チャネル横断の評価とビジネスインパクトの可視化
原則3:目的志向のチャネル選定と包括的な測定
包括的なコミュニケーション測定と評価は、ステークホルダー・オーディエンスを理解し影響を与えるために使用されるすべての関連チャネルに適用されるべきである
今やPR活動は単なるメディア掲載を目指すだけではなく、SNS、ブログ、オウンドメディア、イベント、XR(クロスリアリティ)といった多様なチャネルにアプローチをする必要があります。しかしチャネルの技術的分類ではなく、「ステークホルダーへの理解と影響」という明確な目的に基づいたチャネルの選定・包括的な測定が求められています。
原則6:アウトプット・アウトカム・インパクトの報告義務
測定と評価は、組織およびステークホルダー・オーディエンスに関連するアウトプット、アウトカム、およびインパクトを報告すべきである
コミュニケーション活動の成果を、単なる情報発信で完結せず、Webサイトへの流入や顧客の態度変容(アウトカム)、最終的には売上向上やブランド価値向上といったビジネスインパクトを可視化して、報告する義務が明確化されました。PRとマーケティングの連携を一層深めることが重要だと示唆しています。
原則7:倫理・ガバナンス概念の具体化
データ、方法論、およびテクノロジーにおける倫理、ガバナンス、および透明性は、信頼を築き、学習を促進する
データ活用が加速する中での信頼性維持・向上への対応が強化されました。データドリブンな意思決定を行うマーケターにとっても同様であり、収集・分析するデータの出所やアルゴリズムの公平性など、透明性の高いガバナンス体制を構築し、説明責任を果たすことが重要です。
マーケターが注目すべき2つの改訂点
マーケターにとって見逃せないのが、効果測定の手法を見直す原則4と、従来の指標に警鐘を鳴らす原則5です。
原則4:定性・定量分析の統合
定性・定量分析の組み合わせが「推奨」から「必要」要件へと格上げされました。具体的には、以下のような指標が提示されています。コミュニケーションの効果的な測定と評価は、定性的および定量的分析を必要とする
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定量分析(Quantitative analysis)
公開された記事の数、シェアオブボイス(SOV)、リーチ、頻度、活動の規模など、主観的な判断をともなわない指標で、カウントし測定するもの。 -
定性分析(Qualitative analysis)
コミュニケーションの内容と効果を徹底的に読み込み、評価し、理解することから得られる解釈、文脈、インサイトを含むもの。インタビュー、フォーカスグループ、自由回答形式のアンケート質問などを用いる。指標は、オーディエンスの感情(Sentiment)や態度、根底にある動機、メッセージへの共鳴度、反応など。
原則5:広告換算値(AVEs)の否定と代替策の提示
広告換算値(AVEs)のような無効な測定方法は使用すべきではない。代わりに、コミュニケーションの貢献度をそのアウトカムとインパクトによって測定し評価すべきである
広報でよく使われる効果測定指標である「広告換算値」の扱われ方が変わりました。改訂前も否定されていましたが、バルセロナ原則4.0では「無効な測定方法」と断言し、さらに「代替としてアウトカムとインパクトで測定すべき」という指針が示されました。これは、PR業界が長年抱えてきた「PRの価値をどう測るか」という問いに対し、具体的な行動変革を求めるメッセージと読み取れます。