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広告産業のパーパスを考える

『戦略ごっこ』著者・芹澤さんと考える、広告会社がこれから変容・進化していくために必要なこと【後編】

広告産業における「クリエイティブ」の影響力の強さ

芹澤:この辺りで、今後の広告産業、特にクリエイターの存在意義にも関わってくる話をしておきたいのですが。広告のROIに対して最も影響力が強いドライバー、つまりROIを改善させる力が一番強い要因って、何か覚えていますか? 「ブランドの大きさ」なんですよ。

藤平:はい、ゼミの初回で習いました。

芹澤:そうですね。つまり、浸透率が大事なわけですが、これはそんなすぐには変わらない。でも、実は2番目に影響力が強いのが「クリエイティブの力」なんです。

 いくつか再現研究もあって、クリエイティブ次第でROIは最大12倍変わると報告されています。より具体的には、ブランド想起が8倍高まる、4倍以上の利益を生み出すといった報告もあったりします。まだプライベートセクターの研究が多いですが、クリエイティブの力が大きいのは紛れもない事実です。

 クリエイティビティを正しく発揮すれば、クリエイターや広告会社にはまだ大きな伸びしろが残されているのに、なぜかEBMは制約的なものだと思われてしまう……非常に残念だなと思います。

新たな事実を認め、変化を受け入れることで進化できる

藤平:今日の対談で見つかった広告会社の癖が悪さをして、エビデンスを敵対視する、あるいは勝手に関係ないもの・苦手なものだと思う、ネガティブなモードがオンになっているのだと思います。とはいえ、自分に新しいOSを入れるのは、僕もまったく好きじゃないので、そうなる気持ちや理屈も、すごくわかります。

 だからこそ、この記事で『戦略ごっこ』は読まず嫌いだった人の勘違いが解消されると良いなと思いました。

芹澤:そうですね。自分の感性やクリエイティビティを大事にしたいという気持ちは、クリエイターだけでなく、一般的にみんなが持っているものです。僕も『戦略ごっこ』を書いている時、実は何度も打ちのめされました。「自分が見ている世界のなんと狭いことか」って。というか、世界中の論文・実証研究を読んでいると、そう認めざるを得なかったんです。

 当たり前ですよね。自分よりはるかに頭が良くて、たくさんものを知っている人たちの思考をたどることになるので。これまでの常識や世界観が覆るコペルニクス的な転回が常に起こります。でも、自分の知らない事実を知り、これまでの間違いを認め、変化を受け入れる――それはサイエンスの発展そのものだと思います。

 もちろん、気持ち的には凹みますよ(笑)? この章もあの章も書き直さないと……みたいなことになるので。ですが、その過程で『戦略ごっこ』のコアアイデアの1つである「規則性と例外」や「場合分け」の理論が形成されていったのも事実です。何より、そうした過程で蓄積された知見が、最終的には自分の血肉になっていくのだと思います。

藤平:オンリーワンを目指すあまり、クライアントや生活者の方を向いているようで、実は(身内で)“クリエイターごっこ”をしている……という事態にならないように。EBMを学ぼうという実務的な部分を超えて、何か、クリエイターとしてのOSごとアップデートしていく必要があるなと思いました。

 そしてそれは、クリエイティビティを阻害するものではないし、クリエイティブ産業に所属する会社の成長にも繋がっていくはず。そういう事例を生み出せるように、今年度は頑張ります。今日もありがとうございました! またどこかで延長戦を。

広告産業のパーパス:藤平の仮説キーワード(2025年5月時点)

「オーダーメイド」ではなく「カスタムメイド」

●業界・商材・市場ごとに「勝ちに近付くエビデンス」が蓄積されている

●そのエビデンスをもとに「カスタムメイドなクリエイティブジャンプ」をする(これまでは良し悪しある「オーダーメイド」)

●それを実現する多様なチーム(=CEP)のポートフォリオがその会社の競争力になる(ボトムアップでのイメージ構築)

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2025/05/23 08:30 https://markezine.jp/article/detail/49031

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