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生成AIを使った定性調査でも“インサイト”にたどり着けるのか?市場調査会社・インテージの挑戦【後編】

 2000年代に入り、マーケティングリサーチ業界は急激にテクノロジー化が進みました。そして近年は生成AIの目まぐるしい進化が起こっています。さて、これまでインタビューやレポート作成などの分析工程は大きな変化がなかった定性調査の分析でも生成AIを活用した進歩はあるのでしょうか。前編では、定性調査の分析における各工程での活用可能性について紹介しましたが、後編では定性調査のレポート作成の際にどのように活用できるのかについて紹介します。

定性調査のレポート作成は“創造的プロセス”

 定性調査は、数値では見えない「人の気持ち」や「価値観」を読み解くための手法であり、分析とレポート作成には多くの時間と労力を要します。特に、対象者の発言をどう読み解き、どのようなファインディングスに落とし込むか。そして、それをどう表現すればレポートの読み手に正しく、魅力的に伝えられるか。こうしたプロセスは、人間のリサーチャーによる“創造的なプロセス”であると、我々は考えてきました。

 しかし、生成AIの進化により、こうした“人間にしかできない”とされていた領域にも変化の兆しが見え始めています。今回、私たちはZ世代・ミレニアル世代100人のインタビューデータを用いて、生成AIが定性調査のレポート作成工程にどこまで貢献できるかを検証しました。

 使用したデータは、以前公開した《「ペルソナ」を作ると失敗する? Z世代向けマーケティングの勘違い》の元となったインタビューのテキストデータです。「Z世代(15歳~25歳)」60名、「ミレニアル世代(26歳~39歳)」40名にインタビューをし、「SNSをどのようなものと捉えているか」「理想とする将来像の有無・その内容」「自分たちの世代の多様性に関する考え方」等について世代間比較をし、Z世代向けのマーケティングについて示唆を得る調査です。なお、今回のインタビューについては、インタビュー参加者から事前に「生成AIにデータを読み込ませる」ことについて同意を取得した上で実施しています。

人間のリサーチャーが担ってきた“創造的プロセス”

 まず、人間のリサーチャーが従来どのようにレポートを作成していたかを紹介します。

 たとえば、インタビューで「目指しているor理想としている人物はいるか。それはどんな人か」という質問に対して、Z世代から以下のような発言があったとします。

 「あえていうなら母親ですね。仕事もして、帰ってきて私のごはんも作ってくれて…。大変なのにいつも笑顔なのがすごい。自分も将来そうなりたい」

 「地元でバンド活動をしているグループのボーカルです!その人の母校が自分が通っている高校と一緒で…。ファンとの距離が近くて、自分もその人と話せたんですよ!!」

 この発言を、そのまま「Z世代の理想の人物像は“母親”や“先輩”」とだけまとめても意味はありません。重要なのは、この発言の背景にある「到達可能性」「等身大感」「手本としての機能」などの要素を読み取り、レポートの読み手に誤解なく伝えることです。

まとめの表現例
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 このように、発言の意味を読み取り、複数の発言から「共通の構造や傾向」を導き出し、それを適切な言葉で表現することが定性分析の本質です。たとえば今回の調査では、「Z世代は“到達可能な人物”を理想とし、ミレニアル世代は“憧れの存在”を挙げる傾向がある」というファインディングスを導出しました。

 この作業は、発言をExcelで一覧化したり、ホワイトボードやノートで分類・構造化しながら行う、時間も労力もかかる“創造的プロセス”です。分析に合う適切な言葉を書いては消し、書いては消しを繰り返し、文章にまとめていきます。

リサーチャーの分析の仕方例
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 そのように文章化したファインディングスは、レポートに記載する際には下図の「サマリーセンテンス」として表現することが多いです。今回は、このサマリーセンテンスが、生成AIにも出力できるのか、検証しました。

定性調査のレポートの一例
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Z世代・ミレニアル世代100人調査データで「生成AIの実力」を検証

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この記事の著者

村田 万由子(ムラタ マユコ)

株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 リサーチ事業推進部 F2Fアナリシスグループ リサーチャー/モデレーター

2021年にインテージに入社。定性アドホック調査をメインとして調査の企画からレポーティングまで担当。食品・飲料、ビューティー、日用品、車など多岐にわたる業界のクライアント支援実績あり。先進技術...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

大野 貴広(オオノ タカヒロ)

株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 リサーチ事業推進部 F2Fアナリシスグループ リサーチャー/モデレーター

SP会社、BtoB調査会社を経て、2018年にインテージ(旧インテージクオリス)入社。一次情報に触れてから分析を始めることを大切にしており、インテージの中でも定性調査を担当する部署で消費者の生...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

白井 光(シライ ヒカル)

株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 リサーチ事業推進部 F2Fアナリシスグループ リサーチャー

BtoB調査会社、市場調査会社を経て、2024年にインテージ(旧インテージクオリス)入社。人の言葉選びに興味を持ち、対象者一人ひとりの話を聞くことができる定性調査に従事。現在はクルマ業界の案件を中心に対応。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/05/20 09:30 https://markezine.jp/article/detail/49046

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