想定の2倍の売れ行き&異例のアワード多数受賞を果たした「THE ANSWER」
MarkeZine:はじめに、THE ANSWERのブランド概要やターゲットをお聞かせください。
君島:THE ANSWERは、「花王100年のヘアケア研究からたどり着いた、ヘアケアの答え。」をコンセプトに掲げ、2024年秋に発売しました。新ブランド第一弾の「melt」同様、ハイプレミアム市場への参入を狙ったブランドとなります。
メインターゲットは30~40代。「誠実でバランスのとれた生活をしたい」というニーズを持つ自立志向の強い方を主なターゲットとして想定しています。花王のヘアケア事業で実践している感性マーケティングで言うと「青の感情」に分類されるブランドです。
情報や商品にあふれる社会の中で、どのシャンプー・トリートメントを選べばいいのかわからない、いわゆる「シャンプー迷子」になっている方も多いでしょう。そのような方々へ、長年研究を重ねてきた花王から“答え”を提示したいという想いで「THE ANSWER」と名付けています。
MarkeZine:発売直後から売れ行きが好調だったそうですが、改めて現時点での実績を教えてください。
君島:おかげさまで、2025年12月末時点で出荷本数累計340万本を突破しました。ブランドの計画比で言うと約2倍の数字です。また、ヘアケアとしては非常に多くのアワードを受賞させていただいたことも、THE ANSWERならではの成果ですね。
たとえば、「@cosmeベストコスメアワード2025 上半期新作コスメ」では、メイクアップやスキンケアなどを含めた全ジャンル、全アイテムの中で総合大賞をいただくことができました。花王に限らず、シャンプー・トリートメントが総合大賞を獲得するのは初めてのことだったそうです。なお、同アワードのベストヘアケア1~3位は「THE ANSWER」が独占しています。加えて、日経トレンディ「2025年ヒット商品ベスト30」の7位に選出されるなど、経済トレンドとしての注目も高まった1年となりました。
機能“感”を演出するPGCと、権威性・信頼性を醸成するUGC
MarkeZine:次に、THE ANSWERにおけるマーケティングコミュニケーションの全体像をお聞かせください。
君島:基本的な考え方は先行ブランドである「melt」と同様です(参考記事『なぜ花王「melt」は発売から2年経ってもSNSで話題になるのか?ヒットを支えるUGC戦略を公開!』)。高価格帯の商品である以上は購入のハードルが高いため、PGCとUGCの両方を活用しながら、認知から購入までフルファネルのコミュニケーションを丁寧に設計する必要がありました。
また、PGCには「ブランドの世界観を伝える」という役割があります。THE ANSWERで表現したい世界観は「機能“感”」や「研究“感”」。THE ANSWERの機能性に自信があることは事実ですが、事実をそのまま伝えるというよりは「こだわっていそうな“感じ”」「技術が詰まっていそうな“感じ”」を直感的に伝えたいと考え、PGCに落とし込みました。

MarkeZine:なるほど。UGC施策は、どのような点を意識して設計されていますか?
川上:はじめは美容の高感度層にアプローチし、徐々に中間度層やマス層へインフルエンサーのキャスティングの幅を広げていくという戦略はmeltと共通です。ただ、THE ANSWERは脂質をシャンプーに配合するという、これまでのヘアケア領域の常識とは異なる新しい技術を採用しています。だからこそ、美容に関心のある方でも、すんなりと受け入れてもらえない、あるいは自分ゴト化が少し難しい可能性がありました。
そこでティザーの段階では、美容高感度層の中でも特に成分や技術の知識に長けた、YouTuber1人に絞ることにしました。商品の本格的なプロモーションを始める前に、成分や技術に関する情報および認知を広げることにしたのです。
あえて商品名を伏せ「待望感」を最大化させた発売前のティザー施策
MarkeZine:YouTuber1人に依頼したというUGCのティザー施策について、具体的な内容を教えてください。
川上:「花王からすごい技術が開発されたらしい」と、あえて商品名を全く出さずに「成分や技術」だけを解説するコンテンツを作成してもらいました。
MarkeZine:商品名を伏せるとは、大胆な施策ですね。技術とTHE ANSWERとの紐づけはどのように図ったのでしょうか?
川上:実際に商品が発売された後、そこまで期間を空けずに同じYouTuberとタイアップを実施しました。その動画内でも「(ティザー時に解説した)技術」と「商品」を紐づけるような表現はしていません。しかし、「この前投稿していた“花王のすごい技術”ってこれですよね!」といったコメントが多数寄せられており、視聴者の中で自然と伏線は回収されていましたね。
発売前に実施した唯一のUGC施策でしたが、美容領域に詳しく・権威や信頼性のある方にお任せしたからこそ、「お墨付き感」「待望感」を最大化させることができたと思っています。
MarkeZine:なるほど。ティザーではPGC施策も実施されていたのでしょうか?
君島:はい。SNSでティザー用アカウントを作成の上、プレゼントキャンペーンを実施しました。アカウント名は「Shampoo_A」。ここでも花王100年の研究からたどり着いた、新シャンプーとだけ触れ、商品名は明かしていません。加えて、東急プラザ原宿「ハラカド」でのリアルイベントや商品名を伏せた「調査員募集」などを行い、リアルとデジタルで体験機会を創出していきました。
MarkeZine:ここまで商品を明かさずに展開すると、発売されただけでも話題になりそうですが、反響はいかがでしたか?
君島:ええ、ティザーの段階で待望感を最大限高めていたからこそ、狙い通り「これだったんだ!」というSNSの発話が連鎖的に生まれました。また、初速のインストア売上も大きく伸び、購買の面でも好調なスタートを切る結果となっています。

UGCの反響を参考にPGCとUGCをブラッシュアップ。両輪で回すPDCAの実践例
MarkeZine:発売後は、徐々に層を拡大する形でインフルエンサーへタイアップを依頼していったのでしょうか。
川上:はい。ですが、THE ANSWERではフェーズに応じたコミュニケーションを特に意識しており、多少起用するカテゴリーの幅は広げていますが、タイアップを依頼するインフルエンサーの数は絞っています。美容高感度層の中でも成分や技術の説明力に長けた方や、ブランドのトンマナで重視している「青の感情」に合う方を厳選してきました。現在も話題感や発話が途切れないよう、タイアップ施策を継続しながら、人選やコンテンツのPDCAを回しています。
MarkeZine:THE ANSWERは機能性だけでなく、「塗り洗い」という新しい洗髪方法でも注目を集めています。この新習慣にUGCが果たした役割はありましたか?
君島:大いにありました。「塗り洗い」にスポットライトを当ててUGCを作成してくださる方が想定よりも多く、生活者視点で響くポイントなのだと実感しましたね。「生活者にとって“手間”なのでは」と懸念していたところを、いい意味で裏切られました。メーカーではなく第三者が発信するからこそ、「塗り洗いという体験価値」が伝わりやすかったのでしょう。なお、これらのUGCで得たヒントはPGCにも反映させています。
MarkeZine:どのように反映しているのでしょうか?
君島:従来PGCではHow to寄りの表現をしていましたが、UGCの反響を見て、泡の質感や音、直感的な心地よさを伝える方向性でのクリエイティブを強化しました。
川上:一方で口コミを分析してみると、「塗り洗い」の方法が正しく伝わっておらず、ネガティブな発話が生まれてしまっているケースもありました。対策として、「塗り洗いの前に予洗いが必要」「塗ったあと泡立てが必要」など、商品の使い方をよりわかりやすく伝える訴求を追加しています。
このようにリアルなお客様の声を日々ウォッチしながら、PGC・UGCともにブラッシュアップを重ねていけるのが、スクラム体制を導入したTHE ANSWERチームの強みです。
オリエン資料は40回以上改訂、UGCの「質」にこだわれる理由
MarkeZine:美容商材におけるUGC施策では、薬機法による表現の制限がハードルになることも多いと思います。THE ANSWERは機能や成分を前面に打ち出している商品だからこそ特に留意する必要がありそうですが、どのように対応していますか?
君島:化粧品では薬機法を遵守する必要があるため、THE ANSWERだけの話ではないものの、「オリエンテーションの進め方」にはポイントがあるかもしれません。できるだけ全員のインフルエンサーと対話する形で、薬機法などの注意点は直接説明するようにしています。施策を実施していく中でナレッジが貯まり、その度にPDCAを回しているので、オリエンテーション用資料は40回以上改訂していますね。

MarkeZine:ウィングリットとしても気をつけているポイントはありますか?
川上:インフルエンサーとクライアントの両方に「丸投げ」しないことです。まず、インフルエンサーに対しては個別のオリエン資料を作成します。「その人の個性」と「投稿で表現してほしいこと」を念頭に置き、コンテンツの構成や文言などすべて事前に確認・すり合わせた上で進めています。
また、インフルエンサーの作成したコンテンツを、そのまま花王様へスルーパスするようなことは絶対にありません。すべてのコンテンツをチェックし、表現や確認事項について赤入れしたり、内容によっては先にインフルエンサーに修正いただいてから花王様へ展開しています。
インフルエンサーから上がってきたものをそのままクライアントに展開するフローだと、クライアントの負担が大きく、投稿数が多くなればなるほどその負担は増大してしまいます。ブランド・インフルエンサー双方のコミュニケーションコストを緩和できるよう、できる限り当社でカバーしています。
君島:初手でいきなり動画を作成してしまうと、丸々使えなくなってしまう場合もあります。ウィングリットさん側で構成案の段階から入り込み、すり合わせをしてくれているからこそ、私たちは「品質を高めるためのチェック」に集中し、円滑なコミュニケーションをとることができているので、ありがたいですね。
今後はマス層への拡大へ、ブランドのフェーズに応じた最適なUGC戦略を
MarkeZine:最後に、THE ANSWERの今後の展望についてお聞かせください。
君島:おかげさまで多くのアワードもいただき、美容高感度層にTHE ANSWERの魅力が十分に伝わった1年となりました。しかし、ブランドの認知率はまだ2割程度。まだまだミーハー層、マス層へは十分に届いているとは言えません。今後はどう裾野を広げていくかが課題になるでしょう。「“ヘアケア迷子”が信じられる“答え”を出していく」という信念を貫きつつ、ユーザー拡大に向けて施策を続けていきたいですね。

川上:「melt」同様に、新商品発売の時期を越え、継続的なブランドの成長やUGC創出がより重要になっていくフェーズとなってきました。その上でも、THE ANSWERらしさや、THE ANSWERの知覚価値を維持・強化していきたいです。愛用者・ファンダムの形成にもより注力していきたいですね。また、マス層に広げていく過程では、これまでとは違ったメッセージやコミュニケーションが必要になる場面も出てくるはずです。ブランドの状況・フェーズに合わせて、最適なUGC戦略を設計・実行していきます。
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