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MarkeZine Day 2025 Autumn

世界動向の先を読む「もう1つの視点」

AIに勝る共感コンテンツ産業への投資 広告会社ADK事業買収と「電通S&E」事業の転換

AIには生み出せない、人間社会間での「想像力と共感」の価値

 身近な生成AI利用のパターンは、膨大な過去データを学習し、アルゴリズムに基づいて最適解を高速で導き出す「受け身の応対」を得意とする。人間なら膨大な時間を要するデータ分析や要約、パターン認識といった処理も、瞬時かつ安価に実現する能力は多くの産業で効率化を促進している。

 そのAIとは“ま逆”の「ゼロからの前向きな想像(Out-of-Boxな発想)」への投資注力が本章のテーマだ。既存前提を疑い、思いもよらない発想にたどり着く能力。それは、人間の経験や体感、その瞬間の「リアル」から生まれる。さらに、そうした経験の共有(文化資産の蓄積)や「共感」は人間同士で特有のものであり、その文脈も個人、時間、地域によってすべて異なる。

エンターテインメント・コンテンツ(以下コンテンツ)は、人間がゼロ(0)から創造し、豊かな想像力によってその価値を無限大(∞)に広げていく力を持つ。資源を持たない島国である日本において、人間の想像力と創造力こそが最大の資源であり、デジタルによって誰もが容易に国境や言語の壁を越えて世界中に届けることができるコンテンツの力はますます重要となっている。

経団連『Entertainment Contents ∞ 2024』より引用

日本企業が提供できる、IP産業として捉える「共感コンテンツ」

 日本発のオリジナルな“アニメ・エンタメコンテンツ”は、日本の得意分野や輸出産業に留まらず、多様かつ多国籍なオーディエンスに理解され、感情や共感を生み出すグローバルなコミュニティを創出している。さらに、それは映画、音楽、ゲームといった他産業にも縦横に波及していく(図1)。

図1:日本経済団体連合会(2024年10月)
図1:日本経済団体連合会(2024年10月)

 この資産はマーケター(広告主)にとって、グローバル企業であれ地方の小規模事業者であれ、言語翻訳を介さずに広く共感を得られる点で極めて大きな価値を持つ。従来の広告のようなPUSH型の押し付けではなく、「過去もご近所も含めた、仲間入り」へ招く、生成AIやSNS上では即座に生み出せない人間味あふれる魔法のような力だ。

 さらにアニメのような既存資産だけでなく、スポーツのライブ(生放送)から生まれるシーンやゲームコンテンツの中にも大きな「共感」が存在する。しかもスポーツは「同時(生・リアル)」で発生し続ける価値を持つ。

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電通Gが仕掛ける、アニメ×スポーツのグローバルプラットフォーム

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この記事の著者

榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)

株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2025/08/22 08:30 https://markezine.jp/article/detail/49698

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