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MarkeZine Day 2025 Retail

注目マーケティングトピックス2025

フリマ・越境ECが招く“ブランド価値崩壊”。もはや「品質」で選ばれない時代のブランド生存戦略

 「いいモノ=有名ブランド」だった時代は、もう昔話なのかもしれない。ブランドは品質を約束する印から、自らの暮らしに合うかを測る目印へと変わっている。若年層はもはやレビューやランキングで“みんなの正解”を追いかけるのではなく、推しの界隈や専門家の語りに耳を傾ける。フリマサービスは“欲しいものを確実に探す”場として、越境ECは“偶然の出会いを楽しむ”場として、それぞれの特徴を理解しながら、何をどのチャネルで買うかを賢く選び分けている。定価は揺らぎ、ブランドの象徴的価値は後退する――そんな中で、ブランドはどのように価値を発揮できるのだろうか。

ブランドは「品質保証」から「自分に合うか」の判断基準へ

 約10年前と比べ、現在のブランドの意味は大きく変化している。かつてブランドは「ステータスを誇示するもの」であり「品質を保証する安心の印」だった。しかし現在では「自分にちょうど良いものを選ぶための参考基準」としての役割が中心になりつつある。

 NRIが2013年と2025年に行った調査結果の比較(図1)を見ると、「身につけることでステータスをあらわすもの」「このブランドなら品質に間違いがない」といった回答は減少。一方で「ライフスタイルやテイスト」「利用シーン」「経済状況」に応じて選ぶ際の参考としての声が増加している。ブランドは「自分が納得するための基準」へと移行しているのだ。

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【クリックすると拡大します】図1.2013年と2025年のブランド観比較(衣類・ファッション小物)
出所:NRI Insight Signal調査(Web調査、2013/3、2025/3)

 特にファッションやインテリアといった嗜好品カテゴリでは、「有名ブランド」ではなく「自分にとっての満足感」を優先する傾向が強まっている。

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【クリックすると拡大します】図2.カテゴリ別の有名ブランド重視度
出所:NRI Insight Signal調査(Web調査、2025/3)

 それぞれを重視している理由を見ると、両極の考え方が鮮明だ。同じカテゴリ内でも、「安心感」を求める層と「自分の満足感」を求める層で、判断基準の二極化が鮮明になっている。

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【クリックすると拡大します】図3.有名ブランド重視している人の意見/自分の満足度を重視している人の意見
出所:NRI Insight Signal調査(Web調査、2025/3)

若年層は「品質」より「自分らしさ」。信頼の軸はレビューから専門家・コミュニティへ

 年代別の差異は大きい。30代以上では「ブランド=品質保証」という価値観が根強く残るが、若年層では「自己表現」「愛着」「周囲へのアピール手段」としてブランドを捉える傾向が強い

 特に若年層では、ブランドそのものではなく、どのように比較・判断するかの基準が大きく変わってきている。かつて若年層は「売れ筋情報」や「ユーザーレビュー」を参考にしていたが、今ではそれだけでは不十分であり、一般的なレビューよりも「推し界隈で評価されているか」や「信頼できる専門家の発信」を選択基準にする傾向があることが、NRI「生活者1万人アンケート調査」からも明らかになっている。

 具体的には、美容であればYouTuberの美容家の推奨商品を選び、アウトドアならガレージブランドを紹介する動画を参考にギアを探す。ゲームでは専門家の解説をもとにPCパーツを構成するなど、ブランドそのものよりも「信頼できる語り手」が商品選択を後押ししている。こうした傾向こそが、若年層の消費スタイルを特徴づけているといえよう。

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【クリックすると拡大します】図4.「ブランド」と捉え方
出所:NRI Insight Signal調査(Web調査、2025/3)
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【クリックすると拡大します】図5.「ネットで売れ筋情報や流行チェック」の推移
出所:NRI 「生活者1万人アンケート調査

 総じて、ブランドは「品質を保証する存在」から「自分に合うかどうかを測る基準」へと役割を変えてきた。かつては「間違いがないから選ぶ」ものだったが、今は「自分の価値観や用途にフィットするから選ぶ」ものへとシフトしている。ブランドの意味は静かに、しかし確実に書き換えられているのである。

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「定価で買うのは、もったいない」フリマ・越境ECが加速させる3つの“ブランド価値崩壊”

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この記事の著者

梅畑 友理菜(ウメハタ ユリナ)

野村総合研究所 マーケティングサイエンスコンサルティング部 コンサルタント

2020年入社。化粧品業界や、ラグジュアリーブランド、金融機関のマーケティング・ブランディング戦略、その他生活者データを駆使した民間企業のコンサルティングに従事。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/10/15 09:00 https://markezine.jp/article/detail/49933

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