1億7,200万回の閲覧を生んだ「安全確保」のキャンペーン
このタグをスマホとBluetoothでつなぐと、スマホとタグが10メートル以上離れると自動でスマホにロックがかかる仕組みになっています。つまり、盗まれたとしてもすぐにスマホが使えなくなり個人情報が盗まれるのを防ぐのです。しかも、フェスにぴったりのおしゃれなデザインで、ファッションアイテムとしても楽しめるような気の利き具合。この取り組みはSNSやニュースなどで大きな注目を集め、キャンペーン全体で1億7,200万回以上も見られるほどの反響がありました。

この事例からもわかるように、今の人々が社会に求めているものに「安全」があります。Havas社の調査によると、政府に一番期待しているのは「安全の確保」であり、そのためなら、ある程度の「自由の制限」もやむを得ないと考える人も増えているようです。

これまでのイベントでは「写真を撮ってシェアする」など、通信を活かした楽しみ方が主流でしたが、今は「安心して楽しめる環境づくり」に注目が集まっています。TIM Telecomのように、「安全」をテーマにしたキャンペーンが注目されるのは、まさに今の時代の流れを反映していると言えるでしょう。
(2) 権威的な上司が好み?DoorDash「Fun Coach」

アメリカで最も人気のあるスポーツ、NFL(アメリカンフットボール)。試合の日には、ファンの約40%が自宅で食事や飲み物を楽しみながら観戦しています。そんな中、フードデリバリーサービスのDoorDash(ドアダッシュ)は、NFLファンとのつながりを深めるために、あるユニークなキャンペーンを実施しました。
そのタイミングは、NFLの名コーチ、ビル・ベリチックが引退を発表した直後。世間の注目が集まる中、DoorDashは彼を「Fan Coach(ファン・コーチ)」として起用しました。彼の役割は、試合当日を自宅でどう楽しむかをファンに“指導”することです。
ただし、その指導はまるで現役時代のように厳しくてストレート。たとえば「友達が家に来るけど、何を注文すればいい?」という質問には、細かすぎるほどの注文アドバイス。「観戦中に食べるなら、ハンバーガーの具は何がいい?」という質問には、ハンバーガーを完全に無視して「チキンウィングだ」と一刀両断。さらに、動画だけでなく、ファンの質問にリアルタイムで答えるライブセッションでもビル・ベリチック節を大いに発揮。参加型の体験としても話題になりました。
このキャンペーンはSNSやメディアで大きな注目を集め、2億回以上のインプレッションを記録。DoorDashは、ただ食事を届けるだけでなく、「試合を楽しむ体験」そのものを提供するブランドとして、NFLファンとの関係を深めることに成功しました。
このキャンペーンが成功した背景には、若い世代の価値観の変化もあるかもしれません。調査によると、Z世代(Gen Z)は、ベビーブーマー世代(Boomers)と比べて、「自由に任せてくれる上司」よりも、「はっきりと指示を出してくれるリーダー」の方が、チームの成果を出せると考えることがわかりました。つまり、以前は「自由にやらせてくれる上司」が理想とされていたのに対し、今は「断言して導いてくれる存在」に安心や信頼を感じる人が増えているのです。

DoorDashがビル・ベリチックのような“厳しくも頼れる”キャラクターは、まさにこの時代の空気を捉え、大きな反響につながったとも考えられます。