メーカー6社と実施したPoC、企画棚の売上は13.7%増
MarkeZine:小売×メーカーで「共通のファンづくり」を実現できた事例はありますか?
辻森(電通デジタル):6社のメーカー企業様にご参画いただき、トライアル、SalesPlusとともに、電通デジタルを中心とした電通グループの連携体制でPoCに挑戦しました。このPoCでフォーカスしたのは、「売り場を起点にした企画づくり」です。
私も実際にバイヤーの方々と対話を重ねる中で見えてきたのですが、トライアルの売り場は、購買データに基づいて非常に緻密に設計されています。一方で、生活者の「気分」や「体調」といった定性的な文脈での企画は、まだ発展の余地があるのではないかと考えたのが出発点となりました。
第3グループマネージャー 辻森大邦氏
MarkeZine:PoCではどのような企画を実施されたのですか?
辻森(電通デジタル):「春バテ」というテーマで、製薬会社様をリーダーメーカーとした計6社のメーカー様にご参画いただき、検証対象となる計4店舗にて、ヘルスケア関連の企画棚を展開しました。今回のPoCでは、「メーカーが賛同しやすいようなカテゴリー横断の柔軟性があるか」「生活者視点で直感的にわかりやすいか」という2つの観点から、定量・定性データ、季節性・時事性のあるトピックなどをヒントに、100以上の企画案を検討しました。
そして最終的に採用したのが「春バテ」というテーマです。夏と冬が長くなり、季節のメリハリがつきにくい近年だからこそ、共感されやすいキーワードだったのではないかと考えています。
企画を実施した結果ですが、対象商品の売上は前年比で平均13.7%増となりました。比較店舗とも+18.2ポイントの差分が確認でき、顕著に購買につながった結果となっています。また、購入者の属性はDEWKS(共働き子育て世代)層や老年夫婦層の構成比が高い結果となり、「〇〇バテ」といった体調文脈の訴求がどのようなターゲットを動かしやすいかという示唆も得ることができました。
小売×メーカー×広告会社で「協調領域」を築いていけるか
MarkeZine:トライアルとSalesPlusは、今回のPoCでどのような手ごたえや学びを得ましたか?
野田(トライアル):きっと小売単独では、これほど多くのメーカーを巻き込んだ企画を実現することは難しかったでしょう。今回のPoCを通じて、小売同士はもちろん、広告会社と小売・メーカーがいかに「協調領域」を築いていくかというテーマに、大きな可能性を感じました。小さな単位でも検証を積み上げ、実績を可視化していくことが、今後のリテールメディアの未来につながると確信しています。
関(SalesPlus):今回のPoCには、大きく3つの「拡張性」があると考えています。1つ目は「店舗の拡張」です。4店舗での検証で顕著な結果が出たことを踏まえ、より多くの店舗へと展開を広げていける余地は十分に考えられます。
2つ目は「メディアの拡張」。今回はまず棚企画にフォーカスした取り組みとなりましたが、サイネージをはじめとした店内リテールメディアを連動させるなど、より多くのお客様の注目を集める工夫はまだまだあります。
3つ目は「店外(アウトストア)への拡張」です。たとえば、電通デジタルが得意とするデジタル広告などの施策と組み合わせることで、店外のお客様に対しても訴求し、来店を促すような仕組みを構築できるのではないでしょうか。

