広報・マーケティングに求められる役割の変革
PR効果測定の指針として世界的に採択されている「バルセロナ原則」は、2010年以来5年ごとに進化を続けています。最新のバルセロナ原則4.0では、PRの成果測定における7つの新基準が発表されました。

アップデートの背景には、以下のような急速に変化するコミュニケーション環境と、広報・マーケティングに求められる役割の変革があると同原則で触れられています。
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オーディエンスの多様化と情報接触の複雑化
ソーシャルメディアの普及などで情報源が細分化。企業からの一方的な情報発信だけでは顧客に届きにくくなった -
コミュニケーションに求められる役割の変化
単なる情報発信や露出獲得だけでなく、より明確な事業貢献やステークホルダーとの関係構築へのインパクトが求められるようになった -
AI技術の急速な発展とデータ活用の深化
生成AIの登場はコンテンツ生成やデータ分析の可能性を飛躍的に拡大している -
データプライバシーとガバナンスへの高まる意識
個人情報保護やデータ利用に関する規制強化にともない、倫理的なデータ活用が必須となっている
改訂のポイントは? PRの戦略的進化が鍵に
今回の改訂のポイントは、次の3点にまとめられます。
- 単なる効果測定から戦略的な関係構築を重視するアプローチへ
- ステークホルダーを重視、単純な情報発信から双方向コミュニケーションへ
- コミュニケーションの効果測定と評価は「推奨」から「具体的な義務」へ
各原則で改訂されたポイントの深堀りと実務への適用を考えていきましょう。7つの原則の中でも、特にマーケターが注目すべき原則4と原則5に関しては、別途抜き出して詳説します。
原則1:目標設定の明確化と効果重視への転換
明確で測定可能な目標設定は、効果的なコミュニケーション計画、測定、評価に不可欠な前提条件である(※ビルコムによる和訳、以下同)
改訂前は単に「計測可能」な目標設定が求められていましたが、改訂後は「明確で」あることを強調し、成果重視の視点が加わりました。目標は一度設定したら終わりではなく、市場やオーディエンスの反応に応じて柔軟に適応すべきです。マーケティングでも、KGI/KPIを常にモニタリングし、市場の変化に迅速に対応する柔軟な戦略調整が不可欠です。
原則2:ステークホルダー理解の重要度が加速
すべてのステークホルダー・オーディエンスを定義し理解することは、計画、関係構築、永続的なインパクト創出のための不可欠なステップである
改訂前は、他の原則に散在していたステークホルダーの概念が、改訂後は重要原則として独立しました。コミュニケーション活動は、伝えるだけでなく、「誰から」「何を聞くか」という双方向に進化しています。また、ステークホルダーを企業価値の「共創者」として捉えることが重要です。これは、顧客中心主義や共創マーケティングの思想と合致しており、広報と連携し顧客の声を多角的に分析するコミュニケーションが求められるのです。