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生成AIを使った定性調査でも“インサイト”にたどり着けるのか?市場調査会社・インテージの挑戦【後編】

Z世代・ミレニアル世代100人調査データで「生成AIの実力」を検証

 具体的な検証方法を説明します。生成AIに100人分の発言録データを読み込ませ、指示したプロンプトに基づき、お題に対するサマリーセンテンスを出力させました。そして、その分析結果をこの自主企画調査のインタビューを実際に見ていた定性リサーチャーが見て、人間が書いたレポートのサマリーセンテンスと比べてどうかということを評価しました。

 生成AIにプロンプト文で「お題だけ」を与えた場合は、調査課題に即したアウトプットが得られませんでした。そのため、マーケティングフレームや、市場調査に関する論文を参考にどのような分析視点を与えるか、プロンプトを試行錯誤し、下図4、5の青色の線の箇所のように「分析時の視点」を与えています

 検証したお題は2つで、(1)「それぞれの世代が目指している、理想とする人物」についての調査結果のまとめ、(2)Z世代に有効なマーケティング施策の方向性の考察についてです。

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 お題(1)について、分析視点を与えなかった場合、下記のようなサマリーセンテンスが出力されました。

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 Z世代は「独自性と積極的な学びを重視する」、ミレニアル世代は「すでに確立された成功や個人の規律を重視する」といった特徴が出力されましたが、今回の調査課題とは少しずれていました。本調査の目的は、「ミレニアル世代は皆が憧れるような著名人を理想とする一方で、Z世代にはそのような統一された理想像がなく、価値観が多様である」という仮説を検証することにありました。「Z世代の理想像がどれだけ多様か」を明確にするには、「誰を理想としたか」だけでなく、「その人物との関係性(身近に感じるのか、憧れなのか、共感なのか)」といった視点での分析が必要です。

生成AIのアウトプット検証(分析視点を与えた場合)

 分析視点を与えた場合は、生成AIからどのような結果が出るでしょうか。お題(1)「それぞれの世代が目標とする人物について」について、人間リサーチャーと生成AIが出したサマリーは下記の通りです。

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 結果として、人間リサーチャーのまとめに記載ある内容は網羅されており、さらに生成AI独自のプラスアルファの分析が出力されました。この出力結果で特に素晴らしい点は、「現実的かつ手の届く範囲の人物」、「『創造性』や『積極性』を評価している」、「自分自身の可能性を広げる手本」等の言葉を、生成AIが発言を分析し、出力しているということです。これらの表現は対象者が直接発言しているわけではないので、生成AIがその発言内容の意味を読み取り、表現をしたものになります。我々定性リサーチャーは、対象者の発言を読み解いて、それをまとめる適切なワードを探すのに時間をかけているため、それが生成AIで出せてしまうことに驚きを隠せませんでした。

 お題(2)「Z世代の多様性に関する考え方から導き出せる、マーケティング施策の方向性の考察」について、人間と生成AIが出力したまとめは下記の通りです。

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 結果として、発言録データを読み込ませ、分析の視点を加えた指示を与えることで、施策の考察が出力されました。上記の例では、「Z世代は同世代の中に多様性が高いことを認識している、自分たちを一括りに考えることが難しい」という調査結果を踏まえて、「Z世代の多様性を考慮し、細分化されたターゲティングが重要である」、「一律の商品・サービスではなく、違いを捉えたうえでより細かいセグメントに合わせた提案が求められる」という施策の考察が出力されています。やや具体性に欠ける内容ではあるもの、アイデアを短時間で生成するのは目を見張る成果でした。

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生成AIでもインサイトにたどり着くことは可能

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この記事の著者

村田 万由子(ムラタ マユコ)

株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 リサーチ事業推進部 F2Fアナリシスグループ リサーチャー/モデレーター

2021年にインテージに入社。定性アドホック調査をメインとして調査の企画からレポーティングまで担当。食品・飲料、ビューティー、日用品、車など多岐にわたる業界のクライアント支援実績あり。先進技術...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

大野 貴広(オオノ タカヒロ)

株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 リサーチ事業推進部 F2Fアナリシスグループ リサーチャー/モデレーター

SP会社、BtoB調査会社を経て、2018年にインテージ(旧インテージクオリス)入社。一次情報に触れてから分析を始めることを大切にしており、インテージの中でも定性調査を担当する部署で消費者の生...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

白井 光(シライ ヒカル)

株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 リサーチ事業推進部 F2Fアナリシスグループ リサーチャー

BtoB調査会社、市場調査会社を経て、2024年にインテージ(旧インテージクオリス)入社。人の言葉選びに興味を持ち、対象者一人ひとりの話を聞くことができる定性調査に従事。現在はクルマ業界の案件を中心に対応。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/05/20 09:30 https://markezine.jp/article/detail/49046

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