AI化が気づかせた「エンタメ・コンテンツ」のIP市場価値
2025年に入り、日本の「エンタメ」関連9銘柄の時価総額が、日本経済の屋台骨となってきた自動車主要9銘柄のそれを上回ったと株式市場で話題のようだ。偶然か必然か、大手広告会社のADKが韓国ゲーム企業クラフトン社に買収されると発表され、電通も「スポーツ&エンターテインメント(S&E)」のグローバル事業展開を表明した。
ADKの買収発表(2025年6月)は、広告サービス事業全体よりも、国境や時を超えて世界で通用する「ドラえもん」や「遊戯王」といったアニメの版権(IP)の価値が買われた形だ。かつてADKが上場会社として「広告代理店大手3社」とされていた時期の時価総額は4,000億円台にのぼっていた。その後、2017年に米投資ファンドのベインキャピタルが再上場を目指しADKを買収した際は約1,500億円。そこからさらに半値に近い約750億円での売却処理だった。
この数字の変遷は、メディア枠販売の効率を売りとする伝統的な広告代理店ビジネスそのものの価値が、AIで代行可能な業務として急速に低下していることを示唆する。代わって、人々を魅了し感情を動かす「コンテンツの源泉」に価値が移っている。
存在が際立つのは、時を同じくして、2025年6月に電通グループが新たに立ち上げた「電通スポーツ&エンターテインメント(電通S&E)」だ。アニメを含むエンタメとスポーツをグローバル市場における「コンテンツ」と位置づけ、地道に事業化を図る戦略である。
電通S&Eは、同社のグローバルネットワークを活かし、ハリウッド映画や世界的スポーツイベント、ゲームを活用した広告・イベント体験まで、コンテンツの可能性を最大化しグローバルに展開する。さらに、「dentsu anime solutions」ブランドを立ち上げ、北米、中国、東南アジアを中心にアニメコンテンツ軸との統合マーケティングソリューションを提供していく。
これらの動きは、グローバルコンテンツの本質的価値を見極めた投資であり、AI投資やデータ利活用の潮流に対し、大きなエネルギー(推進力)となる。2024年12月に先行で発表されたSONYによるKadokawa株式の500億円投資も同様の動きだ。