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MarkeZine Day 2026 Spring

生活者データバンク

値上げしても「売れるブランド」は何が違う? データで導く、ファン維持の「生存戦略」

 昨今、原材料高騰による値上げは避けられない経営課題です。しかし、蓋を開けてみれば「値上げ後もファンが離れないブランド」と「客離れが止まらないブランド」に明暗が分かれています。なぜ、あの商品は値上げしても売れ続けるのか? 本稿では、買い物登録アプリ「CODE」の30万人超の購買データをもとに、値上げ局面でも勝ち残るブランドの条件を解き明かします。

値上げ後の明暗:「成功ブランド」と「苦戦ブランド」の二極化

 はじめに、直近1年間に値上げがあったブランドの中で、売上が上位のブランドの購入者数と売上の前年比を比較すると、ブランド間で明確な差が生じていることが分かりました(図1)。購入者数・売上ともに増加したブランドを「成功ブランド」、逆に減少したブランドを「苦戦ブランド」と定義すると、幅広いカテゴリーで二極化が確認されます。

画像を説明するテキストなくても可
【図1】値上げによる、購入者数および購入金額の前年同期間比
出典:CODE 買いログデータ
期間:2023年4月~2025年10月
※ブランドごとの値上げ時期に応じて期間を変更(値上げが、2025年10月=1ヵ月、2025年9月=2ヵ月、その他=3ヵ月の期間で集計)
クリックすると拡大します

 本稿では、この差を生んだ要因を深掘りし、値上げ局面で有効なブランド特性と戦略を考察します。

成功ブランドは「即時消費型ブランド」の傾向がある

 成功ブランドの傾向を把握するため、購買データを基にした独自指標として、「即時消費型ブランド指数(ICB)」と「ストック購買型ブランド指数(HSB)」を値上げ前の期間で算出しました(図2)。これらは一般的な購買行動分析の考え方を応用し、ブランドの選ばれ方をより立体的に捉えるために本分析で定義しました。

・ICB(即時消費型ブランド指数):
「その場で飲みたい」「すぐに消費したい」シーンでの選ばれやすさを示す指数。コンビニ(CVS)と小容量商品の金額構成比が高いブランドほど指数が高くなる。

・HSB(ストック購買型ブランド指数):
家庭内のストック消費やまとめ買いにおける支持を示す指数。スーパーマーケット(SM)やドラッグストア(DRUG)と、大容量商品の金額構成比が高いブランドほど指数が高くなる。

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【図2】ブランドごとのICB・HSBと成功・苦戦の関係
出典:CODE 買いログデータ
期間:2024年4月~2025年9月
※ブランドごとに値上げ月から過去半年を期間として集計
※複数のサイズ・容量で販売されているブランドから選定
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 値上げ後も売上を維持したブランドは、即時消費型で小容量商品を軸にしたラインアップを持つという傾向がありました。たとえば、コーヒー飲料ブランドや清涼飲料ブランドA、アルコール飲料ブランドAなどはICBが高く、コンビニや小容量商品の金額構成比が大きいブランドです。こうしたブランドは「その場で飲みたい」「ちょっと試したい」というニーズに応え、値上げ後も購入者数・売上ともに前年を上回りました。

 一方、値上げ後に苦戦したアルコール飲料ブランドC~EやインスタントコーヒーブランドBはHSBが高く、スーパー・ドラッグストア依存度が高いブランドです。値上げ後、ケース購入が減少したことや、家庭でのまとめ買い需要が縮小したことが売上減少の要因と考えられます。

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「安い業態」へのシフトが起きる中、なぜ総売上を伸ばしたのか?

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この記事の著者

井口 颯一朗(いのくち そういちろう)

株式会社リサーチ・アンド・イノベーション 新規事業部

2024年に大学院卒業後、インテージに新卒で入社。同年6月よりリサーチ・アンド・イノベーションに出向しメーカー・流通向けの新規事業開発や購買データの分析に従事。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/12/17 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50232

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