初期仮説検証で判断に迷う場合はどうするか
ここまでの例は、わかりやすく差が出ているケースにあえて整理しています。ただ、実際のビジネスの現場では、ここまで綺麗に差が出ることは少なく、「うーん、筋があるとも言えるし、ないとも言える……」というグレーな状況で判断を迫られることの方が多いと思います。
たとえば、もしA社とB社の導入社数がほぼ同じであれば、この初期仮説は棄却すべきかもしれません。あるいは、差が120社と100社程度であれば、「この打ち手だけでは決定打になっていない」と判断するのが妥当です。
そのときに大事なのは、「何か他の観点を見落としていないか?」という問いを常に持ち続けることです。
- 構造として見落としているものはないか
- 数値の裏側に、別のセグメント構造が隠れていないか
たとえば、採用手段の「残り30%」はなんなのか。SaaS導入率7〜10%の企業は、従業員規模や業種でどのように分布しているのか。こうした点を掘り下げていくと、
- 実は有料求人媒体を使っている企業は10%しかない
- SaaS導入企業の多くは、従業員1,000名以上の大企業である
といった構造が見えてくるかもしれません。
このように、「この数値は、なぜこの値で止まっているのか?」という視点を持って検証していくことで、判断に迷うケースでも、徐々に「Go/No Go」の判断をクリアにしていくことができます。
最終的に重要なのは、「構造 → ルール → 比較 → 初期仮説検証」までを、筋と数字で説明できる状態にすることです。
まとめ:初期仮説は「手がかり」であり、「直感」を鍛えるトレーニングでもある
ここまでの内容を一言でまとめると、初期仮説とは、
- 情報の海の中で、「どこにサーチライトを当てるか」を決めるための手がかりであり、
- 初期仮説の立案と検証プロセスを回すことで、将来の“直感”の精度を上げるトレーニングとなる
と言えると思います。
ぜひ、日々のニュースや業務の中で、「まず自分の頭で初期仮説を立ててから、データや情報を見る」。この一手間を意識してみてください。インプットの質が変わり、アウトプットの解像度が変わる感覚を、きっとどこかのタイミングで実感してもらえるはずです。
次回は、いよいよ課題設定のステップに進みます。
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