一度は緩んだ財布の紐、再び固く。意識データに見る生活者の本音
最後に、定点アンケート調査でトラッキングしている生活者の消費・節約意識データを見ていきましょう(図表11)。
「現在の節約意識」は5月から8月にかけて減少していましたが、直近では微増しています。「現在の消費意欲」は同期間に緩やかに上昇していましたが直近では微減、「今後の消費意欲」も微減となりました。
先月の振り返りでは、物価上昇により買い物金額が増加し、強まっていた節約意識が緩和されつつある様子が見られました。しかしお盆や夏季休暇を経て、再び節約意識が戻ってきているようです。
具体的な消費意欲を示す「お金をかけたいモノ・コト」では「食品」の伸びが目立ちます(図表12)。ただしこれは食品に積極的にお金を使いたいという意欲というより、高い物価の影響で「使わざるを得ない」という側面が強そうです。
一方で秋の連休を控えていたにもかかわらず、「旅行・ドライブ」「アウトドアレジャー」「ライブ・映画鑑賞」などのレジャー関連項目は減少または停滞しており、期待感はあまり見られません。目先の生活を優先せざるを得ない状況が、意識面からも浮かび上がりました。
まとめ:節約志向は年末まで続くか?今後の消費動向の注目ポイント
直近の消費動向を追うと、値上げの影響で消費金額は増加している一方、買い物回数は減少しており、物価上昇が行動に反映されている様子が見えます。前年と比べてよく買われているカテゴリも、金額前年比では値上げによる上昇が目立ち、生活者の需要が把握しにくくなっています。
意識面では、いったん落ち着きかけていた節約志向が再び上昇に転じ、年末に向けて市場にどのような影響を与えるのか注視が必要です。
インテージでは毎月同様のデータをトラッキングし、生活者のお金の使い方を解説しています。直近の動きが気になる方は、インテージオウンドメディア「知るギャラリー」をご覧ください。
データについて
【SRI一橋大学消費者物価指数】
一橋大学経済研究所経済社会リスク研究機構、全国スーパーマーケット協会と株式会社インテージとの共同プロジェクト「流通・消費・経済指標開発プロジェクト」の一環として作成している経済指標です。インテージのSRI+のデータを用いて消費財の物価の変動とその構造変化を可視化します。
物価の構造変化を「新旧商品入れ替え効果:新商品による影響」「価格変化効果:既存品の値上げ・値下げによる影響」「代替効果:既存品の中で消費者が購入商品をスイッチしたことによる影響」に分解することで、要因を捉えることができます。
【SCI(全国消費者パネル調査)】
全国15歳~79歳の男女70,000人の消費者から継続的に収集している日々の買い物データです。食品、飲料、日用雑貨品、化粧品、医薬品、タバコなど、バーコードが付与された商品について、「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができます。
※サービスリニューアルに伴い、2025年5月掲載分より新データに切り替えています。
※SCIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません
【SRI+(全国小売店パネル調査)】
スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
【月次調査】
調査地域:全国
対象者条件:15-79歳の男女
標本抽出方法:弊社「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=3,000(1回あたり)
調査実施時期:2022年7月~ 各月第1週
※消費意欲、節約意識は1年前の同時期と比べた度合いを-5~+5の11段階で聴取
