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「ペルソナ」を作ると失敗する? Z世代向けマーケティングの勘違い

 これからの消費の中心を担うとされ、注目されているZ世代。多くの企業がZ世代独自の特性を理解し、施策に活かしたいと「Z世代のペルソナ」を作っている。だが果たして、Z世代にペルソナを活用したマーケティングは届くのだろうか?

Z世代を理解する第一歩は「ペルソナ」作成なのか?

 いつの時代のマーケティングでも「世代特性の理解」は重要なテーマとなっている。その世代特性を理解するうえで、作成されるのが〇〇世代の「ペルソナ」である。世代という大きなグループを理解するため、その世代の共通点を集め、一人の人物像を作る試みと言い換えることもできるだろう。

 これからの消費の中心を担うとされ注目されている「Z世代」においてもその傾向は変わらず、様々な企業や研究者が「Z世代のペルソナ」を作成しているのをよく目にする。しかし、これは本当にZ世代を理解する取り組みになっているのだろうか。仮にペルソナを作成することはできたとしても、多様性を重視する傾向があるといわれるZ世代に、ペルソナを活用したマーケティング施策は本当に届くのであろうか。

 世代研究を進める中でふと沸いたこの疑問を解消するため、2024年1月~3月にかけて、「Z世代」60名、比較対象として「ミレニアル世代」40名にインタビューを実施した。先に結論を示すと、Z世代は「ペルソナ」を活用したマーケティングに忌避的な意識はないが、自分事にもならないため、効果が薄いことが見えてきた。本稿では、このような結論に至った背景と、そこから見えてきたZ世代向けマーケティングの新たな方向性について解説していきたい。

Z世代にとってSNSは「リアルの友達」とつながるためのツール

 Z世代とい言うと、InstagramやTikTokなどで素顔のままダンスをしているイメージを持つマーケターも多いことだろう。しかし実際にはそれとはまったく違い、Z世代におけるSNSはリアルな人間関係の中での連絡手段として使用されている傾向が強い。学生時代からSNSを駆使しているZ世代にとって最初に交換する(フォローし合う)のはSNSのアカウントであり、親密度が高まるとLINEで友達登録し合うというのが基本的な流れとのことだった。これは、LINEはプライベートな情報としての度合が強いと感じており、その前段階としてプライベート度合の低いSNSのアカウントを交換するとの意識からだった。

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 この意識から読み取れるのは、Z世代にとってSNSはインターネット上の顔も知らない相手とコミュニケーションをとるツールではないということである。SNSはあくまでもリアルのつながりの中で使用するツールであり、インターネット上の不特定多数とのつながりや反応は求めていないのである。この内容をさらに裏付ける行動としては、複数のアカウントを使い分けるZ世代が、多用するアカウントは鍵付きにするという点も挙げられるだろう。

 SNSをリアルのつながりで使用するZ世代にとって、インターネット上の不特定多数に向けての投稿は「顔が見えない相手に、素をさらけ出す恥ずかしいこと」に近い。ただし、インターネットに接続したツールである以上それが完全に避けられないことも理解しており、少しでもそれを避けるためにも長期間残る投稿はしない。その代表例がInstagramのストーリーズであろう(投稿後24時間限定で公開される投稿方法)。そんなZ世代にとって“自分の投稿がバズる”ことは恐怖でしかないのである。

 ミレニアル以上の世代が、SNSをインターネット上の不特定多数とのつながりを作るツールとして捉え、Instagramでは多くの“いいね”を求め、いわゆる“インスタ映え”する写真を投稿し、Xではリアルのつながりがないからこそ気軽に素が出せる場所として愚痴も含め様々な投稿をするという使い方とは、まったく違うことがわかる。

 とはいえ、実際にインターネット上の不特定多数に向けて投稿をしているZ世代も確かに存在している。その様な存在は、Z世代の中でどのような立ち位置なのだろうか。それはZ世代の発言をそのまま引用すると、「承認欲求の高い、SNSにのめりこんでしまっている人」となる。表現からもわかるように、ネガティブ寄りの印象を持たれており、先ほどの発言の続きとして「周りにアピールしないと幸せを感じられない、危険なメンタルの人」にもなってしまうようだ。普段リアルなつながりでしかSNSを使用しない人が突然不特定多数への発信をすると、それは何か問題が起こってメンタルが崩れたと受け取られ、むしろ相手が心配になるとのエピソードも聞かれた。

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Z世代にとって心地よい人間関係は“狭く深い”

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この記事の著者

大野 貴広(オオノ タカヒロ)

株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 リサーチ事業推進部 F2Fアナリシスグループ リサーチャー/モデレーター

SP会社、BtoB調査会社を経て、2018年にインテージ(旧インテージクオリス)入社。一次情報に触れてから分析を始めることを大切にしており、インテージの中でも定性調査を担当する部署で消費者の生...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/12/13 09:30 https://markezine.jp/article/detail/47708

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