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世界動向の先を読む「もう1つの視点」

「リアル×デジタル」が真に融合する時 Amazon ×Whole Foodsの「MFC2.0」が始動

中央集約型+600の店舗網を取り込む新フェーズへ、投資もシフト

 Amazonはこれまで大規模な「セントラル・フルフィルメント・センター(CFC)」に投資をしてきた。MFC2.0はその大規模CFC(中央集約型)構築路線とは異なり、全米に広がるリアル600店舗のWhole Foodsを分散型物流ハブ(各店舗にMFCを増設)化するもの。つまり、Amazonはまた新たな投資フェーズに入ったと言える。

 今回の店舗ではシリコンバレーのロボティクス企業「Fulfil」が開発した自律型ロボット「ShopBot」が採用され、実証実験が進んでいる。このロボットの特徴は「柔軟性」。温度帯の異なる生鮮品(冷凍・冷蔵・常温)を自動で仕分け・搬送できることができるのに加え、通常のWhole Foodsでは扱われないようなサードパーティ商品までも含めて処理することができる。

生鮮(冷蔵・冷凍)に対応するMFC専用マシン「FF」
生鮮(冷蔵・冷凍)に対応するFulfilの「ShopBot」。MCF内を移動し注文の入った商品を回収していく(Amazon プレスリリース

 一般的なスーパーマーケットが外部ベンダーのシステムや店内スタッフによる手作業に頼る“間に合わせ”で対応しているのとは異なり、AmazonはAWSを基盤とした自社インフラ上にMFCを構築している点が最大の違いである。

 Fulfil社はまだ買収には至っていないが、既にAmazonの実証実験には組み込まれている。Amazonは過去にもフルフィルメントセンターの中核ロボットとなるKiva Systemsを買収(2012年)しており、今回の実証実験も将来的な買収・統合を見据えた投資と見えるべきだ。

MFC 1.0の失敗が示す「外部ベンダー依存」の限界

 MFCの黎明期にあたる「MFC1.0」世代では、流通倉庫の自動化を手がけるベンチャー企業が相次いで注目を集めた。しかし、2022年前後の「オンライン特需の一巡」を機に、単なる在庫自動化マシンとしての需要が急速に収束し、軒並み下降局面へと転じた。「自動化装置の提供“だけ”」では生き残れなかったのである(例:Takeoff TechnologiesAttaboticsの破産)。

 その象徴的な事例が、米国スーパー大手のKrogerによる英国ベンチャーOcado社の「重厚長大CFC」導入である。巨額の投資をしたにも関わらず、現在は「Instacart」「Uber Eats」に代表される店舗ピッキング型の即時配送需要との板挟みになっており、自動化施設の見直し(取り止め)を迫られている。

 KrogerはCFC導入に加え、SaaS型のマーケットプレイス構築プラットフォーム「Mirakl」を活用したサードパーティ向けオンライン販売チャネル「Kroger Ship」も展開していたが、2025年3月にサービスを終了している。

 背景にあるのは、生鮮品ビジネスが抱える低マージン・高頻度・即時性といった要件に、サードパーティベース主体の仕組みでは耐えられなかったという現実だ。外部ベンダーのシステム依存は、社内倉庫との連携遅延や同梱調整の難しさから、ユーザー体験を低下させ、サービス全体の評価を押し下げてしまった。

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過去のしくじりと米国事例から、日本企業が学べること

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この記事の著者

榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)

株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/12/22 09:30 https://markezine.jp/article/detail/50227

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