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「ペルソナ」を作ると失敗する? Z世代向けマーケティングの勘違い

Z世代にとって心地よい人間関係は“狭く深い”

 記事の冒頭、「ペルソナ」のことを“世代という大きなグループを理解するため、その世代の共通点を集め、一人の人物像を作る試み”と定義したが、実際のマーケティング施策に落とし込む際には、消費を喚起される、もう少しで手の届きそうな理想の人物像として描かれるケースをよく目にする。そこで今回は実験的に、Z世代へ10年後の自分自身の理想の暮らしについて語ってもらうインタビューを試みた。様々な共通点が出てきたが、最も顕著だったのは「現在の友人関係を、10年後も大切にしていきたい」という意識であり、その背景としてZ世代が「自分の人間関係は狭く深い」と自認している点が強く影響を及ぼしていた。

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 前述した通り、Z世代の人間関係はSNSのアカウント交換から始まり、親密度が高まるとLINEで友達登録し合うという流れを辿っている。その影響もあり、信頼のできる、なんでも話のできる友人とは深くつながっており、その状況が心地よいとも感じている。その友人とは幼い頃や地元の友人である傾向が強く、結果として「現在の友人関係を、10年後も大切にしていきたい」という意識となったのだと考えられる。

 さらにこの心地よい状態のことを、Z世代は「自分の人間関係は狭く深い」と表現する。この表現からは、今後進学や就職で増えていくであろう新たなつながりよりも、幼い頃や地元の友人を大切にしたいという意識を改めて確認でき、さらに一歩踏み込むとこれ以上親密度の高い友人を作れない、作りたくないと考えている可能性すらある。

 ではこの心地よさはどこからくるのであろうか。ここからはインタビューの結果に加え、これまでのZ世代研究の結果も交えての考察になるが、やはりそれについてもSNSが大きく関係している。学生時代からSNSを駆使しているZ世代にとって、一度構築された人間関係はその後もSNS上でほぼ永続的に続くものである。これは良いことの様に思えるが、一度何か失敗してしまうと、その失敗は永遠に記録され、それから逃れられないということでもある。

 ミレニアル世代以上であれば“大学デビュー”や“社会人デビュー”など言葉からもわかる様に、進学や就職などによりある程度は過去の自分をリセットすることが可能であった。リセット不可能な状態が幼少期から途切れることなく続いたZ世代は、とにかく他人との衝突を避けようと行動し、目立つことを非常に嫌う

 その結果として、本来の自分で居られるのは、利害関係のない幼い頃や地元の友人に限定されがちであり、それは逃げ場のないZ世代にとって絶対に継続したい心地よい関係性なのである。この心地よい関係が自分の中心であると認識することによって、実態はどうであれ「自分の人間関係は狭く深い」と自認し、その心地よい関係を継続したい意識から「現在の友人関係を、10年後も大切にしていきたい」との発言になったものと考えられる。

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ひとくくりにされと、自分はその中に含まれていないと感じる「Z世代」

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この記事の著者

大野 貴広(オオノ タカヒロ)

株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 リサーチ事業推進部 F2Fアナリシスグループ リサーチャー/モデレーター

SP会社、BtoB調査会社を経て、2018年にインテージ(旧インテージクオリス)入社。一次情報に触れてから分析を始めることを大切にしており、インテージの中でも定性調査を担当する部署で消費者の生...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2024/12/13 09:30 https://markezine.jp/article/detail/47708

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