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無印良品公式アプリ全面リニューアルの裏側とは?何を変え、何を守ったかOMOとCRMの観点から解説!

 2025年9月、無印良品の公式アプリが全面リニューアルした。10年続いた旧アプリを刷新し、会員証とメディアを統合した独自UIや、マイル・ステージ制度を撤廃したシンプルなポイントプログラムを導入。OMOとCRMを軸に、「感じ良い暮らしと社会の実現」という企業理念をデジタルで体現する挑戦を進めている。MarkeZine Day 2025 Retailでは、その裏側を株式会社良品計画の水野寛氏とadjust株式会社の高橋将平氏が語り合った。

アプリリニューアルの起点となった第二創業

 Adjustはモバイルアプリ向けの計測ソリューションを提供しており、アプリにどこからユーザーが流入するのかを捉え、流入経路ごとにユーザーがアプリをどう使っているのかを測定するツールだ。「MUJIアプリ」においてもAdjustが強力にサポートしている。

adjust株式会社 Sales Lead 高橋 将平氏
adjust株式会社 Sales Lead 高橋 将平氏

 講演では高橋氏によるAdjustの紹介に続き、無印良品のアプリおよび会員プログラムリニューアルの裏側が、良品計画の水野氏によって詳しく語られた。

株式会社良品計画 EC・デジタルサービス部 事業推進課 水野 寛 氏
株式会社良品計画 EC・デジタルサービス部 事業推進課 水野 寛 氏

 良品計画は2021年、「感じ良い暮らしと社会の実現」を掲げて第二創業を宣言した。日常生活の基本を担うこと、そして店舗が地域のコミュニティ拠点の役割を担うという2つの使命のもと、全国683店舗(2025年8月期末時点)にものぼる出店を進めるとともに、地域の農家と連携した規格外野菜の販売や、大規模団地への出張販売など、地域課題の解決に取り組んでいる。

 企業理念を実現するにあたって、デジタルサービスには大きく2つの役割があるという。1つは「感じの良いオンラインの提供」だ。テクノロジーをあくまで『道具』として使いこなしながら、無印良品らしい情緒的な体験を提供していく。

 「リアル店舗と遜色がない、気持ちの良いお客様体験をデジタルで実現することがミッションです」(水野氏)

 もう1つが「ESG経営のトップランナー」となることだ。良品計画が45年変わらず大切にしてきたESGの視点をより加速させ、事業主側だけでなく顧客を巻き込んでESGを民主化していく。デジタルサービスは、その接点を作り、民主化を支えるインフラを作っていく位置づけにある。

旧アプリが抱えていたOMOとCRMの課題

 無印良品のアプリ「MUJI passport」は2013年にリリースされ、店舗での会員証、マイルサービス、店舗検索、ECサイト、オウンドメディアなどの機能を提供し、アクティブユーザー1,500万を抱えていた。しかし10年が経過する中で、いくつかの構造的な課題が浮き彫りになっていたという。

 MUJI passport
MUJI passport

 OMO視点での課題は、利用者の分断が挙げられる。店舗での会員証としての利用しかしない顧客と、EC購買だけでしかアプリを使わない顧客という、利用者の分断が起きていた。

 「店舗で買うかECで買うかはあくまで手段ですので、それをお客様に意識させないような体験を作っていきたいと考えました」(水野氏)

 オウンドメディアについては、メディア自体の認知やアプリ内での閲覧につながっていない課題があった。さらにESGに関連する機能がないことで、地域社会とのつながりをアプリとして提供できていなかった。

 また、多様な暮らしのスタイルに対してきめ細かな商品ラインナップで対応してきた一方で、CRMの視点では、一人ひとりの暮らしに寄り添った提案ができていないという課題があった。加えて、従来は会員登録せずとも会員証が作れる仕組みだったため、セール時のみアプリをインストールし、セール後に削除されるというサイクルが生まれ、顧客を正しく捉えられないという問題も抱えていた。

OMO・CRM視点でのアプリの課題
OMO・CRM視点でのアプリの課題

 「買うだけではなく、無印良品を知って、商品を買って、使って、手放す。こういった一連のライフサイクルを支えるための手段として、アプリをしっかり見直していこうと考えました。コミュニケーションの接点として、お客様の行動変容を促していく装置として、効果的に生かしていく必要があると考えました」(水野氏)

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メールアドレス登録の必須化を敢行

 アプリのリニューアルにあたって掲げたコンセプトは「ちょうどいい、に出会う。あなたの暮らしのパートナー」だ。その実行に向けて大きな変革を行った。

 「暮らしのパートナーという立ち位置は、無印良品そのものである考えています」と語る水野氏。アプリの名称をシンプルに『MUJIアプリ』に変え、ビジュアルもシンプルにしていった。加えて、パーソナライズ機能も実装した。

 「衣料品・生活雑貨・食品など多数のアイテムを有する無印良品において、顧客の嗜好やライフスタイルに寄り添う情報提供はアプリのコアと考えています」(水野氏)

 多数の商品からパーソナライズして届けていくことは、良品計画にとってひとつのチャレンジだ。さらにメールアドレスの必須化という大きな決断も下した。生活者が企業へ個人情報を提供することへの負担感、忌避感を理解した上で、顧客理解の深化と店舗での登録オペレーションの負担を最小化するために、メールアドレスのみの取得に振り切った。

 さらに、会員証とメディアの統合も大きなテーマとなっていた。店舗では会員証をすぐ表示して決済したいというニーズが非常に高い。一方で、良品計画としては店舗以外でもアプリを見てほしいと考えている。店舗での取り出しやすさと、日々の暮らしのアクセス性を両立するために考案されたのが、画面下部にメディアが表示され、上部に会員証のバーコードが常に見える状態を保つUIだ。

 MUJIアプリのUI
MUJIアプリのUI

 上にスワイプすればメディアを全画面で閲覧でき、下にスワイプすれば会員証が前面に出る。水野氏は「アプリのユニークネスを表現するもの」と話す。高橋氏も「本当に新しいつくりになっているので、ぜひ皆さんも一回インストールして見てもらいたい」と呼びかける。

無印良品の哲学「これでいい」を体現した会員プログラム

 アプリと同時に、会員プログラムも同時にリニューアルされた。「自分にも、誰かにも、社会にもいいこと」をコンセプトに、「MUJIマイルサービス」から「MUJI GOOD PROGRAM」へと名称を変更。最も重視したのは、わかりやすく、誰もが馴染めるシンプルさだ。

 大きな変更点は、マイルという概念をなくしてポイントに一本化したこと。また、ステージ制度を撤廃したこと。さらに、リセットという概念をやめて永続的にポイントを保有できるようにしたことだ。

「MUJIマイルサービス」と「MUJI GOOD PROGRAM」の違い
「MUJIマイルサービス」と「MUJI GOOD PROGRAM」の違い

 「無印良品の哲学として、『これがいいではなく、これでいい』という表現があります。会員プログラムも、誰にとってもわかりやすく『これでいいよね』と思えるものに仕上げていくという方向でまとめました」(水野氏)

 特に、ステージ制度を撤廃したことは良品計画の姿勢を表す大きな変化だ。

 「『お客様を区分しない』というのは社内の共通の見解です。LTVを上げていきたいことに間違いありませんが、一人ひとりのライフスタイルが異なる中で、お客様を区分して誘導していくというのは方向性が合わないと考え、ステージ撤廃に踏み切りました」(水野氏)

 ポイント付与の条件も拡充され、購買はもちろん、商品のお気に入り登録、記事閲覧、リサイクル回収への参加など、さまざまなサービス接点でポイントが貯まるようになった。

 もう一つ、「1ポイントから寄付」ができる点も特長だ。

 「これまで社会貢献に関心がなかった方でも、気軽に寄付をする、その一歩を後押しする形でチャレンジしました」(水野氏)

 実際に寄付を体験したという高橋氏も「一歩後押しがあったので初めての寄付をした。本当にスムーズに寄付ができた」と、そのUIや手軽さを実感したと語る。

想定を上回る店舗外利用や寄付人数を実現

 リニューアル後の反響は想定を大きく上回るものだったという。会員プログラムがわかりやすくなったという声が顧客や店舗スタッフから多く届いた。

 「お客様に説明しやすいプログラムなので、業務効率の向上にもつながっています。わかりやすさは非常に大事だと実感しました」(水野氏)

 懸念されていたメールアドレス登録も、店舗の協力と理解もあってスムーズに進み、KPIを大きく上回る結果となっている。会員証とメディアを統合したUIの効果もあり、来店前にアプリを使うお客様も大きく増加し、記事閲覧数は過去最大を記録しているという。

 ポイント寄付については、もともとネットストアで現金寄付機能を提供していたが、その年間の寄付人数を3日間で達成するほどのペースで伸長した。寄付総額ではなく寄付人数を追う理由は、顧客の行動変容がESGの民主化につながるとの考えがある。

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Adjustが行う流入経路の可視化でCRMはより高度に

 セッション後半では、高橋氏がAdjustの仕組みを紹介した。

 「アプリの成長を考えた時、モバイルアプリはユーザーがどこから来たのかわからない問題が発生することが多いです。アプリの外にある店舗やWebサイト、ECなどの流入経路を把握し、アプリへとつないでいくことが重要であり、それが私たちAdjustの仕事です」(高橋氏)

Adjustの概要
Adjustの概要

 Adjustを導入することで、新規ユーザーがどの施策からアプリをインストールしたのか、一度離れた既存ユーザーがどこから戻ってきたのかを計測できる。さらにそのデータを基幹システムやCRM、広告プラットフォームに連携することで、データの活用範囲が広がる。

 「外部データの取り込みは、CRMやCDP構築、パーソナライズ活用の起点になります。特に店舗周りのトラッキングは重要です」(高橋氏)

 具体的な活用例として、良品計画ではすでに店舗ごとにメールを紐付け、どの店舗が初回決済を促せるかというコンテストを実施している。

 「店舗ごとに個別のリンクを発行して集計すれば、獲得件数だけでなく、登録率やその後のLTVまで追うことができます。各店舗が頑張った成果が、長期的な売上につながっていることが見える。ここに価値があると思います。」(水野氏)

アプリ起点で店舗の寄与を深く追う
アプリ起点で店舗の寄与を深く追う

 さらに、たとえば店舗スタッフがアプリのQRコードを発行した場合、店舗で購入しなくても、ECで購入が発生した場合に、店舗スタッフが最初のきっかけを作ったといった計測も可能になる。

 加えて広告データとCRMの連携も重要だ。広告施策によってアプリをインストールされた後、流入経路をCRM側に同期し、その後のプッシュ通知やメールに活用するというものだ。

特定の商品に紐づく流入に対して適切なコミュニケーションを取る
特定の商品に紐づく流入に対して適切なコミュニケーションを取る

 これはコンバージョン率に効果的で、「漫画やゲーム業界ではすでに行われている施策だが、リテール業界でもできるはず」と高橋氏は語る。

良品計画が目指すもの

 講演の最後には、良品計画の今後の展開についても語られた。

 「真の意味でオフライン、オンラインをつないでいくためには、物流、店舗システム、在庫との連動など、サプライチェーンを含めた機能改善が必要で、数年がかりで取り組んでいきます。また、1,500万の顧客基盤を生かして、商いの支援だけではなく、地域社会をつなぐプラットフォーム、ESGの推進にもチャレンジしていきたいです」(水野氏)

 良品計画とAdjustの挑戦は続く。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:adjust株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2026/01/22 11:00 https://markezine.jp/article/detail/50179