Z世代らしい「憧れ」を思いっきり描く
3つ目のカテゴリーは、Z世代が抱く理想や憧れを描いた広告です。SNSで常に他者と比較される環境にいるZ世代にとって、「こうありたい」と思える姿や関係性を描いた広告は、共感と安心感をもたらします。
人の目意識自己表現
他人の目を気にしながらも自分らしく行動する姿を描くと、Z世代は安心感を抱きます。多くの広告が「他人の目を気にせず自由に生きる」メッセージを発信していますが、現実のZ世代はSNS上で常に他者と比較する環境にあり、周囲を意識せざるを得ません。そのギャップから、「人の目を気にしてしまう自分」を否定的に捉えてしまう場合もあります。
今回の事例は、「気にする」か「まったく気にしない」かの二極化ではなく、「周囲を意識しながらも自分らしく生きる」という第三の選択肢を提示しています。このアプローチにより、Z世代は自分を肯定され、安心感を得られます。
キャッチコピー「すきに、着ようぜ。」のもと、憧れの存在から贈られ、背中を押すメッセージと個性的なスタイリングをワンカットで表現したショートフィルム。ティーン世代が抱える悩みに寄り添い、「自分らしくファッションを楽しむこと」を後押ししている。
気遣いなし上司部下
上下関係を超えて意見を交わす上司と部下の関係を描くと、Z世代は理想的な職場像を想起します。
我々は、Z世代の上司との理想の関係は変化していると考えています。2020年~2021年は「聞く耳を持つ上司」が求められていました。2024年は上司・先輩がZ世代と同じ状況で苦戦する様子を見ると安心感や親近感を抱く傾向が見られました。2025年は、さらに踏み込んで、上司と部下という垣根を超えて言い合える関係を築きたいと考えているようです。
菊池風磨演じる部下が、皆川猿時演じる上司に対して社名の言い間違いを詰め寄る内容。上司に対しても遠慮なく意見できる関係性が描かれている。
不憫おもろいパパ
『ちいかわ』や『おぱんちゅうさぎ』といった「不憫かわいい」キャラクターが人気を集めています。このトレンドはキャラクターの領域を超え、現在では身の回りの人々の不憫でおもしろい様子を投稿・鑑賞して楽しむことが1つの文化になっています。
特に父親は、一家の大黒柱としての“男らしい”イメージと不憫な様子との間に生じるギャップが大きいことで面白さが倍増。身近な対象だからこそ、素直に「不憫かわいい」を楽しめる対象だと思われています。
ジェラードン西本が父親役を演じ、子どもと「リカちゃん遊び」をするCM。小さな子どもに強く出れずタジタジな父親の不憫な姿がユーモラスに描かれている。
映え盛れ超え
「映え」を意識せず本気で楽しむ姿を見せることで、Z世代は商材に対して大きな期待感を抱きます。SNSの普及により、日常生活を他者に見られる機会が激増し、自身のビジュアルや写真映えを常に意識するZ世代は多いものです。それにより、体験そのものを全力で楽しめなくなっているという課題も生じています。
こうした背景から、Z世代は映えを意識せず心から楽しむ姿を目にすると、「自分も同じように純粋に楽しめるかも」と、商材に大きな期待感を抱く傾向があります。
富士急ハイランドに訪れた女子高校生が、周囲の来場者の前髪がアトラクションで乱れている様子に驚くが、最終的には前髪を気にせずアトラクションを楽しむ様子を描いている。
以上、2025年にZ世代に刺さった「思いっきり合わせる」群のインサイトと事例でした。いずれも共通するのは、Z世代を本気で理解しようとする姿勢です。表面的に若者に寄せるのではなく、彼らのトレンド、気持ち、憧れに徹底的に寄り添うことで、「自分たち向けだ」と感じてもらえる広告が生まれます。
後編では、「思いっきり外れる」広告群について解説します。AIでは考えられないような、想像を超えるサプライズを仕掛けた事例をご紹介しますので、ぜひご期待ください。
