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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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これからのパーソナライゼーション

「紳士的な距離感」とデータ活用でゴルフダイジェスト・オンラインが目指す、究極のパーソナライゼーション

データ活用で大切な「紳士的な距離感」

MZ:データを活用した多様な施策を展開される上で、重視されているポイントはありますか。

松尾:多くのゴルファーのライフスタイルを支えている立場として、「お客様にとっての価値ある体験」の提供を目指すべきだと考えています。お客様から見て「データを収集されることに価値がない」と判断されたら、企業側はいくら価値があると考えていても意味がありません。だからこそ、「これがお客様のどういった体験につながるか」まで設計した上でデータ収集を行うのが基本です。

 もちろん企業である以上、売り上げの向上を目指すのも当然です。デジタルマーケティングは日々高度化の一途を辿っているため、売り上げ向上を実現する環境も整えられるといえます。

 その一方で、企業が顧客と常につながりサービスや商品を提供し続ける「デジタルマーケティング的に最適化された状態」は、お客様にとっては企業との“距離感が近すぎる”という問題もはらんでいます。だからこそ「ほどよい距離感」を保つことが何よりも重要だと思います。とはいえ、ほどよい距離感は人によって違うもの。あらかじめそれを定義し、最適な関係性はどのような形なのかはよく考慮すべきポイントです。

MZ:顧客の目線を考えた時、プライバシーの観点もデータ活用とは表裏一体です。どのような考えのもと、データ活用施策に取り組んでいますか。

松尾:プライバシーの配慮に関しては、透明性が重要だと考えています。当社ではデータ取得に関するポリシーを明文化し、広告配信に関するオプトアウト機能もマイページから設定可能です。つまり、お客様側から当社への接点を自由にコントロールいただける仕組みを提供しているのです。私たちはゴルフという“紳士のスポーツ”に関わる会社ですから、お客様への向き合い方にも常に紳士的な距離感でありたいと考えています。

究極のパーソナライゼーションを目指して

MZ:最後に、今後の展望をお聞かせください。

松尾:今後の方向性として、お客様にクーポンのような経済的価値を訴求するのではなく、「なんだかいいよね」と感じていただける情緒的価値を実現することが重要だと思っています。こうした価値を追求するには、お客様を深く理解した上で質の高いパーソナルな体験を提供しなくてはなりません。社内でよく出るキーワードの一つに「気の利いたコミュニケーション」があるのですが、それを実現した上でよりよいゴルフ体験につなげていくことが非常に重要だと考えます。

 また「情緒的価値」を提供するための顧客理解は、定量的なデータ分析だけでは限界があると思っています。そのため、キャンペーンごとに「狙うべきお客様の感情」を設定し、そこに相関性があるかどうかを分析するといった試みも進めているところです。実現には多くのデータ収集が必要ですし、インタビューや外部データの活用も必要になりますから、取り組みの一つとしてデータクリーンルームの活用も始めていますね。

 今後チャレンジしていきたい領域は、「データの質的な向上と、顧客理解の深化」「AIの活用」「チャネルを横断した体験の提供」の3つです。

 「データの質的な向上と、顧客理解の深化」は、理想のパーソナライゼーション実現に必要な「情報の精度」を追い求めていきたいです。顧客の行動データを把握した上で、ゴルフへの熱量の変動やその時々における文脈を理解すること。これはECショップなどで買い物かごに商品を入れたものの決済まで進む前に離脱する「カート放棄」の解消にもつながるテーマだと思います。

 「AI活用」では、お客様に対してどのような価値を生み出せるかを突き詰めてまいります。当社は、2024年から電通デジタル社と共同で「GDO-AI Lab」を立ち上げ、研究開発を推進している最中です。たとえば、バーチャル試着室などの価値体験の創出やAIによる接客を通じた会話録の分析など、AIを活用するからこそ生まれる価値にも注目したいと思っています。

ECサイトでのバーチャル試着のイメージ(出典:https://company.golfdigest.co.jp/corp/pr/24080701.html)
ECサイトでのバーチャル試着のイメージ
(出典:https://company.golfdigest.co.jp/corp/pr/24080701.html

松尾:そして「チャネルを横断した体験の提供」については、チャネルごとの個別の最適化だけでなく、チャネルを横断した体験の全体最適が重要と見なしています。チャネル間の接点がつながらなければお客様の文脈も分断され、適切な体験に結び付きづらくなります。そのためにも、お客様一人ひとりのジャーニーにより深く着目していきたいです。

 結局のところ、企業と顧客のコミュニケーションにおいて一番大事なのは、互いに”心地良い”と感じる距離感のある関係性です。今後とも、最適な距離感を実現する「究極のパーソナライゼーション」を目指していきたいです。

ゴルフダイジェスト・オンライン登壇!LTV戦略のためのデータ活用が学べるセッションが開催

 2025年9月10-11日に東京・丸の内で開催予定の「MarkeZine Day 2025 Autumn」では、『ファンケル×ゴルフダイジェスト・オンラインに学ぶ「ブランド想起」を広げるLTV最大化戦略』を実施予定です。

 パネリストにはGDOにおいてデータを活用したエンゲージメント向上に取り組む加藤氏と、ファンケルの通販営業本部でCRM領域をリードする石川氏を迎え、はなまる CMOの髙口氏がモデレーターを務めます。

 顧客とのエンゲージメントを高め、LTVを向上させるためにどのような工夫が必要か、どのような発想でデータを活用すべきかなどが学べるセッションです。参加は事前登録制で席に限りがありますので、登録はぜひお早めに。

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/08/19 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49255

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