことにこだわっています。

成長に失敗はつきもの。マーケターの成長に必要な3つの要素
MarkeZine:NexGenの今後の展望について教えてください。
金井:事業の展望としては、2段階のフェーズで考えています。まず、フェーズ1は経営伴走型パートナーとしての事業支援です。これから3~4年のあいだはハンズオンで事業に深く関わりながら、必要に応じて投資もして、「人・モノ・カネ」のすべての面から事業に伴走していく予定です。
そして5年後の2030年ごろに目指したいフェーズ2は、自社のプロダクト開発と展開です。日本の生産性向上のためには、多くのリーダーが育っていくことが重要で、そのリーダー育成につながるようなプロダクトやサービスを開発して多くの企業様のお役に立ちたいと考えています。
MarkeZine:今後どんなプロダクトが生まれるのか楽しみです。最後にキャリアに悩む若手マーケターに向けて、メッセージをお願いします。
金井:私自身、本当に悩みながら年齢を重ねてきましたし、今でも悩みながら歩いているのですが、マーケターが成長するために必要な要素は3つあると考えます。1つ目は現状分析に使えるデータ、2つ目はフィードバックをもらえるコーチの数、3つ目は失敗しても学べるだけの十分なお金(マーケティング予算)です。これら3つが揃う環境を選定基準にして、自分の働く場所を選んでみるといいのではないでしょうか。その観点では、リクルートで育てていただいた私は本当に環境に恵まれました。
成功率100%のマーケティング施策はありません。私もたくさんの失敗を重ねてきましたし、今でも日々失敗を学びと称してトライを続けています。野球の大谷翔平選手でも毎回打てるわけではないのですから、「失敗なんて当たり前。失敗しても振り返れば学び」と、学びを活かして打席に立つことで、その先の未来が拓かれると思っています。
