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MarkeZine Day 2026 Spring

ソーシャルから見るトレンド・ムーブメント

「コスメ」「推し活」のインサイト調査から見えた世代別ムーブメントの兆しとは?

 昨今“Z世代トレンド”と表現されるように、SNSで話題になるコンテンツや、トピックの起点をZ世代にする風潮があると思います。しかし捉えるべきはZ世代のみで良いのでしょうか。今回、ソーシャルボイスの分析を得意とするTBWA HAKUHODOの65dB TOKYOがSNSで話題になったトピックスをミレニアル世代・Z世代 を中心に深掘り。世代間の違いや今後のコミュニケーションのポイントを分析していきます。

調査①美容カテゴリから見えた、年代別インサイトとは?

 美容に関する話題は、ソーシャルで取り上げられやすく、「どの商品にどのような効果があり、おすすめか」を語るユーザーが多く見られます。また、ユーザーの反応により商品が拡散され、欠品が相次ぐような「SNS売れ」も多く存在します。SNSと相性の良い美容カテゴリにおいて、年代別の違いはあるのか調査をしました。

 なお、この記事では、各世代の中でも年代による変化の差をわかりやすく捉えるためZ世代は20代を指し、ミレニアル世代は30代としています。

 直近2年間のXでエンゲージメント上位投稿を見てみると、「20代」関連の話題ではコスメ商品の話題が拡散されやすく、「30代」関連の話題はスキンケアの話題でのバズ投稿が多く見られました(図1)。これは世代によって、美容関連の悩みが異なることが理由だと考えます。

【図1】年代別の美容カテゴリ話題
【図1】年代別の美容カテゴリ話題

 コスメ領域は、トレンドの移り変わりが激しく、新作が出るたびにレビュー投稿が散見されます。また、「飲み会リップ」「イエベ春向きアイシャドウ」などシチュエーションやパーソナルカラーといった、年齢軸ではない切り口でのバズ投稿が目立つ傾向にありました。これらは20代における価値観や、自身をカテゴライズ化する文脈に則っていると考えられます。

 一方スキンケア領域は、肌悩みごとの切り口による投稿もありますが、年齢を重ねることで増える肌の悩みを「30代」や「アラサー」といった年代で区切る投稿も多く見受けられました。これは年齢特有の悩みに関しての共感を呼ぶことで、反応が集まりやすくなるためだと考えます。

 同様に、2025年10月下旬のThreadsでは「BBAは全員買え」という言葉と一緒に、特定ブランドの「くすみ対策用ハイライター」が急速に話題になりました。このように美容領域においては世代ごとの悩みをきちんと把握し、アプローチすることが話題化につながりやすくなると考えます。

調査②社会に浸透する「推し活」の年代別インサイトとは?

 美容領域では、年代別のインサイトが重要であることがわかりました。しかし、これは「加齢による悩み」というわかりやすい変化軸があることが理由です。では、近年一般的に浸透した「推し活」の領域においても年代別にインサイトは異なるのでしょうか。

Z世代における推し活は生活の一部

 Z世代女性においては、約7.5割が「推し活」をしているという調査結果があります(図2)。若年層において、推しがいることは一般的なことだと認識する人も多いのではないでしょうか。

【図2】推し活に対する調査(出典:日本インフォメーション株式会社「Z世代のイマ~推し活のリアルと消費への影響~」インターネットリサーチ/全国16~44歳男女914名対象)
【図2】推し活に対する調査(出典:日本インフォメーション株式会社「Z世代のイマ~推し活のリアルと消費への影響~」インターネットリサーチ/全国16~44歳男女914名対象)クリックすると拡大します

 また、2025年のAIを活用したトレンドにおいても「推しに食べられる動画」や「推しとツーショットが撮れる加工」など、Z世代にとって推し活は日常に浸透しているものだと言えます。

Z世代における推しは「自己表現」の1つ?

 さらに、Z世代・20代における推し活を深掘りしていくと、推し活におけるアイデンティティの確立という文脈も見えてきます。

 まず、ここ数年間のトレンドを見ると個性を出すことができるアレンジや、オリジナリティ要素を加える商品が流行りやすい傾向にあります。手持ち扇風機やモールドールといったアイテムから、直近では麻辣担のような食事においても、オリジナリティ要素があることがZ世代の気になるポイントとなるのです(図3)。

【図3】オリジナリティに関する流行
【図3】オリジナリティに関する流行

 推し活についても同様に、「〇〇を推している自分」や「〇〇推し概念コーデ」など、推し活を通じて自己表現をすること、同じ推しがいるもの同士で界隈(コミュニティ)を形成し、他者とのつながりを持つことが重要視される場合があるのです。

30代の推し活が増加中

 では一方、30代以降・ミレニアル世代以上の推し活についてはどうでしょうか。

 30代関連キーワードと推し活を掛け合わせ、Xで話題量の推移を見たところ年々増加していることがわかりました(図4)。特に2025年においては急増しています。また、OshicocoとCDGが調査した2025年データでは、この1年で推し活人口が最も増加したのが30代前半の女性(+8.2pt)という結果も出ています。このことから、30代においても推し活が浸透していると考えられます。(参考:「【推し活人口1400万人・市場規模3兆5千億円】大規模アンケートで分かった!拡がり続ける推し活市場」)

【図4】30代における推し活関連話題の推移
【図4】30代における推し活関連話題の推移

30代以降にとって、推しは「価値観の代弁者」?

 アイドルなどグループ活動者の中でも、「オーディション番組を経てデビューする」という建て付けは近年多く見受けられます。それらのグループにおける年齢別フォロワー属性を見ると、特に、テレビやVODサービスでも配信されているオーディション番組を経てデビューしたTimelesz/HANA/BE: FIRST/NiziUなどのファン層は30代以上の割合が多いことがわかりました(図5)。

【図5】グループ別Instagramフォロワー属性
【図5】グループ別Instagramフォロワー属性

 こうした番組では感動シーンの切り抜きや、デビュー後のメンバーの成長など、ストーリーへの共感が多数見られます。

 また、30代推し活層への独自インタビューにおいても、NoNoGirlsのプロデューサー・ちゃんみなの、オーディション参加者たちに対する愛あるフィードバックが心に響いたという声が多数見られました。彼女が出産後に初めてリリースした「Work Hard」のYouTube動画には、オーディションを経て知った人からも多くのコメントがついており、下記のような仕事を頑張る働く世代から共感の声が寄せられています。

・今時「働け!」って歌、ありがたい!

・ワークライフバランスとか残業ない仕事がいいとか声が増えている中で、「WORK!やることやらないで何うらやましがってんだ!」と言ってくれるのはすごく価値がある

・今仕事いそがしくて逃げたかったけどモチベ上がる。ホント助かる。

 「理想を追求してがむしゃらに働く大切さ」も抱くミレニアル世代にとって、今のエフォートレスな価値観や多様な働き方が認められる実生活では、自分の価値観の行き場に迷うシーンも出てきているのかもしれません。コンテンツやソーシャル上で気持ちを代弁してくれる推しの存在が重要になっていると考えます。

 これらから、30代以上の推し活において重要なのは、見た目だけでない、内面的な部分に対する共感なのではないでしょうか。

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年代別インサイトの注意点と今後の展望

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この記事の著者

65dB TOKYO(シックスティーファイブデシベル トウキョウ)

 65dB TOKYOは、ソーシャルリスニングを中心としたマーケティング支援チームです。「65dB」とは、人々が通常の会話で発する音声の強さ(65デシベル)から名付けられており、生活者の声からブランドアクションを生み出す分析および戦略立案を行います。また、TBWA HAKUHODO傘下に組織を置くことで、グローバルレベルのクリエイティブチームとも連携し、マーケティングプロセスをワンストップで支援することも可能です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/11/27 09:00 https://markezine.jp/article/detail/50111

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