米国最新情報レポート「MAD MAN REPORT」を毎月発刊している榮枝洋文氏の視点を借り、国内外の企業の動きやグローバルの潮流を解説している本連載。今回は、成否の差が激しい「D2C市場」にフォーカスする。「ユニコープス(死せるユニコーン)」と成長企業の違いはどこにあるのか、著者が独自で作成した「下降低迷組」「上昇転換組」のリストから紐解いていく。
D2C市場は二極化のフェーズに突入
「D2Cの多くは赤字」「新興系D2Cの9割が失敗」──こうしたネガティブな論調を目にする頻度は、確かに増えている。しかし、外出自粛という特需が剥落した2023年頃を境に、D2C市場は一律に不調へ向かったのではなく、むしろ明確な“二極化フェーズ”へ移行したと捉えるほうが正確だ。
実際、かつてユニコーン企業としてもてはやされたスタートアップの半数以上が、上場後に企業価値の90%以上を失い、「ユニコープス(死せるユニコーン)」となってしまった。一方で、生き残っている企業群は、D2Cを「売上を立てるための万能モデル」ではなく「顧客との直接的な関係を構築する起点」として再定義しつつある。もはや「D2Cであること」自体に、評価軸としての特別な意味はない。
D2Cは販売チャネルの一つに過ぎず、ビジネスの本質ではないという現実が、はっきり可視化された段階と言える。NIKEは「D2C戦略」から一転させ、小売店販売との併売に逆戻りさせたが、株価の低迷が戻らない。
2026年以降の市場環境において、“オンライン専業の純粋なD2C”は、IPOでの評価は極めて低くなる。実店舗や卸売りを含めたハイブリッドな収益モデルは大前提として、水平量販拡大だけでなく、さらに「(ビジネスの)飴玉」を持つ企業のみが、未来成長を前提に評価される時代へ完全に移行した。
近年の流れで出てきた「下降低迷組」と「上昇転換組」を整理し、D2C市場でいま何が起きているのか確認していこう。
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榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)
株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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