3つの「掛け算」が競争優位性の源泉に。楽天の広告戦略
MarkeZine:はじめに、楽天の広告事業における全体的な戦略について教えてください。
田中:楽天の広告戦略の柱は「メディア」「データ」「AI」。これら3つを掛け合わせて、ソリューションの価値を最大化することを目指しています。楽天の広告=「楽天市場」の出店店舗が使うものというイメージが強いかもしれませんが、その域を広く超え、多くの企業様にご活用いただいています。
MarkeZine:では、3つの柱「メディア」「データ」「AI」について、それぞれ詳しくお聞かせください。
第1の柱「メディア」:多様なメディアで“CVに近いユーザー”へリーチ
田中:はじめに、楽天グループの「メディア」についてお話しします。楽天グループは「楽天市場」をはじめ、「楽天トラベル」「楽天カード」など70以上のサービスを展開しています。この「楽天エコシステム」にあるメディア群に共通するのは、購買や申込といった「CV(コンバージョン)に近いユーザーが多い」ということです。これは広告面としても、他のWebメディアやSNSにはない楽天独自の特長と言えるでしょう。
楽天のマーケティングプラットフォーム「Rakuten Marketing Platform」では、これらのメディア群を最大限に活用した、多様な広告商品を提供しています。アプローチ手法はディスプレイ広告、動画広告、Webメール、郵送型DMまで様々あります。
 
MarkeZine:「楽天市場」のイメージが強かったので、オフライン広告もあるとは意外です。
田中:実は、オフラインの郵送型DMはデジタル広告の効果を上回る事例もあるほど、強力なアプローチ手法です。楽天グループならではの高精度なターゲティングができるため、一般的なDMと比較しても非常に高いレスポンス率を誇ります。
 
第2の柱「データ」:楽天だからこその“量”と”質”
MarkeZine:続いて、2つ目の強み「データ」について教えてください。
田中:楽天グループは1億以上の「楽天ID」に基づく、膨大な1stパーティデータを蓄積しています。「楽天のデータ」と言えばオンラインの購買データが真っ先に思い浮かぶと思いますが、実店舗でも利用できる「楽天ペイ」や、ユーザーがレシートを送る「Rakuten Pasha」などのサービスを通じて、膨大なオフラインデータも蓄積しています。オフライン購買データの広告活用は、消費財メーカー様を中心に非常にニーズが高いですね。
また、データの質の高さもポイントです。楽天グループが展開するサービスの性質上、「楽天ID」の鮮度と正確性は必然的に高くなります。たとえば、「楽天カード」や「楽天モバイル」など一部サービスの契約時には公的証明データが必要な場合もありますし、「楽天市場」で商品を受け取るためには住所を最新のものにしておく必要がありますよね。それらが、オンラインでもオフラインでも広告のターゲティング精度に直結してくるのです。
第3の柱「AI」:優れたAIは、優れたデータから
田中:そして、楽天グループはAI活用の最大化を目指して、全社的にあらゆる分野にAIを取り入れています。もちろん広告領域においても例外ではなく、お客様の広告パフォーマンスを最大化するためにAIを積極的に活用しているところです。
さらにAIを発展させていくためには、技術はもちろんのこと「元となるデータソースの質」が非常に重要になります。取り扱っているデータは個人情報保護法のもと統計処理を行うことが前提となりますが、多種多様な「メディア」で購買接点を持ち、許諾を得た範囲で鮮度と精度の高いユーザーの「データ」を蓄積し、優秀なエンジニアによる優れた技術で「AI」を発展させていく――楽天グループはこのサイクルで、広告事業を常にアップデートさせています。
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・楽天の広告商品に関するお問い合わせはこちらの問い合わせフォームから獲得広告に最適なAIソリューション、「未来購買予測」とは?
MarkeZine:ここからは、楽天の広告事業が提供されているAIソリューション「未来購買予測」について詳しく伺います。まず、「未来購買予測」を開発した背景を教えてください。
田中:デジタル広告業界全体でAI活用が進む中、楽天としては「蓄積している膨大なCVデータ」を活かした独自のAIソリューションを生み出すべきだと考えていました。オンライン・オフライン問わず、ここまで多面的に生活者の購買情報を捉えている事業者は限られています。この独自性を活かし、より高度な広告ソリューションとして開発されたのが「未来購買予測」です。
MarkeZine:「未来購買予測」とは、具体的にどのようなソリューションなのでしょうか?
田中:「未来購買予測」は、将来CVする可能性の高いユーザーをAIが予測し、対象者へ広告配信できるソリューションです。AIが判定した「スコア」が高いユーザーほど、実際にCVする確率も高まる傾向があるため、広告配信における獲得効率を飛躍的に向上させることができます。

MarkeZine:従来の広告セグメントの概念が大きく変わりそうですね。
田中:ええ。デモグラフィック情報によるターゲティング広告や、リターゲティング広告などとは異なる新しい概念ですね。企業によっては従来の配信対象とは大きく相違があるかもしれません。これまで見つけられなかったような、新たな購買層との接点作りに寄与できる可能性もあるでしょう。
「未来購買予測」を実現する4つのステップ
MarkeZine:「未来購買予測」は、どのようなスキームで構築されていますか? 活用する時のステップを教えてください。
田中:「未来購買予測」は大きく分けて4つのステップで構成されています。「1.データ収集」「2.予測モデルの作成」「3.CVスコアリング・配信リスト作成」「4.広告配信」のそれぞれについて、仕組みや強みをご紹介します。

ステップ1:データ収集
田中:最初のステップ「データ収集」では、3つの方法で消費行動分析データ(※4)を蓄積していきます。1つ目は、広告主のWebサイトに楽天側のタグを埋め込み、訪問者の行動データを取得する方法。2つ目は、広告主が保有するメールアドレスや広告識別子などの顧客データをハッシュ化(セキュリティ保護のための処理)し、楽天グループのデータと突合する方法。そして3つ目が、「楽天市場」をはじめとする楽天グループサービスにおける購買データを活用する方法です。
お客様のデータ保有状況やCV発生状況、スピード感などに応じて、最適な方法を提案させていただきます。いずれの方法でも、1億以上の楽天会員とそのユーザーIDに基づく膨大なデータベースによって、十分なボリュームを確保できるのが強みです。
ステップ2:予測モデルの作成
田中:続いて予測モデルを作成するのですが、その前の「分析」工程が非常に重要です。分析に用いるのは、「Rakuten CustomerDNA」と呼ばれる楽天独自のデータベース。10年以上前からデータが蓄積されており、ユーザーの行動やライフステージにおける購買傾向が統計で明らかになっています。この「Rakuten CustomerDNA」と収集したデータを突き合わせ、CVユーザーと非CVユーザーの行動の違いを分析することで、予測モデルを作成していきます。
MarkeZine:「Rakuten CustomerDNA」を使うと、具体的にどのような予測ができるのでしょうか?
田中:たとえば不動産のCVユーザーは、成約の約3年前からキッズ・ベビー用品を購入する傾向が見られ、成約前後にはインテリア・寝具の購買が増加するケースが確認されています。また教育分野のCVユーザーは、マタニティ用品の購買の7~8年後、つまり子どもが小学校に通い始める頃に、通信教育に申し込むという顕著な傾向がありました。
一方、健康食品の場合はリードタイムが短く、ボディケアやダイエット用品のCVタイミングとほぼ同時に購買に至っています。こうした具体的な行動パターンを、10年以上前からの蓄積データを基にAIが分析することで、精緻な「未来購買予測」が可能になるのです。

ステップ3:CVスコアリング・配信リスト作成
田中:次に、AIが各ユーザーの「CVに至る確率」をスコアリングしていきます。その際に最も重要となるのは、対象者がどのくらいいるのか。正確な予測を立てられたとしても、広告配信に足るユーザーボリュームが確保できなければ意味がありません。楽天の場合、1億以上の楽天IDを母数としているため、スコアの高いユーザーを絞り込んでも十分な対象者が確保可能で、この点は他社にない大きな強みと言えるでしょう。
ステップ4:広告配信
田中:スコアリングに基づいて抽出されたユーザーには、ディスプレイ広告やWebメール、さらに郵送型DMなど、楽天グループの持つ多様な広告手法でアプローチが可能です。お客様の目的や商品特性に応じて柔軟にチャネルを組み合わせることで、より高い広告効果を実現していきます。
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・楽天の広告商品に関するお問い合わせはこちらの問い合わせフォームからCPA68%削減! 獲得広告で顕著な効果を発揮する「未来購買予測」の活用事例
MarkeZine:「未来購買予測」による実際の効果事例を教えてください。
田中:小売、通信、化粧品、飲料など幅広い分野でCPA改善効果を発揮しています。「未来購買予測」によって68%ものCPA削減に成功した事例もあります。

また、ある美容系企業ではAIが出したスコアごとに実際のCVRを計測しました。すると、スコア70点のリストのほうが30点のリストより、CVRが3倍も高い結果に。AIによるスコアリングの精度が証明される実績となりました。

MarkeZine:となると、「未来購買予測」導入時にはスコアが高いリストのみに配信したほうがよいのでしょうか?
田中:そこは配信のボリュームを取るか、効率性(質)を取るかの見極めが重要になります。お客様の戦略次第で判断は変わってくるでしょう。配信ボリュームと効率性のバランスは重要な論点ですので、お客様の目標CPAや予算に応じて考える必要があります。
MarkeZine:なるほど。「未来購買予測」の導入が特におすすめの企業や商材はありますか?
田中:ダイレクトレスポンス広告で、獲得にこだわられている企業様にぜひご活用いただきたいです。その中でも「未来購買予測」の強みを活かしやすいのは、単価が高く、検討期間が長い商材。不動産や教育など、じっくり比較しながら決める商材は特に相性がいいです。
「メディア」「データ」「AI」すべての相乗効果で広告事業全体の成長を目指す
MarkeZine:最後に「未来購買予測」や楽天の広告事業について、今後の展望をお聞かせください。
田中:「未来購買予測」は従来のデモグラフィック情報に基づくセグメントとは大きく異なる概念です。購買データ×AIによる精緻な予測で、ダイレクトレスポンス広告におけるROI最大化に貢献できるよう、今後もソリューションを進化させていきます。なお、楽天グループに求められているのはやはり「購買データを起点にした開発」だと考えていますので、その軸をブラさずに改良を重ねていきたいですね。

また、広告事業全体としては「メディア」「データ」「AI」の3つすべてを継続的に進化させる計画であり、これからも変わらない目標です。直近では「楽天モバイル」の契約者が増加していますので、この「メディア」と「データ」の拡張が、AI技術のさらなる進化へとつながっていくことを期待しています。どれかではなく、すべて。足し算ではなく、掛け算。楽天は成長の好循環で、提供価値を最大化させていきます。
・「未来購買予測」の資料請求はこちらの資料ダウンロードページから
・楽天の広告商品に関するお問い合わせはこちらの問い合わせフォームから※1 楽天会員数:ID登録完了後1回以上ログインをしたことのあるID(退会者除く)
※2 2024年度(2024年1月~12月期)。国内EC流通総額(一部の非課税ビジネスを除き、消費税込み)=楽天市場、楽天トラベル(宿泊流通)、楽天ブックス、楽天ブックスネットワーク、楽天Kobo(国内)、楽天GORA、楽天ファッション、ドリームビジネス、楽天ビューティ、Rakuten24 などの日用品直販、楽天Car、楽天ラクマ、楽天リーベイツ(Rebates)、楽天マート、楽天チケット、クロスボーダートレーディング等の流通額の合計。Q2/23より、国内EC流通総額の定義などを一部見直し。これに伴い遡及修正を実施。Q3/23~楽天ペイ(オンライン決済)事業をインターネットサービスセグメントからフィンテックセグメントへ移管。
※3 クロスユース率:過去12か月間における2サービス以上利用者数/過去12か月間における全サービス利用者数(楽天ポイントが獲得可能なサービスの利用に限る)
※4 楽天で取り扱っているデータは個人情報保護法のもと、統計処理を行っております。

 
                    
                     
                    
                     
                    
                     
                    
                     
                    
                     
                    
                     
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                    
                                     
                                    
                                     
                                    
                                     
                                    
                                     
                                    
                                     
                                    
                                     
                                
                                 
                                
                                 
              
             
         
                    